木村威夫美術監督作品大回顧展

文芸作品からエンターテインメントまで、美術監督木村威夫の全貌



木村威夫(きむらたけお)  美術監督

1918年生まれ、東京都出身。
舞台美術監督・伊藤熹朔に師事する。
『海の呼ぶ声』(45)で美術監督としてデビュー。54年、製作が再開された日活に遺跡、72年からはフリーとして活躍。鈴木清順、熊井啓、舛田利雄、黒木和雄、柳町光男、林海象らの監督作を中心に、手がけた作品は200本を数え、日本映画を代表する美術監督として活躍。91年、『式部物語』が第14回モントリオール世界映画祭で最優秀美術貢献賞を受賞。最近作は『ピストルオペラ』(01)、『海は見ていた』(02)など。近く、初の演出を手がけた実験的中篇『夢幻彷徨』を発表予定。


上映作品一覧


1953年/大映/104分/白黒※16mm

原作=森鴎外 
脚本=成沢昌茂 撮影=三浦光雄
監督=豊田四郎 

出演=高峰秀子/宇野重吉
     東野英治郎/芥川比呂志

明治初期風俗に初めて取り組んで難行苦行の毎日であった。ガス燈の灯がまさに涙にうるんでいるような、にじみに見えた。
スラバヤ殿下
1955/16o/白黒/日活

製作:高木雅行
監督:佐藤武
脚本:柳沢類寿
原作:菊田一夫
撮影:横山実
音楽:松井八郎
美術:木村威夫
録音:沼倉範夫
照明:安藤真之助

出演=森繁久弥/島秋子/馬淵晴子/
    有島一郎/丹下キヨ子/飯田蝶子
    三木のり平/内海突破

森繁久弥が一人二役をこなすコメディー映画。


*「或る女」は事情により上映不可になりました。鑑賞希望のお客様にはご迷惑をおかけしましたこと、お詫び申し上げます。
春琴物語
1954年/大映/112分/白黒

原作=谷崎潤一郎 
脚本=八尋不二 撮影=山崎安一郎 
監督=伊藤大輔

出演=京マチ子、船越英二、進藤英太郎

幕末から明治初期迄の大阪風俗の基本形を、時代劇の巨匠・伊藤大輔監督より事こまかく、伝授された。
黒い潮
1954年/日活/114分/白黒※16mm

原作=井上靖 
脚本=菊島隆三 撮影=横山実 
監督=山村聰 

出演=山村聰/左幸子/津島恵子
     滝沢修/柳谷寛

いわゆる社会派リアリズムの世界というものを手がけた第一作である。

月は上りぬ
1955年/日活/103分/白黒※16mm

脚本=斎藤良輔 撮影=峰重義 
監督=田中絹代

出演=安井昌二/笠智衆/佐野周二
     北原三枝/田中絹代

小津安二郎監督の息のかかったシナリオで古き奈良の世界と小津さんの視線の中で、薄氷を踏む想いであった。
警察日記
1955年/日活/111分/白黒

原作=伊藤永之介
脚本=井手俊郎 撮影=姫田真佐久 
監督=久松静児 

出演=森繁久彌/三國連太郎
     伊藤雄之助/三島雅夫

久松監督とは気心が知れていたが、新人になったつもりで、ゆっくりと素直に古風な警察署をデザインした。
女中ッ子
1955年/日活/143分/白黒

原作=由起しげ子 撮影=伊佐山三郎
脚本=田坂具隆、須崎勝彌  
監督=田坂具隆

出演=左幸子/轟夕起子/東山千栄子
     佐野周二/伊庭輝夫

大映時代から尊敬していた監督であるが、まさか、その美術を担当するとは――。東北の民族を改めて勉強し直した。
自分の穴の中で
1955年/日活/125分/白黒

原作=石川達三 
脚本=八木保太郎 撮影=峰重義 
監督=内田吐夢 

出演=三國連太郎/北原三枝
     金子信雄/月丘夢路

中国帰りの社会派監督である。その大胆な発想と骨太の手法は不思議な魅力であった。ベランダの彼方は海であるが、この海のセットは試行錯誤の結果であった
續 警察日記
1955年/日活/120分/白黒※16mm

原作=伊藤永之介 
脚本=井手俊郎 撮影=姫田真佐久 
監督=久松静児 

出演=新珠三千代/伊藤雄之助/芦川いづみ

茨城県の常陸北條の町を主題として造る。第2作でありながら、やはり評判は良好。
ジャズ・オン・パレード1956年 
裏町のお轉婆娘
1956年/日活/93分/白黒※16mm

