海の彼方

『海の彼方』は日本統治時代、沖縄へ移民した台湾の人々を描くことをテーマにした黄監督の
長編ドキュメンタリーシリーズ≪狂山之海(くるいやまのうみ)≫の第一弾である。
(C)2016 Moolin Films, Ltd.
台湾・日本|2016年|日本語・台湾語|カラー|123分|16:9|5.1ch|DCP|ドキュメンタリー

原題 『海的彼端』 / 英題 After Spring, the Tamaki Family...

★2017 大阪アジアン映画祭 特別招待作品部門 入選  ★2016 台北映画祭 台北映画賞最優秀ドキュメンタリー賞 ノミネート
★2016 韓国DMZ 国際ドキュメンタリー映画祭アジアコンペティション部門 ノミネート  ★2016 ハワイ国際映画祭 入選
★2016 サンディエゴアジアン映画祭 入選  ★2016 ニュージーランド オークランド国際映画祭 入選
★イタリア・ヴェローナ国際映画祭2016 入選  ★2016 台湾New Narrative 映画祭 入選


公式サイト

<出演>
玉木玉代   玉木秋雄   登野城美奈子   玉木美枝子   吉原美佐子   玉木茂治
志良堂久美子   玉木文治   玉木慎吾   登野城忠男

ナレーション:玉木慎吾
<スタッフ>
監督・プロデューサー : 黄インイク[黄胤毓]

共同プロデューサー : 山上徹二郎 劉蔚然

撮影 : 中谷駿吾
音楽 : 中堀海都
編集 : 黄インイク

音響効果 :
 殷偉智(HELPMUZIC, Ltd.)
 施嘯天(HELPMUZIC, Ltd.)
サウンドミキシング : 杜篤之、杜亦晴
ドルビーミキシングスタジオ : 聲色盒子有限公司

字幕製作 : Palabra
ポストプロダクション制作進行 : 謝念儒
D.I ポストプロダクション : 極限色域股份有限公司

製作 : 木林電影有限公司(Moolin Films, Ltd.)

共同製作 :
 株式会社シグロ(Siglo, Ltd.)
 原子映象有限公司 (Atom Cinema,Co.,Ltd.)

提供 :
 木林電影有限公司(Moolin Films, Ltd.)
 株式会社シグロ(Siglo, Ltd.)

配給 : 太秦株式会社(Uzumasa, Ltd.))

協賛・後援 : 台湾文化部、リウボウ、台湾新聞社
<概要>
 今作『海の彼方』は、沖縄県八重山諸島に移民した台湾人「八重山台湾人」を主なテーマとした黄インイク監督の長編ドキュメンタリーシリーズ企画「狂山之海(くるいやまのうみ)」の第一弾。石垣島に住む台湾移民一家、玉木家の人々中心に、これまで日本や台湾でもあまり知られることのなかった八重山台湾移民の歴史に触れながら、曖昧な身分の中で生きてきた移民家族の物語を描いたドキュメンタリー。
 2016年7月9日、台北映画祭(ドキュメンタリー部門)にてワールドプレミア、韓国DMZ 国際ドキュメンタリー映画祭にて国際プレミア、台湾では9月30日より5都市7館で劇場上映を果たす。

 沖縄県石垣島の「嵩田」と「名蔵」という二つの地区を中心に形成された台湾人村落は、日本統治時代の台湾各地から新たな希望を抱いて八重山にやって来た台湾移民が、長年の開墾とそれに伴う苦労の末に築かれた台湾人コミュニティーです。第二次大戦中、台湾への集団疎開、終戦、密入国する形で再度八重山に移り住んだ経緯があったことはあまり知られていません。これらの移民たちは、アメリカ合衆国による27年間の沖縄統治時代、無国籍の時代を経て、1972年沖縄が本土復帰、台湾(中華民国)が国連を脱退した際、正式に日本国籍を取得するようになります。
 沖縄の台湾人は戦後の中国語教育を受けていない為、話せるのは台湾語と日本語のみ。第二世代からは、二か国語を喋るというのは伝承し難く、現在の第三・四世代のほとんどの人々は日本語しか話せません。当然ながら、日本国内での排外と差別は存在し、純粋な沖縄人でもなく日本人でもなく、台湾人とも言いきれない彼らの複雑なアイデンティティーは、第二世代以降の人々にとって常につきまとう問題です。
 沖縄の台湾人移住者の歴史は、八十年を超える長い遷移史ですが、残念ながら、このテーマを扱ったドキュメンタリー作品は多くはありません。2012年、松田良孝氏の『八重山の台湾人』(2004年,南山舎)が中国語に翻訳され、正式に台湾でも出版されました。この本は、台湾移民四世代に渡る八十余年あまりの困難な移住史を詳しくまとめあげ、八重山台湾移民の存在を世に出すきっかけとなり、本作の足掛かりにもなっています。
 本作は、この移住史を歴史的に扱おうとするのではなく、現在50~60歳代の第二世代と、第三・四世代の若者や子供たちの、アイデンティティーと未来を映画の重点として扱おうとする試みです。台湾人アイデンティティーを考えてもらうと共に、台湾人とは何か、日本人とは何か、そして本作をご覧になった方が改めて自身のアイデンティティーを考えるきっかけとなればと幸いです。




