「“食べる”映画特集」

「中野区健康づくり月間」参加企画

 予告編@youtube

 今日、食に関する問題は尽きることがありません。BSE(狂牛病)問題や鳥インフルエンザといった食料に関する問題、偽装や異物混入などの企業の病理…。私たちの食べているものの正体は一体何なのでしょうか。
 “食べる”という行為は非常にリスクの伴うものです。私たちが口から摂取したものは、血となり肉となり骨となります。妊娠している女性の場合は、その摂取した食品が赤ちゃんの体を形成するのです。このような事実を私たちは見逃しがちです。手軽に食べられる、安い、美味しい、などという理由で自らの身体に毒を取り入れてしまっていいのでしょうか。
 そこで、ポレポレ東中野では、<“食べる”映画特集>を開催いたします。今まで多くの映画が“食べる”行為を映し出してきました。レストラン、食堂、釣り、狩り、牧場の生活、家族の食卓、闘う料理人…様々な光景が思い出されることでしょう。映画を発明したリュミエール兄弟が最初期にカメラで撮影したものも子どもが食事をする風景でした。私たちは今映画によって“食べる”という行為の本質を見直すべきなのかもしれません。今回の<“食べる”映画特集>は食の問題を扱ったドキュメンタリー作品、食料についての産業映画を22作品上映します。
 この企画は「中野区健康づくり月間」の参加企画として行われます。また、この特集上映の合間には11月に公開され大ヒットした映画『いのちの食べかた』の上映もあります。併せてご覧いただければと思います。

企画:ポレポレ東中野
<<上映作品詳細>>
 各作品の上映タイムテーブル
『キッコーマン―醤油と食生活』プログラム (4作品・計104分)
 キッコーマンは日本を代表する企業であり、食に関する産業映画を多く製作してきた企業です。キッコーマンは“キッコーマン国際食文化研究センター”という食に関する文献や映像資料を多く所蔵する施設を有しています。今回はこの“キッコーマン国際食文化研究センター”所蔵作品の中から、70年代に制作された「食べるシリーズ」と、海外での醤油の反響を記録した作品を上映します。

『お料理上手になるために ふたりのクッキング プロに聞く味の秘訣』(1977年/日本/20分)
監督・脚本:湯本昌/山田礼於   製作:堀谷昭/菅澄子   撮影:三角善四郎/増川勇治
照明:宗田武久/久保賀作   録音:尾形龍平   イラスト:富永潤
企画:キッコーマン醤油株式会社   制作:岩波映画製作所
 映像と食の深い繋がりを表しているのが、現在テレビで多く放映されている料理番組・グルメ番組である。“食べる”という行為は映像によって、より生々しく表現される。この作品は、料理人がコツを説明しながら料理をする作品である。ここに“食べる”映画のひとつの典型がある。「キッコーマン・食べるシリーズ」第三作。

『懐石料理―その心と作法―』(1976年/日本/22分)
監督・脚本・編集:重森貝崙   撮影:八木義順/高瀬進   照明:藤末義門/近藤裕康
録音:石川光利   音楽:森本喬雄   解説:松山英太郎
企画:キッコーマン醤油株式会社   制作:岩波映画製作所
 今日では珍しくなった和室に座し和服で食す機会。懐石料理はそういった珍しい機会のひとつである。懐石料理を食べる際に気をつけたいこと、知っておきたいことをまとめた、「キッコーマン・食べるシリーズ」の第一作。

『現代しょうゆ事情―アメリカを行く―』(1981年/日本/35分)
監督・脚本:播磨晃   製作:堀谷昭/菅澄子   撮影:三角善四郎/山口豊寧
照明:橋本登   解説:羽佐間道夫
企画:キッコーマン株式会社   制作:岩波映画製作所
 太平洋戦争の真っ只中、日系人収容所に醤油が届けられると彼らは嬉しさのあまり小躍りしたという。日本人のアイデンティティともいえる醤油が、アメリカではどのように受容されているのかを追った。海外でもテリヤキソースやすき焼きなどで醤油は愛用されていた。海外での醤油事情を記録した作品。

『三歳児・食べるよろこび』(1976年/日本/27分)
監督・脚本・編集:重森貝崙   製作:堀谷昭/菅澄子   撮影:八木義順/高瀬進
照明:藤末義門   録音:石川光利   解説:なべおさみ
企画:キッコーマン醤油株式会社   制作:岩波映画製作所
 三歳児にとって“食べる”という行為は心の成長と深く結びついている。練馬のとある三歳児・誠一郎くんの生活を記録することで、子どもと“食べる”行為の関係を考察する。「キッコーマン・食べるシリーズ」の第二作。