脚本=吉田広介 撮影=間宮義雄 
監督=井上梅次 

出演=江利チエミ/芦川いづみ
     長門裕之/岡田真澄

予算についてうるさい監督であったが、ショウ場面が沢山有りすぎて、気がついたら予算超過の赤字となっていた。
乳母車
1956年/日活/110分/白黒

原作=石坂洋次郎 脚本=澤村勉 
撮影=伊佐山三郎 
監督=田坂具隆

出演=石原裕次郎/芦川いづみ
      新珠三千代/宇野重吉

田坂監督は、裕次郎の才能に感心しながらの演出であった。淡々とした田坂流の演出に裕次郎はほれてしまい、「田坂おやじ」と呼称しながら尊敬していた。
ジャズ娘誕生
1957年/日活/78分/カラー

原作=松村基生 脚色=辻真先 
撮影=姫田真佐久 
監督=春原政久

出演=江利チエミ/石原裕次郎/青山恭二

裕次郎とチエミの顔合せでコニカラーであった。試写の日には淡いパステル調の画面に拍手された記憶がある――現フイルムはモノトーン――
霧の中の男
1958年/日活/93分/白黒※16mm

原作・脚本=石原慎太郎
撮影=横山実
監督=蔵原惟繕

出演=葉山良二/二谷英明/小林旭

ステージ全部に霧がたち込めているのだが、ガソリンスタンドの中に霧が入ってはならないので、そのスタンド全部をビニールで掩った儘の撮影であった。さぞかしスタッフ全員は、呼吸困難な事であったろう。
陽のあたる坂道
1958年/日活/190分/白黒

原作=石坂洋次郎
脚本=田坂具隆、池田一朗 
撮影=伊佐山三郎 
監督=田坂具隆

出演=石原裕次郎/北原三枝/
     芦川いづみ/川地民夫

レンブランド的ライティングの色彩テストは陰影深き色調であったが、絵葉書的色彩美を求める会社の意に沿はず、白黒映画となってしまった。封切りしたら大入満員となり、日活のヒット番付の第一位となった。
若い川の流れ
1959年/日活/127分/白黒

原作=石坂洋次郎 撮影=伊佐山三郎 
脚本=田坂具隆、池田一朗 

監督=田坂具隆 

出演=石原裕次郎/芦川いづみ
     北原三枝/川地民夫

会社は第二のヒット作を期待したのだが、そうとはならず、凡打となった。田坂監督はこれを最後に東映に移籍されてしまった。
硫黄島
1959年/日活/88分/白黒※16mm

原作=菊村到 
脚本=八住利雄 撮影=井上莞 
監督=宇野重吉 

出演=大坂志郎/芦川いづみ
     小高雄二/渡辺美佐子

私が演劇青年であった頃の、昔なじみの宇野重さんが撮るので、張り切って付き合った。地味ながら芯のある作品である。
霧笛が俺を呼んでいる
1960年/日活/80分/カラー

脚本=熊井啓 
撮影=姫田真佐久 
監督=山崎徳次郎 

出演=赤木圭一郎
芦川いづみ/葉山良二

赤木圭一郎という急成長のスタアが思い切り良く、ハツラツとしていた。毎日が愉しい雰囲気の撮影であった。
紅の拳銃
1951年/日活/87分/カラー

原作=田村泰次郎 
脚本=松浦健郎 撮影=姫田真佐久 
監督=牛原陽一 

出演=赤木圭一郎/笹森礼子/白木マリ

古風な日本家屋の庭の彼方を、電車のパンダグラフがスパークしながら走るが、これはセットでの仕掛けである。プログラムピクチュアでの良心的手法。
硝子のジョニー 野獣のように見えて
1962年/日活/107分/白黒

脚本=山田信夫 
撮影=間宮義雄 
監督=蔵原惟繕 

出演=宍戸錠/芦川いづみ/アイ・ジョージ

全篇つらぬくものは――愛の不毛――というテーマである。ロケとセットのつなぎ具合がよく出来た、という克明なつくり方をしている。
肉体の門
1964年/日活/91分/カラー

原作=田村泰次郎 
脚本=棚田吾郎撮影=峰重義
監督=鈴木清順 

出演=野川由美子/宍戸錠/松尾嘉代
     河西郁子/石井富子

焼壺の有楽町をモデルにしているが、私の気持ちの中では焼けただれた日本国よ、これからどうなるのだ――という問いかけが充満していた――今もその気持ちは変らない。
悪太郎伝 悪い星の下でも
1965年/日活/98分/白黒

