花筐/HANAGATAMI

少年は魂に火をつけ、少女は血に溺れる。
©唐津映画製作委員会/PSC 2017
2017/日本/カラー/ビスタサイズ/169分


公式サイト

<出演>
窪塚俊介  満島真之介  長塚圭史  柄本時生
矢作穂香  山崎紘菜  門脇麦  常盤貴子

村田雄浩  武田鉄矢  入江若葉  南原清隆  小野ゆり子
岡本太陽  根岸季衣  池畑慎之介  細山田隆人

白石加代子  大川竜之助  片岡鶴太郎  髙嶋政宏  原雄次郎  品川徹  伊藤孝雄
<スタッフ>
監督 : 大林宣彦

製作 : 辻幸徳(唐津映画製作委員会)、
      大林恭子(PSC)
協力 : 檀太郎

原作 : 檀一雄「花筐」(講談社・文芸文庫)
脚本 : 大林宣彦、桂千穂 

音楽 : 山下康介
撮影監督 : 三本木久城
美術監督 : 竹内公一
照明 : 西表燈光
録音 : 内田誠
編集 : 大林宣彦、三本木久城
整音 : 山本逸美
監督補佐 : 松本動

エグゼクティブプロデューサー : 大林恭子
プロデユーサー : 山﨑輝道

配給 : 新日本映画社



©唐津映画製作委員会/PSC 2017
<解説>
「映画化するのは終生の夢であった」・・・大林宣彦
世界的カルト映画にして大林宣彦監督のデビュー作『HOUSE/ハウス』(77)より以前に書き上げられていた幻の脚本が40年の時を経て奇蹟の映画化。
自分の命さえ自由にならない太平洋戦争勃発前夜を生きる若者たちを主軸に、心が火傷するような凄まじき青春群像劇を、圧倒的な映像力で描く。
原作は三島由紀夫がこの一冊を読み小説家を志したという檀一雄の純文学「花筐」。尾道三部作をはじめ数多くの“古里映画”を撮り続けてきた大林宣彦が選んだ佐賀県唐津市を舞台に、唐津の魂「唐津くんち」が映画史上初の全面協力。
窪塚俊介主演、満島真之介、長塚圭史、常盤貴子ほか。『この空の花』『野のなななのか』に続く本作は、余命宣告を受けながら完成させた大林宣彦的 “戦争三部作”の締めを飾る魂の集大成である。
<ストーリー>
1941年の春、アムステルダムに住む両親の元を離れ、佐賀県唐津に暮らす叔母(常盤貴子)の元に身を寄せることになった17歳の榊山俊彦(窪塚俊介)の新学期は、アポロ神のように雄々しい鵜飼(満島真之介)、虚無僧のような吉良(長塚圭史)、お調子者の阿蘇(柄本時生)ら学友を得て“勇気を試す冒険”に興じる日々。
肺病を患う従妹の美那(矢作穂香)に恋心を抱きながらも、女友達のあきね(山崎紘菜)や千歳(門脇麦)と“不良”なる青春を謳歌している。

しかし、我が「生」を自分の意志で生きようとする彼らの純粋で自由な荒ぶる青春のときは儚く、いつしか戦争の渦に飲み込まれてゆく。「殺されないぞ、戦争なんかに!」・・・俊彦はひとり、仲間たちの間を浮き草のように漂いながら、自らの魂に火をつけようとするが……。
<大林宣彦監督からのメッセージ>
映画『花筐』の源となる脚本の初稿は、いまを去る40数年の昔、僕、大林宣彦の劇場用映画第一作『HOUSE/ハウス』(77)を撮るよりも前に、第一作を『花かたみ』として製作する予定で書き上げておいたものである。

三島由紀夫がこの一冊を読んで小説家を志したという、檀一雄最初の短篇集に収められた鮮烈な純文学『花筐』が原作である。文豪佐藤春夫による一頭の蝶の絵の装幀に、 僚友・太宰治が帯文を寄せた箱入り愛蔵本を手に、これを映画化するのは僕の終生の夢であった。檀一雄さんの生前にお逢いして映画化の許可は戴いており、この空想的で美的な言語世界を映画にするには何処が宜しかろうかと伺ってみたところ、「唐津へ行ってご覧なさい」、と微笑みながら一言。檀さんはその頃既に重い病に臥しておられたのでありました。

それから日が経ち、檀一雄さんの訃報が御子息の檀太郎君から告げられた。僕の青春のひとつがそこで終わり、映画『花かたみ』の脚本は書棚の奥深くに仕舞われて、永い眠りの時の中に入って了った。それから更に歳月が流れ、僕は独り、遠い青春の記憶を弄っていた。映画が誕生するにも、「旬」があります。40年前には見えなかったものが、いままざまざと見えてくる、ということも。

昭和11年(1936年)文芸誌に『花筐』が発表されたその翌年、処女短篇集『花筐』の出版記念予告日に檀一雄は召集令状を受け取り、戦地へ赴いている。そして多くの尊い命が、戦場の露と消えた。一見、放蕩無頼にも見ゆる本作の若き登場人物たちの精神や行動も、まことは切実なる生きる意志、――我が命は、魂は、我が信じるままに自由であらせよ、と願う、その純血の現れであったか、と。僕はこの物語を、いま新たに昭和16年(1941年)、あの太平洋戦争勃発の年に置き換えて語ってみようと思う。それはいまを生きる僕らに、より切実な、戦争の記憶であるから。

「これは、いま必要な映画ですね」。唐津の里の里人のこの一言に励まされながら・・・。
-----------------------------------------------------------------------