<ストーリー>
田畑も、恋も、友情も、苦い記憶も、すべては歌とともにある。
美しくも過酷な自然の中で、人と共に生きることの大切さがここにある。
インド東北部、ミャンマー国境付近に位置するナガランド州。そこに広がる棚田には、いつも歌が響いている。村人たちは信じられないほど急な斜面に作られた棚田の準備、田植え、穀物の収穫と運搬といった作業を、機械が入りにくい土地のためすべて人力で、グループごとに行っている。そして、その作業の間はいつも歌を歌う。季節の移り変わりの豊かさ、友愛の歌、その他、生活のすべてを歌で表現している。農作業をしている最中、一人が声を発すると、それに続けて他の一人も歌いはじめる。女性も男性も一緒になって掛け合いながら歌われる「リ」と呼ばれるその歌は、山々の四方八方に広がっていく。田畑も、恋も、友情も、苦い記憶も、すべてが歌とともにある。
インド東北部・ナガランド州の山々に響く、誰にも知られていなかった歌声
驚くべきハーモニーが静かに世界を魅了する音楽ドキュメンタリー
ナガランドは「ナガの土地」という意味だがナガ族は一部族ではなく、主要なものだけでも16の民族が存在する。本作の舞台はナガランド州南東部にあるペク県。ここを中心に居住する「チャケサン・ナガ」はナガ族の中でも特に歌が得意な民族で、彼らが歌う民謡「リ」は南アジアの音楽文化では極めてまれなポリフォニー(多声的合唱)で歌われる。アフリカや東ヨーロッパの民謡や歌唱を想起させるナガランドのその歌声は、インドからの分離独立紛争が半世紀近く続いていることもあって世界でもまだほとんど知られておらず、聴く者に驚きを与え、その響きに魅了されるだろう。
共同監督の、アヌシュカ・ミーナークシとイーシュワル・シュリクマールは、インドの南部出身。ナガランドに古くから伝わるこの音楽に魅了された彼らは、山々に広がる棚田の雄大な風景や季節の移り変わり、人々の生活や農作業の一部始終を誇張することなく淡々とカメラに捉えていく。山形国際ドキュメンタリー映画祭・アジア千波万波部門で日本映画監督協会賞と奨励賞のW受賞を始め、世界各国の映画祭で人々を静かに深く魅了した音楽ドキュメンタリーが遂に日本公開となる。
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