原作=今東光 
脚本=笠原良三 撮影=永塚一栄 
監督=鈴木清順 

出演=山内賢/和泉雅子
     野川由美子/多々良純

河内一帯をロケハンしたが、ロケーション出来ずに東京近郊ロケとセットで河内地方をえがいたという、いわくつきの作品である。
怪盗X 首のない男
1965年/日活/83分/白黒

原作=都筑道夫 脚本=山崎巌 
撮影=藤岡粂信
監督=小杉勇 

出演=宍戸錠(二役)/松原智恵子
     川地民夫/明石潮

名優・小杉勇先生は映画を愛していた。題名の示す如く、どうなるか奇々怪々の世界、往年の怪優・明石潮の出演というだけで興味津々。
嵐来たり去る
1967年/日活/100分/カラー

原作=富田常雄 
脚本=池上金男、星川清司 
撮影=横山実 
監督=舛田利雄 

出演=石原裕次郎/浅丘ルリ子
     長門裕之/葉山良二

裕次郎主演の大正ロマンを感じさせる映画である。色々の場面が去来するが、雪の日の坂道の家々の遠景は合成技術である。
刺青一代
1965/日活/87分/カラー

脚本=直居欽哉、服部佳 
撮影=高村倉太郎
監督=鈴木清順

出演=高橋英樹/和泉雅子
     花ノ本寿/伊藤弘子

一週間でおもしろいシナリオにしてしまう。魔法を覗いた感じ、私もそれにつられてエレキにひたった。
みな殺しの拳銃
1967年/日活/89分/白黒

脚本=中西隆三、藤井鷹史 
撮影=永塚一栄 
監督=長谷部安春 

出演=宍戸錠/二谷英明
     山本陽子/葉山良二

長谷部さんの狙いを、より強度に誇張して表現したが、さてどうであったか。不安の儘で終ってしまった。私の若き想いが、どのように見えるか、みつめ直してみたい。
昭和のいのち
1968年/日活/166分/カラー

脚本=池上金男、舛田利雄 
撮影=横山実 
監督=舛田利雄 

出演=石原裕次郎/浅丘ルリ子/高橋英樹
     和泉雅子/浜美枝/中村賀津雄

この頃の日活作品から客離れがはげしく、何を出しても不作であった。一か八か、捨身の戦法のオールスタア総出演という大作であった。魔屈、玉の井の迷路はオープンセットである。
紅の流れ星
1968年/日活/98分/カラー

脚本=池上金男、舛田利雄 
撮影=高村倉太郎 
監督=舛田利雄

出演=渡哲也/浅丘ルリ子
     杉良太郎/松尾嘉代

デュヴィヴィエの「望郷」がお手本である。仲々うまくまとまった作品で、浅丘ルリ子の冷たい表情が仲々のものであった。古自動車部品集合体のコーヒーハウスが、評判になった。
昇り竜 鉄火肌
1969年/日活/90分/カラー

原作・脚本=石井輝男 
撮影=北泉成 
監督=石井輝男 

出演=扇ひろ子/山本陽子/高橋英樹
     藤竜也/小林旭

石井さんとは初めてであったが、私流の勝手な方向に耳をかしてくれて、それぞれの場面が成就していった。感も良いし、思い切りの良い監督である。
蒸発旅日記
2003年/ワイズ出版/85分/カラー

原作=つげ義春
脚本=北里宇一郎、山田勇男 
撮影=白尾一博 
監督=山田勇男 

出演=銀座吟八/秋桜子/
     藤野羽衣子/田村高廣

山田勇男さんの発想の美学は仲々のものである。その好みが私を触発させてくれて、どんどんイメージが発展したのである。
夢幻彷徨
2004年/ワイズ出版/35分/カラー

原案=木村威夫 
脚本=山田勇男
撮影=白尾一博
監督=木村威夫

出演
 銀座吟八/藤野羽衣子
 秋桜子/佐野史郎
 飯島大介/石川真希

撮る意志がなかったが、撮らなければならなくなり、時間も予算もない世界で、追いつめられた、その時にイメージが開花した。編集に時間がたっぷりとかかっている。音楽について随分と迷ったが……。

−−同時上映−−

プロモーションビデオの想いは好きな世界である。初めから一方的横移動の構想は定まっていた。タイミングの良さが勝負であった。


主催 ワイズ出版/日本映画・テレビ美術監督協会


+上映日程+
2004年7月3日(土)→7月23日(金)

(タイムテーブルはコチラ)

7/3(土)・7/14(水)・7/23(金)
木村威夫来館!!



+料金+
前売:前売1回券1300円/前売3回券3600円
当日:一般1500円/学生 1300円/高・中・小・シニア1000円

(各回入替制)