全作品・作品提供:キッコーマン国際食文化研究センター
『人間の街―大阪・被差別部落―』
『人間の街―大阪・被差別部落―』(1986年/日本/80分)
 監督:小池征人
 製作:山上徹二郎
 撮影:一之瀬正史
 音楽:小室等

 作品提供:シグロ
 この作品は、被差別部落の人々の様々な語りから、その差別の重さを感じさせる。いくつかの物語をつなぎ合わせて拾い集めた、人間のもつ輝き。障害者、水俣出身者、住宅要求闘争、解放運動、そして屠畜。屠畜技術者が小学校に出向いて自分の仕事について子供たちに語りかけるシーンは圧巻である。「“誰れかが牛殺さな、たべてかれへんねん、肉たべられへんねん”て言えるくらいな、みんな子供になってほしいなと思う」。
『松前君の後輩の映画』
『松前君の後輩の映画』(1993年/日本/83分)
 監督:大木裕之
 映画・美術・パフォーマンスなど、分野を超越して活躍する映像作家・大木裕之による“松前君シリーズ”第5作。このシリーズは、毎年正月前後に北海道松前町で撮影され、今年20年目を迎える。16mmフィルムで丹念にフレーム化された映像は息をのむほど美しい。幾度と無く登場するラーメンは、観た者の多くに「ラーメンが食べたくなった」と言わしめた。美学的“食べる”映画。
『肉』“Meat”
『肉』“Meat” (1976年/アメリカ/113分)

 監督・製作・編集:フレデリック・ワイズマン
 撮影:ウィリアム・ブレイン
 撮影助手・編集助手:オリヴァー・クール


 作品提供:Zipporah Films   協力:なみおかシネマテーク


 写真:c 1976, Zipporah Films, Inc. / Oliver Kool
 「牛」は如何にして「肉」になるのか。牛はトラックに載せられ牧場の外へと連れ出され、巨大精肉工場で製品化され、市場に送り出されていく。この作品はその全工程をただ静かに記録する。これは「牛」ではない、「肉」である。その唯物論的な世界は決して異世界ではない。
『東京シネマ―食の科学映画』プログラム (3作品・計75分)
 東京シネマは1954年に設立され、製作者・岡田桑三、写真家・木村伊兵衛らを中心に科学映画、PR映画を多く制作した映画製作会社です。東京シネマの作品群の中から、“食べる”ことによって様々に変化する私たちの体内の細菌や物質に焦点を当てた科学映画をまとめて上映します。

『うま味と生命』(1968年/日本/27分)
企画:味の素株式会杜   制作:東京シネマ

 日本で独自の発達を遂げた「うま味物質」の研究。昆布から抽出されたグルタミン酸は、蛋白質を、イノシン酸やグアニル酸は核酸を構成する、いずれも生命にとって不可欠な物質である。これはうま味と生命の間の微妙な関係を暗示している。この作品は、その化学的製法の工業的発展をもたらした生化学や、応用微生物学の科学的基礎をカ強く映像化した。

『生命の牧場』(1966年/日本/30分)
企画:協和醗酵工業株式会社   制作:東京シネマ

 微生物は、その体の中にとりこんだ養分をもとにして、分解・合成をくり返し、蛋白質を作ってさかんに増殖する。何百万種あるか判らない微生物のその生活活動の中から、人間にとって有効な働きを見つけ出し、改良を加え、その生合成を工業化して必要な物質を大量生産する、醸酵工業の真随を描き出した作品。

『選ばれた乳酸菌』(1965年/日本/18分)
企画:株式会社ヤクルト本社   制作:東京シネマ

 この映画は、人間の腸の中で整腸の働きをする乳酸菌に着目し、悪性の細菌との関係、腸の細胞との関係などを顕微鏡微速度撮影を駆使して追求した。科学者は、この細菌を人為淘汰して乳酸菌シロタ株を育てた。これを大量に腸におくりこんで、腸の健康を守ろうとする。

全作品・作品提供:東京シネマ新社
『アルプス・バラード』“Alpine Ballad”
『アルプス・バラード』“Alpine Ballad”(1996年/スイス/100分)
 監督:エリッヒ・ラングヤール


