<概要>
沖縄から、海兵隊が、イラクやアフガニスタンへ送られる。ファルージャ攻撃にも、遠征軍2200人が、沖縄から出撃した。イラク人7000人が犠牲になり、50人の海兵隊員が戦死した。戦死者が出ると、沖縄の海兵隊基地の星条旗は半旗になる。
沖縄で見かける海兵隊員たちは、とても若い。高校を卒業したばかりだろうか。凄惨な戦場とは、あまりに不釣合いな幼顔をしている。
彼らはどこから来た、誰なのだろう。なぜ、ここにいるのだろう。彼らの幼い顔を見つめながら、アメリカへ行こうと決めた。
パリスアイランド(サウスカロライナ州)のブートキャンプ(新兵訓練所)には、毎週、500人の若者たちがやってくる。彼らは、特別な若者ではない。「大学に進学したい」「良い仕事に就きたい」「社会に貢献したい」と軍隊に志願するごく普通の、そして大多数は貧しいアメリカの若者たちだ。
深夜にバスで到着するや否や、教官たちに怒鳴り散らされながら12週間の訓練に突入してゆく。
深夜に到着するには訳がある。疲れさせるためだ。到着後、48時間眠ることが許されない。「疲労と衝撃が、民間人から兵士への変容を容易にする」と教官たちは言う。
「返事は!」「Yes,Sir!」「声が小さい!」「Yes,Sir!」「叫べ!」「Yes,Sir!!!」深夜の基地に若者たちの悲鳴と絶叫が響く。
最初に教えられることは、「口を閉じよ、疑問を発するな」ということ。髪を剃られ、制服に着替え、「私」という言葉を禁じられ、個性の一切と思考を放棄させられる。そして、卒業まで、何万回も同じ事を繰り返す反復訓練。
一言で言えば、その教育は、①洗脳と、②肉体の記憶づくりである。命令には、疑問を持たず直ちに従う人格形成と、考えなくても命令どおりに動く肉体作りだ。沖縄に送られてくるのは、無意識でも人を殺せる技術を身につけた若者たちなのだ。素手で殴り殺し、銃剣で刺し殺し、ライフルで撃ち殺す。
沖縄の海兵隊員たちの顔が、それでも、なぜ幼く、屈託なく見えるのか。それは、彼らが、まだ人を殺していないからだ。戦場は、沖縄の先にある。
人を殺したら、元の自分には戻れない。
Marines Go Home.(海兵隊はアメリカへ帰れ)、一日も早く。
影山あさ子(プロデューサー)
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