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<スタッフ>
監督・音楽 : 川端 潤
取材・撮影 : 万琳 はるえ
翻訳 : 井上 さゆり 他
字幕 : 皆川 秀
製作・宣伝・配給 :
エアプレーン レーベル
(株)プロジェクトラム
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<概要>
ラブソングは、世界のかたすみを黄金郷にする
ヤンゴンの裏道から聴こえてきた読経が
頭になぜかこびりついている。
マンダレーの犬はやさしい顔をしている。
昼間はゴロゴロと道で眠っているのだが、夜になるとどこか闇に向かって吠えている。
それを僕は宿のベッドの上で聞いている。
きっと何か訴えているのだ。
4月、昼間のマンダレーは38度になる。
その中、表通りを一歩入ったところにある裏道を歩く。
壊れかけた家、竹でできた家、道端で女が髪を洗っいる。
密集して家が立ち並ぶ生活圏である。
日本人ときくと、私の家で食事をしていきなさいとあちこちで誘われた。
握手を求めてくるものもいた。
夕方は慌ただしい。
道端でおおきな鍋で湯を沸かし、野菜を切ったり、食事の準備をしている。
それも隣同士みんなで楽しそうにだ。
4時30分頃からたくさん並んだ屋台も忙しく動きだし湯気があがる。
マンダレー駅のホームにはいっぱい家族がねころんでいる。
そこに住み着いているみたいだ。
破棄された列車の中を子供たちが走り廻っている。
線路はゴミだらけ。
パゴダ(お寺)では人はゆっくりと寝ている。
ブッダの真下でも寝ている。
弁当を持ってきておいしそうに食べている人もいる。
ガキが立ち小便していた。
ここではパゴダは公園かもしれない。
闇が始まる前、路地のパゴダから
突然、おおきな音でお経がながれだす。
坊さんがロンジー姿(腰巻)で経本を見ながらマイクに向かっていた。
路地には別の時間がながれている。
映画のなかの人々も別の時間のながれに住んでいた。
ピューの寄進祭の公演は笑にあふれている。
すべるコメディアン。
懐かしい笑。
昔、子供の頃見た風景。
でも、世界は急速に動いている。
川端 潤(監督)
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<コメント>
ひょんなことから、というのが、川端映画のキーワードだ。
待望のミャンマーシリーズ第二作、
21コの太鼓をつなげた宇宙船のような楽器サンワインを持ち帰ったものの、
手に入らなかった外側の木枠を求めて、再びミャンマーのマンダレイへ。
メシを食い、酒を飲み、ふらついて、からだに土地の匂いがしみた頃、
いつしか異郷の人々の暮らしの中に入り込んでいく。
川端のパートナー万琳はるえのカメラは、
あけっぴろげで、明るくて、人懐っこい。
どこへ行っても、みんなが相好を崩して、そばに寄ってくる。
だからこそ、奇跡のように出会ったのだろう、
サインワイン楽団の一家と、歌手でもあるピューという女の子に。
紙でこしらえたチープなテントの中、
前座のコテコテの漫才がスベリマくるうちに、
ちょっと見、アジアの歌姫だったテレサ・テンみたいな少女ピューが登場する。
叶わぬ恋のやるせなさを、手振りをまじえながら、永遠のラブソングを切々と歌い上げる。
始まった演奏は、昇りつめては、ゆるやかに凪いで、いつ果てるともしれない。
これが、生きものの正しいテンポだ。雨のように、水のように、風のように、ゆっくり
宇宙の運行につれそって急ごうとしない。
♪これは、ただの空想。これは、夢。
すぐに消えてしまう、ただの夢
ここではないどこか、天がありたっけの色をぶちまけた夕焼けの向こう、
それと知らずにパラダイスで暮らす人々の、日々の拈華微笑。
明日のことなど犬に食わせろ、オレはこれから旅に出る。
トロリと甘美だけれど、さすらいのスピリットに貫かれた、したたかで不敵な映画だ。
佐伯 誠(ライター)
マンダレーの空気は弛緩しているけど厳かで、歴史を感じるけどド派手で。
そんな空間を、そのまま全部丸出し。それこそ主人公が歌い奏でる舞台のように、何もかも丸出し。
魅惑の空気感。
能町みね子
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<プロフィール>
川端 潤 プロフィール
東京生まれ 作曲家、写真家、プロデューサー
エアプレーン レーベル主催
ロック、ブルース、ジャズ、実験音楽のCD制作
木村威夫美術監督作品 『街』、『OLD SALMON』、『馬頭琴夜想曲』、『黄金花』の
音楽とプロデュースをする。
2015年『BEAUTY OF TRADITION』監督
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