 作品提供:山形ドキュメンタリー映画祭
 20世紀末のアルプスの酪農一家の日常。豚に餌をやり、チーズを作り、牛の乳をしぼり、肥やしを蒔く、冬になると材木を削る。説明も分析も美化もなく、映画の中には言葉も台詞もほとんどなく、カメラはただゆっくりと動く。風景の息を呑むほどの色彩。詩的で官能的なイメージ。この映画の威厳溢れるゆったりとしたテンポは、観客の心を自由に漂わせ、自身に反映させ瞑想することのできる心理的な空間を与えている。
『不安な質問』
『不安な質問』(1979年/日本/85分)
 監督・脚本・構成:松川八洲雄
 製作:松川義子/湯浅欽史/武田哲夫
 撮影:瀬川順一
 音楽:間宮芳生
 録音:弦巻裕


 東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
 1970年代初頭、自分たちの農場を作り運営する都市生活者コミューン「たまごの会」の、その険しい道のりをエネルギッシュに描く。「たまごの会」は、筑波山のふもとに農場を造って家畜を飼い、田畑を耕し食糧を製産する。“食べる”という行為をラディカルにみつめた、ドキュメンタリー史に残る傑作。
『漁』プログラム (3作品・計99分)
 数多く存在する食料に関する産業映画から、このプログラムは漁に焦点を絞り、三作品を上映します。亀井文夫、勅使河原宏、小山内治夫、山本直純、そしてジョン・グリアスン。映画史に名を轟かせる映画人たちによる奇跡のコラボレーションをお楽しみください。

『荒海に生きる―マグロ漁民の生態』(1958年/日本/33分)
 製作:大野忠
 撮影:武井大/臼田純一/菊池周/勅使河原宏
 編集:亀井文夫/西堀美知江/小山内治夫
 録音:大橋鉄也    音楽:長沢勝俊    解説:宮田輝

 作品提供:日本ドキュメント・フィルム
 高知県室戸岬の漁業で生計を立てている村の人々は、この村に漁港がないので神奈川県浦賀港を根拠地としている。100トンに満たない乗組員22人の木造船でマグロ漁に出発、荒波を越え4500マイル彼方の太平洋上、水爆実験が行われているクリスマス島付近までも出漁する。見習いで乗り組んだ18歳の少年を中心に、漁夫の船内での生活、漁の実際などを丹念に描写、その厳しい2ヶ月の労働を描く。

『世界の漁網』(1964年/日本/26分)
 監督:竹内信次   製作:岡田桑三   脚本:吉見泰 
 撮影:長谷川博美   録音:片山幹男   照明:久米成男
 音楽:山本直純   解説:城達也
 企画:東洋レーヨン株式会社   制作:東京シネマ


 作品提供:東京シネマ新社
 この時代、合成繊維の漁網は天然繊維の漁網にとってかわろうとしていた。この映画は、合成繊維のさし網、小型・中型定置網、ひき網、まき網による日本の沿岸漁法を中心に、世界の海にひろがって愛用される合成繊維漁網の現状を紹介する。

『流網船』“Drifters”(1929年/イギリス/40分)
 監督・制作・脚本・編集:ジョン・グリアスン


 作品提供:(財)国際文化交流推進協会(エース・ジャパン)
 ドキュメンタリーの神様ジョン・グリアスンによる映画史に輝く名作。1929年に発表されたこの作品は、英国漁業の中のニシン漁にポイントを絞り、出航から操業、帰港、流通までを丹念に記録している。物理的な作業工程だけでなく、活気のある人間ドラマとして仕上げている。短いカットを効果的に使った編集技法により、彼に続く多くのドキュメンタリー作家に多くの影響を与えた。
『米、麺、ビール』プログラム (4作品・計84分)
 現在私たちの食生活に欠かせない米、麺類、そしてビール。約40年前のこれらの食料の製造過程を見ることで、今日の“食べる”ことへ対する不安や疑問の原因を探ることが出来るのではないでしょうか。

『ビール誕生』(1954年/日本/15分)
 監督:柳澤壽男   製作:岡田桑三
 脚本:吉見泰   撮影:小林米作
 特写:木村伊兵衛   解説:高島陽
 企画:日本麦洒株式会社   制作:東京シネマ

 提供:東京シネマ新社
 太陽の恵みをたたえて結実する健康なビール麦のいのち。さわやかな高原に開く可憐なホップの花のいのち。たくましく繁殖する酵母のいのち。ビールは、この三つのいのちに溢れた健康的な飲料なのである。麦畑、ホップの選別、ビール瓶の大行進…カラーフィルムによる映像は限りなく美しい。日本で最初のカラー短編映画ともいわれる、巨匠・柳澤壽男の初期の傑作。

