赤色彗星倶楽部

武井佑吏監督長編デビュー作
2017|カラー|日本|82分

PFFアワード2017日活賞&映画ファン賞
田辺・弁慶映画祭2017グランプリ
東京学生映画祭2017準グランプリ受賞


公式サイト

<コメント>
『赤色彗星倶楽部』に込められた熱量と醒め方、その隔たりに、
観客が大きな才能を発見する身震いがある。
あるいは、
器用さと不器用さのどうしようもなく埋められぬ溝に、
若い才能へとだけ向けられる特別な愛情が流れ込んでくる。

赤色彗星を前にした少年少女の躁鬱。
“嵐の前の静けさーー”
それが、武井佑吏の物言わぬ寡黙さと、目の奥の隠せぬ野心によく似合う。
『赤色彗星倶楽部』は、運命的な、作家のデビュー作なのだろう。

この作品のエンディングの美しさは、
先人からの影響による反響に、今にも埋もれてしまうような映像美としてではなく、
それでも、この命だけは、決定的にオリジナルであるのだという、叫びのような産声の中に生まれていた。
幕引きの数分間に、武井佑吏の脆い生命を幻視するような。
「この世界で、たった一人の映画作家でありたい」
そんな願いそのもののようなエンドロールであり、それを見逃すことが、どうしても出来なかった。

観客に発見されることだけを、待ちわびる未来の彗星と、
いつもこんな浮き足立つ気持ちで、新しい作家の誕生に立ち会える私たちの歓びが、こんなにも出会いを待ちながら、
まるで嵐の前夜に、倶楽部活動をしているみたいだ。
ポレポレ東中野は、誰かの人生を変える映画を上映し続けてきた映画館だ。
劇場の夜にたった7回だけ降る、赤色の彗星をお見逃しなく。
この映画は、かけがえのない前夜の証明になる。
武井佑吏は、次世代の映画作家のトップランナーになるだろう。

山戸結希(映画監督)


<ストーリー>
数十年に一度、地球から観測される赤色彗星。「彗星が通り過ぎる時、強力な磁場を作ることによって、タイムパラドクスが発生する」という奇妙な学説を耳にした主人公ジュンと天文部の仲間たちは、宇宙をひた走る彗星と同じ物質であり、強い磁力を持つ「彗星核」の創作に取りかかった。くだらないことに没頭する仲間がいる、隣には幼なじみのハナがいる。平凡なようで、充足した日々。彗星の噂の真実なんて、どうでもよかった。願い事なんて、きっとひとつもなかった。
<概要>
PFFアワード2017で日活賞&映画ファン賞、田辺・弁慶映画祭ではグランプリを獲得し、数々の自主映画祭を沸かせた本作品。
大林宣彦、相米慎二ら80年代日本映画の血を脈々と継ぐ武井佑吏監督が描くのは、天文部をめぐる青春SF群像劇。
嵐の前の静けさに胸を高鳴らせたあの頃の瑞々しい記憶を呼び覚ます。
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