<ストーリー>
沖縄石垣島の台湾移民の歴史は、1930年代、日本統治時代の台湾から約60世帯の農家が移り住んだことに始まる。その中に、玉木家の人々もいた。
2015年春、88歳になる玉代おばあは、娘や孫たちに連れられて台湾・埔里へ最後の里帰りに向かう。長年の想いを経て辿り着くが、70年の歳月がもたらした時代の変化は予想以上に大きく…。
ある台湾移民一家の3世代にわたる人生に光を当てることで、複雑な経緯を歩んできた東アジアの歴史を越え、記憶の軌跡と共に人生最後の旅を辿る。

80年を超えて探し求めるアイデンティティー、人生最後の里帰りの旅。
石垣島から、台湾への帰郷
戦前、台湾から最も近い「本土」だった八重山諸島。
そんな石垣島で、映画は、88歳の玉木玉代おばあの米寿を祝う100人を超す大家族と、
台湾へ里帰りする玉代おばあを追いながら、八重山台湾人の歴史を明らかにしていく。
本作はドキュメントとして八重山移民の歴史を追うにとどまらず、
3世代にわたって歴史に翻弄されながらも生き抜いてきた玉木家族の「家族愛」にも迫り、
観る者に忘れていたものを思い出させてくれる。

 
<プロフィール>

監督:黄インイク(黄胤毓/Huang Yin-Yu/コウ・インイク)
 台湾・台東市生まれ。
台湾政治大学テレビ放送学科卒業、東京造形大学大学院映画専攻修士を取得。現在沖縄県在住。
 2010年ドキュメンタリー作品のデビュー作『五谷王北街から台北へ』を発表、この映画は台湾の出稼ぎタイ人労働者をテーマとした人類学映画であり、杭州アジア青年映画祭「アジアの光」青年短編コンペティション部門、北京インディペンデント映画祭などの映画祭に出品される。
 2013年、私的なドキュメンタリー『夜の温度』がスイス・ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭国際コンペティションに招待され、ブエノスアイレス国際ドキュメンタリー映画祭国際コンペティション、杭州アジア青年映画祭、台北映画祭最優秀ドキュメンタリー賞にノミネートされる。
 2014年、河瀬直美がアートディレクターを務めた、奈良国際映画祭とスイスジュネーブ芸術大学の共同映画制作プロジェクト「Grand Voyage:壮大な航海」に参加。短編ドキュメンタリー『杣人』を制作。
 2015年、映画製作会社「木林映画」を台湾で設立。沖縄を拠点に、戦前からの台湾移民や殖民関係などのテーマをシリーズとしたドキュメンタリープロジェクト『狂山之海』の制作を開始。企画『狂山之海』が2015年ベルリン国際映画祭主催の若手映画製作者向けプログラム「ベルリナーレ・タレンツ」(Berlinale Talents)のドキュメンタリー企画部門「ドック・ステーション」(Doc Station)に選出される。制作中のドキュメンタリー企画『緑の牢獄』がスイス・ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭のピッチング・セッションで大賞を受賞。
 2016年、沖縄台湾移民の長編ドキュメンタリー映画第一弾『海の彼方』が台北映画祭2016にノミネート。2016年9月末から台湾劇場公開を果たし、この夏、日本でも公開をすることとなった。
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