『新しい米つくり』(1955年/日本/30分)
 監督:丸山章治   製作:岡田桑三
 脚本:吉見泰   撮影:大小島嘉一
 微速撮影:藤井良孝   音楽:松平頼則
 照明:法島繁義   解説:長島金吾
 企画:東北電力株式会社   制作:東京シネマ

 作品提供:東京シネマ新社
 冬が長く、春が訪れるのが遅い東北地方では、早植え増収は農民たちの願いである。新しい電気苗代の方法によって不順な天候を乗り越え、ついに見事な秋の実りを迎えるまでの一年間。新しい米つくりの記録。

『即席ラーメン』(1970年/日本/18分)
 監督・脚本:上野耕三   撮影:古泉勝男
 音楽:武田俊一   解説:棟方宏一
 企画:(社)日本ラーメン工業協会
 制作:記録映画社


 作品提供:記録映画社
 この映画は、インスタント食品の花形として脚光を浴び、大衆に親しまれている即席ラーメンがどのようにしてつくられるか、品質管理や研究開発がどのように行われているかを記録した作品である。ベルトコンベアを流れる即席麺は私たちの胃を敷き詰めるタイルのようである。

『麺』(1975年/日本/20分)
監督・脚本:上野大梧   撮影:古川直木
音楽:武田俊一   解説:藤沢章子
企画:農林省   制作:記録映画社


作品提供:記録映画社
 日本人の食生活のパターンは、戦後に大きく変化した。なかでも様々な麺類が私たちの生活にとけこんでいる。うどん、そば、そうめん、中華めん、スパゲティなど、世界中の麺が、日常の中にある。昔ながらの麺の作り方、麺の特質などを紹介し、さらに上手な調理方法や安心して麺を選ぶ目安となるJAS規格なども紹介する。

『ダーウィンの悪夢』“Darwin’s Nightmare”
『ダーウィンの悪夢』“Darwin’s Nightmare”(2004年/フランス=オーストリア=ベルギー/112分)
 監督・構成・撮影:フーベルト・ザウパー
 録音:コスマス・アントニアディス
 編集:デニーズ・ヴィンデフォーヘル


 
 作品提供:ビターズ・エンド
 生物多様性の宝庫であることから「ダーウィンの箱庭」と呼ばれるヴィクトリア湖。その湖に、今から半世紀ほど前、ささいな試みから、新しい生き物が放たれた。この大食で肉食の外来魚ナイルパーチは、もともと生息していた魚の多くを駆逐しながら、どんどんと増え、状況は一変。湖畔の町にはナイルパーチの一大魚産業が誕生し、周辺地域の経済は潤う。しかし、一方では、悪夢のような悲劇が生み出されていった。
『満山紅柿 上山 柿と人とのゆきかい』
『満山紅柿 上山 柿と人とのゆきかい』(2001年/日本/90分)
 監督:小川紳介/彭小蓮
 撮影:田村正毅/林良忠
 録音:菊地信之/菊地進平
 構成・編集:彭小蓮
 整音:久保田幸雄
 音楽:縄文太鼓


 作品提供:プラネット映画資料図書館
 この作品は、小川紳介と小川プロが『1000年刻みの日時計―牧野村物語』(1986)のために撮った“紅柿篇”と呼ばれる5時間半もの未編集フィルムをもとに、舞台となった上山の人々の手によって13年の時を経て完成した。山形県上山の紅柿は元々とても渋いが、人間が細やかな手仕事で極上の甘味の紅干柿に変える。カメラはその全行程を艶やかに描く。紅柿の風土、紅干柿の伝統、渋柿を甘く変えていく奇跡の時間。
『オレンジ』“Orange”
『オレンジ』“Orange”(1998年/イスラエル/58分)
 監督:アモス・ギタイ
 撮影:フィリップ・バライシュ
 音楽:ジーモン・シュトックハウゼ/マルクス・シュトックハウゼン
 歌:ハンナ・シグラ/マーシャ・イッキナ


 作品提供:アテネ・フランセ・文化センター
 協力:(財)国際文化交流推進協会(エース・ジャパン)
 イスラエル建国以前からパレスチナの主要な輸出産物であったオレンジ生産に関するドキュメンタリー。1930年代の写真と現在のユダヤ人経営者、研究者、アラブ人労働者などの発言を対比させながら、国家経済の発展と産業の近代化にともない、民族間の分断が激しくなった現実を逆照射していく。イスラエル問題を食の視点から突き詰めた、カンヌ映画祭常連の奇才アモス・ギタイによるドキュメンタリー。
 各作品の上映タイムテーブル
-----------------------------------------------------------------------