『旅する映写機』

観客の後ろで映写機は回り続けていた
DVCAM・ブルーレイ・DVD/105分/2013年

文部科学省選定作品 社会教育・青年向き・成人向き

公式サイト

<スタッフ>
製作・監督・撮影 : 森田惠子

構成・編集 : 四宮鉄男

語り : 中村啓子

音楽 : 遠藤春雄
デザイン : 石原雅彦
web制作 : 東條大介


配給 : 『『旅する映写機』製作委員会
協力 :
 旭館  川越スカラ座  北村映画社  シアターN渋谷
 シネマ尾道  シネマ・クレール  シネマルナティック
 大黒座 大心劇場  本宮映画劇場  マネキネマ
 みやこシネマリーン
取材協力 :
 一戸町・萬代館  内子町・内子座  大島電機・大島眞
 加藤元治  国立ハンセン病資料館  桧原康次
 本宮市立歴史民俗資料館  人形町三日月座  

特別協力 : 永吉洋介
製作協力 : 桜映画社  スリーエー工房
<概要>
前作『小さな町の小さな映画館』の撮影中、北海道の小さな港町で90年以上も続いている映画館「大黒座」の映写機が、札幌の映画館から譲り受けたものだと知りました。
映写機が映画館から映画館へ旅をするなんて、その時まで知りませんでした。

旅をしてきたのは札幌にあった「ジャブ70ホール」という映画館から。映画ファンにはよく知られていた映画館でした。そこが閉館する時、まだとてもよい状態で、丁度建て替えの時期を迎えていた「大黒座」に紹介されてきました。20年前のことです。そして今、動き続けて58年目を迎えています。
『小さな町の小さな映画館』の中にもエピソードとして紹介しているのですが、聞けば、映写機を譲った「ジャブ70ホール」という映画館は、今は大黒座の4代目館主の妻になっている三上佳寿子さんが、高校を卒業する時に「働かせてください!」と手紙を書いた映画館でした。そして、「お金を払えないからボランティアで来るのなら良いけれど・・・」という返事が来たそうです。私は不思議なご縁を感じて、そのことがとても印象に残りました。
それにしても、佳寿子さんが手紙を出した30年も前から映画館の経営は大変だったのですね。

今、急速な勢いで映像データのデジタル配信化が進む中で、映画館の閉館が続いています。同時に映写機もどんどん姿を消しています。今のうちに、魅力溢れる映写機の姿を映像で記録しておきたいと思いました。
映写機が立てるカタカタという正確な音には、まるで人間の鼓動のような暖かさを感じます。そして、それと同時に、黒い躯体は力強く、たくましく、とても長生きなのです。映画の好きな人には、映写機の好きな人もたくさんいます。映画館で現役で動いている映写機を中心に、映写機の歴史なども振り返りながら、全国の映写機を旅する記録映画を作ろうと考えました。
現役のしかも古い映写機を中心に記録しようと始まった映写機を訪ねる旅でしたが、映写機の無い映画館を訪ねたり、映写機修理の様子を見学したり、東日本大震災の被災地で続けられているDVDプロジェクターでの巡回上映や、国立ハンセン病資料館に展示されている映写機も撮影しました。
ハンセン病の隔離政策が取られていた時代、まだテレビが普及していなかった時代、療養所では、映画の上映会は入寮者と社会を結ぶ唯一のチャンネルで、映写機の果たした役割はとても大きなものでした。

現役で動く「カーボン映写機」も探し当てて撮影しました。東京オリンピックの頃、50年位前までは「カーボン映写機」が一般的でしたが、それが、今も現役で活躍していました。そんな映写機に出会えたことも感動的でした。モノクロのフィルムはカーボン映写機の光で美しい映像をスクリーンに結晶しました。

幻の上映方法といわれている「流し込み」も撮影しました。高知県安田町。安田川沿いの細い細い道を行った、こんなところに映画館があるのだろうかというような辺鄙なところにある映画館で「流し込み」上映が行われていました。映画館主で映写技師だった父親を見て覚えた技でした。映画館は小さくて不便なところにあるのですが、館主さんの、みんなに映画を見てもらって楽しんでもらいたいという情熱は並大抵のものではありませんでした。

映写機を訪ねる旅は、映画館を、或いは映画館のある町を訪ねる旅になり、その町の暮らしに触れる旅になりました。どこに行っても感動的だったのは、どこの町にも、どこの映画館にも、懸命になって映画を見せようと頑張っている人たちがいて、そしてまた、人に映画を見せることを楽しんで、幸せを感じている人たちに巡り会えたことでした。
『旅する映写機』の旅は、とてもすてきな、とても楽しい、とても幸せな旅になりました。
<プロフィール>

監督 : 森田惠子
働く女性や専業主婦6人にインタビューした『あなたの肩書きはなんですか?』(1990年)を製作・監督・撮影。
若い失語症者の活動や、失語症者の暮らしを描いた『元気と元気のひびき合う旅』(1999年)や『ことばの海へ』(2004年)を製作・監督・撮影。
秋田県白神の農家民宿の歴史とそこで催された李(い)政(ちょん)美(み)さんのライブを記録した『白神 森のかぞく』(2005年)の製作・撮影を担当。フランスの造形作家ニキ・ド・サンファルと世界で唯一のニキ美術館を作った増田静江さんの記録映画『わたしのニキ』の(2007年)撮影を担当。埼玉県さいたま市で40周年を迎えるレストラン「アルピーノ」の記録映画『おいしい 笑顔 しあわせ』(2009年)の製作・撮影を担当。
北海道浦河町にある「べてるの家」の山本賀代さんと下野勉さん、そして在日三世の盧(の)佳代(かよ)さんとのジョイントライブを記録した『花よ 咲け』(2005年)『KAYOKAYOLIVE わたしは歌う』(2009年)の製作と撮影を担当した。
2011年『小さな町の小さな映画館』の製作・監督・撮影を担当した。
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