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製作・監督・原案・編集:張克明
撮影:島川太樹
製作助手:劉那 苗積新
翻訳:金山めぐみ
出演:田桂栄とその家族
製作:映画戦線
配給:映画戦線・ポレポレ東中野 |
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北京電影学院出身の張克明(ジャン・クーミン)の長編第1作ドキュメンタリー。
急激な経済発展により、環境汚染が深刻化している中国。そんな中、環境保護に燃え
使用済み乾電池をひたすら回収することに人生のすべてをかける農村出身の中年女性・田桂栄。
カメラは彼女の姿をとおして、彼女を取り巻く人間の反応や、さらには中国における環境問題の根深さをも浮き彫りにする。
問題提起の作品ではあるが、それだけには留まらず、一人の人間の力の大きさと同時に「小ささ」を、決して声高ではなく、不思議なユーモアと共に示唆する佳作。
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−私たちの家は一つだけ。地球のクローンは作れない−
−じゃあ、おまえが全部やるのか− |
環境より経済を優先して高度経済成長を遂げた中国は近年、世界で最も環境汚染の深刻な国の一つになった。乾電池の問屋を営む田桂栄(タ・ケイエイ)さんは、「使用済み電池が環境に悪影響を及ぼす」という新聞記事を目にしてから、たった一人で古電池の回収を始める。彼女が集める乾電池の量は莫大な量になり、家の倉庫を埋め尽くす。何故そこまでしてやるのか理解できない夫と息子。本気で対応してくれない役所。意識が変化しているのか分からない周りの人々。そしてなによりこの先どうすればいいのか確信が持てない本人。それでも彼女は日々回収を続ける。
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ジャン・クーミン 張克明
1970年中国河南省生まれ。1993年北京電影学院シナリオコース卒業、同年中国中央テレビ局(CCTV)入社。
94 年日本へ移住。98年映像テクノアカデミア撮影コース卒業。同年東北新社CM本部撮影部入社。
2002年独立、中国撮影コディネート事務所「映画戦線」設立現在短編1本(10月撮影「北京の秋は日本より1時間遅い」)、長編1本「(タイトル未定)」の制作を控える。
近い将来、世界の映画祭で必ず頭角をあらわすであろう北京電影学院出身の第七世代の一人。
<受賞歴>
2003年第11回地球環境映像祭 EARTH VISION
大賞
2003年福岡アジア映画祭入賞 EKOFILM 2003(チェコ)招待作品等多数
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「第七世代の監督たちと、海賊版DVDとDVカメラ」
新世代と呼ばれる本作品のジャン・クーミン、「プラット・ホーム」のジャ・ジャンクーたちは第五世代の張芸謀の「紅いコーリャン」や陳凱歌の「黄色い大地」から放たれた稲妻に撃たれるようにして、北京電影学院へと集まってきた。それは、今から13年前のことであり、その張芸謀は今や「英雄HERO」という世界をターゲットにした映画を作る国際派の監督として君臨している。
この13年間の間に、中国は大きく変貌した。第五世代の監督たちは、文化大革命時の集団生活を経験し、厳しい統制・条件の中で、劇的なストーリーを創造し、映画表現を高めメッセージを託した。その映画は必ず各省の電影制片場で国営映画として製作された。今は、海賊版DVDの氾濫で、憧れだった映像文化も、人々との生活文化の距離を縮めた。
現在の電影学院の学生も、自由に世界レベルの最高作品を、飽きるほど見られるのである。かつて新世代の監督たちが通ってきた、映画教材の「卒業」を先生と一緒に何十回も繰り返し見て、皆で研究していた時代は終わった。映画が好きなら、誰でも自宅で映画を研究し、作り方を学びDVカメラを持っていれば、自分の映像を記録できるのである。彼らは自由なのである。
海賊版DVDの氾濫が映しているかのように、今1の中国は激しい発展と変動の混乱の時代の真只中である。その社会の中で、かつてない自由を手に入れた彼らが記録したのは、自分を含めた1人1人の顔が見える中国人である。彼らは自分の知っている生まれた場所―田舎に帰る。そこで生活している人々の喜びや悲しみ、悩みについて心を働かせる。
そしてカメラを回す。
かなやまめなみ(中国映画研究者 もと北京電影学院日本人留学生)
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