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<出演>
寺島しのぶ |
佐野史郎 |
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高良健吾 |
高岡蒼佑 |
染谷将太 |
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山本太郎 |
原田麻由 |
井浦新 |
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増田恵美 並木愛枝 地曵豪 安部智凛 瀧口亮二 岡部尚 山岡一
水上竜士 岩間天嗣 大谷友右衛門 片山瞳 月船さらら
渋川清彦 大西信満 石田淡朗 小林ユウキチ 大和田健介
真樹めぐみ 大西礼芳 石橋杏奈 |
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<スタッフ>
監督 : 若松孝二
原作 : 中上健次
企画 : 若松孝二、昆絹子
プロデューサー : 若松孝二、昆裕子、尾﨑宗子
ラインプロデューサー : 大友麻子
脚本 : 井出真理
音楽 : 中村瑞希、ハシケン
撮影 : 辻智彦、満若勇咲
照明 : 大久保礼司
録音 : 福田伸
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美術 : 増本知尋
メイク : 小沼みどり
衣裳 : 宮本まさ江
編集 : 坂本久美子
音楽プロデューサー : 高護
助監督 : 大友太郎、冨永拓輝、瀧口亮二
特殊メイク : 森田誠
キャスティング : 小林良二
スチール : 岡田喜秀
メイキング : 木全哲
配給・宣伝 : 若松プロダクション/スコーレ株式会社
協力 : 太秦 |
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<イントロダクション>
紀州が生んだ鬼才・中上健次の代表作『千年の愉楽』を、若松孝二が映画化した。名作と名高いが、その構成の複雑さ、神話的な成り立ちから、映像化は難しいと思われていた作品である。
しかし、奇跡は起きた。中上健次の世界そのものが、海と山に囲まれた小さな路地の風景の中に、見事に立ち現れたのである。ロケ地となったのは、眼下に湾を見下ろし、背後に紀州の深い緑が連なり、斜面に細い路地が巡る三重県尾鷲市の小さな集落、須賀利。
時空を超えて路地の男たちの生き死にを見守るオリュウノオバを演じるのは、若松組の演出を知り尽くした名優・寺島しのぶ。そして、命を溢れさせていく美しい中本の男たちを高良健吾、高岡蒼佑、染谷将太ら、旬の若手俳優たちが熱演。若松組常連となった井浦新、佐野史郎らがしっかりと脇を固める。
素晴らしいキャスト陣と昭和の薫りが色濃く漂う舞台を得て、若松孝二が、描き上げたのは、匂い立つような命、不条理ゆえに美しい命の讃歌である。
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<ストーリー>
紀州の路地に生を受け、女たちに圧倒的な愉楽を与えながら、命の火を燃やしつくして死んでゆく、美しい中本の男たち。その血の真の尊さを知っているのは、彼らの誕生から死までを見つめ続けた路地の産婆・オリュウノオバだけである。
年老いて、いまわの際をさまよい続けるオリュウの胸に、この路地に生を受け、もがき、命を溢れさせて死んでいった美しい男たちの物語が甦る。
己の美しさを呪うように、女たちの愉楽の海に沈んでいった半蔵。
火を噴くように生きていたいと切望し、刹那の炎に己の命を焼き尽くした三好。
路地から旅立ち、北の地で立ち上がろうともがいて叩き潰された達男。
生きよ、生きよ、お前はお前のまま、生きよと祈り続けたオリュウ。
うたかたの現世で、生きて死んでいく人間を、路地の人間の生き死にを、見つめ続けたオリュウの声なき祈りが、時空を越えて路地の上を流れていく……。
原作「千年の愉楽」中上健次(河出文庫)
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<コメント>
生きる事は不条理だから美しい
『実録・連合赤軍』『11.25 自決の日』と、昭和の同時代の両極にあった若者たちを描き、自分なりにあの時代に対する落とし前をつけた、と思っていたところに、新たな出会いがあった。中上健次の『千年の愉楽』を映画にしないか、と相談を受けたのだ。
中上と僕は、新宿の飲み屋で大げんかをして以来の友人だった。正直言って、彼の作品をきちんと読んだことはなかったけれど、僕は、彼という人間に惚れていた。
大げんかの原因は、彼が飲みながら「俺はエタだ」と言ったから。僕は「あんたは、作家の中上だからそういう事が言えるんだ、コノヤロー」と言って、灰皿持って中上に殴りかかろうとした。僕のその手を、唐十郎たちが一生懸命押さえていた。
そんな出会いだったけれど、大げんかの後、すごく意気投合した。その後は一度もけんかをしなかった。
彼の小説を読んだことはなくても、彼の内側にある感覚、世界観のようなものに共鳴していた。だから、『千年の愉楽』と出会い、彼が文字という武器で描きあげた、幻想的で壮大な人間の命の物語を、何としても、僕が映画という武器で、僕なりの形で表現したいと思った。
オリュウのイメージはすぐ決まった。寺島しのぶさんしかいない。時空を越えて路地を見守る、あのオバの存在感を演じられるのは、彼女しかいないと思った。さらに、高岡蒼佑君、高良健吾君、染谷将太君と、今最も旬とも言うべき若手の役者さんたちが、集まってくれた。佐野史郎さん井浦新君ら、若松組の兄貴分たちも結集した。
「 人間を描く」という一点だけに集中して、余計な事に余計なエネルギーを使わない。毎度の若松組のその姿勢で、今回の現場も全力疾走した。スタッフ、キャストが一丸となって、そして、東紀州の素晴らしいロケ地にも恵まれて、走り抜けた12
日間だった。
人は、生まれて、死んで、また生まれて、死んでいく。
その営みの繰り返しだ。人が人を差別するこの社会の中に、次々生まれては死んでいく。あまりに不条理で、だけど、だからこそ、中上が思わず文章で描かずにはいられなかった美しさがあり、僕がその文章に触発されて作った映像がある。不条理だから、表現が生まれるのだ。
中上と、あの世で再会したら、彼の感想を聞かせてもらいたい。
若松孝二
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<プロフィール>
若松孝二
1936 年宮城生まれ。63 年『甘い罠』で監督デビュー。
65 年若松プロ設立。『壁の中の秘事』がベルリン国際映画祭に招待され、国辱映画と騒がれる。『天使の恍惚』『水のないプール』など話題作を次々発表。
『愛のコリーダ』などプロデュース作品も多い。2008 年『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』がベルリン国際映画祭「ある視点」部門で2冠受賞。
2010 年『キャタピラー』では主演の寺島しのぶが日本人35 年ぶり3人目の銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞。12 年『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』(主演・井浦新)がカンヌ国際映画祭に、本作がベネチア国際映画祭に正式招待され、三大映画祭を制覇した。
12年10月17日に、交通事故により逝去。享年76。 |
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