オキナワへいこう

「オキナワに行きたい」
精神科病棟に長期入院する患者たちの心の揺れを見つめるドキュメンタリー映画
(C)
2018年/81分/カラー/16:9/日本

公式サイト

増田敏子/田村正敏/山中信也/山中はるか/小川貞子 他
浅香山病院のスタッフのみなさま/若竹福祉会のみなさま/香ヶ丘商店街のみなさま
<スタッフ>
監督・撮影・編集 : 大西暢夫

協力 :
 浅香山病院/若竹福祉会/NPO法人kokoima/香ヶ丘商店街/
 国営沖縄記念公園(沖縄美ら海水族館)/的場圭(沖縄旅行案内人)/
 アサダワタル(文化活動家)/木谷真人(デザイン)

配給 : おめでたい作業所
<ストーリー>
長い病院生活の中で生まれた夢
一度でいいから沖縄へ
大阪府堺市にある浅香山病院の精神科病棟。何十年と長期入院している患者さんがたくさん暮らしている。そのうちの一人、益田敏子さんは、「生涯のうちに一度でいいから、沖縄へ行ってみたい」という夢を語ったことをきっかけに、有志の看護師たちが、その夢を実現させようと動き出す。他の患者に参加を募ったところ、名乗りを上げたのは4人の男性患者たち。いずれも長期入院の人たちだった。
しかし、最初に言いだしたはずの益田さんが、旅行計画が具体化し始めると「私、やっぱり行かない」と気持ちが揺れ動いた。4人のうち3人の男性患者たちは同じ一人の主治医。しかしその主治医からの許可がおりない。なんとか許可してもらえないかと外泊届を出したものの、受理されることはなかった。結局、3人の男性患者たちの沖縄旅行は叶わぬ夢に終わってしまった。精神科では、たかが沖縄旅行、されど沖縄旅行なのだ。
益田さんは一時外泊。もう一人の山中信也さんは、この旅行をきっかけに10年の入院生活に終止符を打った。そして3泊4日の沖縄旅行が実現した。浦添市のわかたけ福祉会で行われている浅香山病院の写真展に招かれ歓迎を受けた。益田さんがよくお母さんと歌った『故郷』をみんなで合唱しようとしたその時、感極まり唄うことができなくなった。

扉の向こうとこちら
隔てるものは何か
旅は無事に終わり、益田さんは病院に戻り、退院したはずの山中さんは再入院した。病棟での益田さんの表情は明るく、話も弾む。そして山中さんに、大きな転機が訪れる。『彼女の存在は、何よりの薬やな!』目の前に、偶然にも同じ苗字のはるみさんが現れたのだ。それも一つのきっかけとなって、看護師チームが動いた。そして「退院したくない」と言い続けていた山中さんを退院へ導いた。恋人のはるみさんの存在は山中さんにとって大きな支えとなった。
勤続30年以上の元看護部長だった小川貞子さんが、退職後にNPO法人kokoimaを立ち上げ、精神障がい者の居場所を設立した。この沖縄旅行の火付け役でもあった彼女は、今までやってきた精神科看護の経験を反省で振り返った。なぜ、日本には長期入院する患者が多く存在するのだろう。病院と患者のそれぞれの葛藤。受け皿となる地域社会。扉の鍵が閉まろうとする開放病棟の夕刻。向こうの垣根に帰っていく患者さんたち。世間の狭間を行ったり来たり、今日も変わらず穏やかに暮らしている。


< 監督紹介>
おおにしのぶお(写真家・映画監督)
1968年岐阜県揖斐郡に暮らす。写真家・映画監督の本橋成一に師事。ドキュメンタリー映画『水になった村』『家族の軌跡』を製作し、今回で3本目となる。月刊誌『精神科看護』の取材で、全国の精神科病棟を現在も撮り続けている。精神科特有の長期入院に疑問を抱きながら、患者と寄り添う取材が続く。
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