袴田巖 夢の間の世の中

さて、私も冤罪なれど死刑囚!
(C)
ドキュメンタリー映画/2016年/カラー/1時間59分

公式サイト

<スタッフ>
監督 : 金聖雄 

撮影 : 池田俊己 
現場録音 : 池田泰明 高木酉一
録音 : 吉田茂一 
編集 : 金聖雄/野村太 
助監督 : 野沢拓臣 
プロデューサー : 陣内直行

音楽 :
 谷川賢作(パーカッション&ピアノ)
 牧原正洋(トランペット&フリューゲルホーン)

製作・配給 Kimoon Film(キムーン フィルム)
<ストーリー>
2014年3月27日「袴田事件再審決定!」は、この日のトップニュースで伝えられた。
「重要な証拠が捜査機関によってねつ造された疑いがある」
「これ以上拘置を続けることは耐え難いほど正義に反する」
冤罪でありながら死刑囚として、48年間という途方もない時間を獄中で過ごした袴田巖さんの再審が決定し、即日釈放された。しかしその表情に喜びは見えない、いや、表情がないといった方がいい。突然の釈放に戸惑っているのか、それとも拘禁症による精神へのダメージによるものなのか・・・。
肉体は解放されても、精神は縛られ、感情は固く閉ざされたままのように思えた。

 私たちは後先を考えずに、その後の生活にカメラを向けた。
「袴田事件は終わった、冤罪もない、死刑制度も廃止した、俺は死刑囚じゃないんだ・・・」そう語る袴田巖さん。ある時は警視庁総監になり、ある時は裁判長になり、ある時は松尾芭蕉になる・・・。

 事件のことを語る袴田さんは、未だに“妄想”という自分の世界から抜け出すことができない。しかし一方で袴田さんの気持ちが解きほぐされていく瞬間をカメラは見つめる。
ある時からはじまった将棋三昧の日々。私も、何度となく挑戦したが、なんと73戦全敗。そのたびに、勝ち誇ったかのようにニヤッと笑顔をみせる。さらに親戚の赤ちゃんを抱いて、好々爺の表情。大好きなボクシングの話題になれば、半世紀前の記憶がよみがえり、試合の論評もする。
袴田さんの「妄想の世界」を、日常という「現実の世界」がゆっくりと包み込んでいく。 
布団で寝る、買い物に行く、好物のあんぱんを食べる、ゆっくりお風呂に入る、
テレビを見る、将棋を指す、うたた寝をする、怒る、笑う・・・。
平凡であたり前のことが、本当は誰にとっても特別なことなのかもしれない。

 死の恐怖から逃れようと必死で生き抜いてきた巖さんは、今も私たちが想像することができない深い闇を抱えている。しかし“平凡な日常”のつみ重ねが光となって、その闇を照らしはじめているように思う。
「巖のあるがままの姿を見て欲しい」と、姉の秀子さんは笑顔で語る。
この映画で何か明確な答えがでたわけではない。しかしスクリーンに映し出される巖さんの存在が、生きることの尊さを、静かに問いかけているような気がしてならない。
監督 金聖雄



袴田事件とは
1966年6月30日未明、静岡県清水市(現静岡市清水区)で、味噌会社専務一家4人が殺され、放火された事件。
味噌会社の従業員だった袴田巌さんは「元プロボクサーならやりかねない」という偏見により逮捕され、拷問を伴う長時間の取り調べにより、「自白」を強要させられました。
袴田巌さんは、裁判では一貫して無実を訴えましたが、1968年静岡地裁で死刑判決、1980年最高裁で死刑が確定。1981年以来、再審を求め続け、遂に2014年3月27日、静岡地裁(村山浩昭裁判長)は再審開始を決定しました。その内容は「証拠はねつ造」「これ以上の拘留は正義に反する」とする画期的なものでした。
この日、袴田巌さん獄中48年目にして東京拘置所から解放されました。しかし、3月31日、静岡地方検察庁が東京高裁に即時抗告したため、再審開始は先延ばしとなり、いまも、死刑囚のレッテルは貼られたままです。
【応援団】
この映画は「応援団」のご支援と、約900人の個人団体の方々の協力によって製作されました。

菅原文太(俳優)  鎌田慧(ルポライター)  谷川俊太郎(詩人) 小室等(音楽家) 
周防正行(映画監督) 香山リカ(精神科医)  中山千夏(作家) やくみつる(漫画家) 
辛淑玉(のりこえねっと共同代表 TRAI東京代表) 太田昌国(民族問題研究・編集者) 
松元ヒロ(コメディアン) 趙博(ミュージシャン) 神田香織(講談師)  谷川賢作(音楽家) 
金子あい(俳優/アーティスト) 吉村喜彦(作家) 南椌椌(絵本作家) 森達也(作家/映画監督)
髙坂勝(「減速して生きる ダウンシフターズ」著者) 

大橋秀行(日本プロボクシング協会会長/元世界ストロー級チャンピオン)
八重樫東(元WBA世界フライ級チャンピオン)
井上尚弥(WBO世界スーパ―フライ級チャンピオン)
輪島功一(元WBA・WBC世界スーパーウエルター級チャンピオン)
新田渉世(日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会委員長)

石川一雄/早智子(狭山事件冤罪被害者) 菅家利和(足利事件冤罪被害者) 
桜井昌司(布川事件冤罪被害者) 杉山卓男(布川事件冤罪被害者)

【特別協力】
日本プロボクシング協会/袴田事件弁護団/アムネスティ・インターナショナル日本
袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会/浜松・袴田巌さんを救う市民の会 
袴田巖さん再審を求める会/無実の死刑囚・袴田巖さんを救う会
袴田巖さんを救援する静岡県民の会/日本国民救援会
死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM 90/部落解放同盟 中央本部
映画「SAYAMA」製作委員会 /映像グループ翔の会
<プロフィール>
金聖雄(
監督)
1963年大阪・鶴橋に生まれる。大学卒業後(株)リクルート勤務。その後自分で商売をはじめるが失敗。「何か?やりたい、出来るんだ」という想いを胸にくすぶらせながら、結局“愛する人”を追いかけて東京へ…。東京にて料理写真家の助手を経験後、助監督になる。1993年からフリーの演出家としてスタートPR映像やドキュメンタリー、テレビ番組など幅広く手がける。2004年、在日1世のおばあちゃんの日常を4年間追いかけたドキュメンタリー映画「花はんめ」を監督。2012年1月ドキュメンタリー映画「空想劇場」完成。2013年「SAYAMAみえない手錠をはずすまで」完成、毎日映画ドキュメンタリー映画賞受賞。2015年11月、「袴田巖 夢の間の世の中」完成。
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