タイムテーブル
本作『アメリカ 戦争する国の人々』は、8つのEpisodeからなる、全編で494分の長編ドキュメンタリーです。
|
<スタッフ>
監督 : 藤本幸久
プロデューサー:影山あさ子
撮影:栗原良介、藤本幸久、中井信介、影山あさ子 編集:藤本幸久、栗原良介 |
インタビュアー:影山あさ子
コーディネーター:加藤鈴子、福原顕志
字幕:影山あさ子
企画・製作・著作 : 森の映画社 |
|
戦争する国に暮らすということは、どういうことなのか・・・。
2006年から始まった1年半に渡る撮影の集大成。藤本幸久監督、渾身の8時間14分。
|
どの戦争でも、兵士になるのはその国の普通の若者たちだ。
映画「ONE SHOT ONE KILL」が、その入り口を描いたものだとすれば、「アメリカ−戦争する国の人びと」は、若者たちのその後を描いたものといえるだろう。二十歳そこそこの若さで、戦争を経験した人々は、その後、どのような人生を生きてきたのか。
ベトナムからイラクまで---アメリカの戦争体験がここにある。
映画は8つの物語から構成されている。
(@高校、Aイラク戦争、B戦死、C先住民、D見えない人々、Eベトナムの記憶、F抵抗、Gそれぞれの春)
それぞれ独立しつつ、響きあう8つの物語を通してみるとき、今まで知らされなかったアメリカの本当の姿が見えてくる。 |
|
8つのエピソード |
<Episode 1: High School / 高校>
高校生が軍隊について持っているイメージを問えば、「強さ」、「大学の学費」、「社会保障」、「職業訓練」と答えが返る。カリフォルニア州バークレー高校。日々、軍隊の勧誘と宣伝のターゲットとなる高校生たちに、元教師のスーザン・キンランと元海軍兵士のパブロ・パレデスが、入隊を決める前に考えてほしいと、軍隊の実情や経験を語る。(30分)
<Episode 2: Iraq / イラク戦争>
イラク帰還兵たちが、戦場での経験を語る。間近に目撃した死、人を殺す経験、PTSD、劣化ウランによる被曝、そして彼らを支える家族たち。イラクやアフガンでの戦争にすでに150万人以上のアメリカの若者が送られた。(79分)
<Episode 3: Gold Star / 戦死>
イラクでの米軍の戦死者も4,000人を越えた。2004年4月にバグダッドで戦死したケーシー・シーハンの母シンディ、2004年8月にナジャフで戦死したアレックス・アレドンドの父、カルロスにとっても、他の4千余名の家族にとっても、子供を失う悲しみはは永遠だ。(31分)
<Episode 4: Indigenous / 先住民>
メキシコ系住民が多数を占めるサンアントニオ市にあるケリー空軍基地。周辺住民や基地労働者は、多発するがんや白血病に苦しめられ、健康被害は子や孫にも及んでいる。アメリカは戦争を繰り返しながら、領土を拡大してきたが、テキサス州もかつてはメキシコだ。住民たちこそ、元々、この地に暮らし続けてきた人びとの末裔なのだが…。(42分)
<Episode 5: Invisible / 見えない人びと>
アメリカでは、350万人がホームレスと言われている。ワシントン州サーストン郡(人口24万人)でも、その数は700人を超える。とてもシェルターには入りきれない。人目を避け、森の中に暮らす人びと…。ホームレスの3人に一人は、イラク、アフガン、ベトナム、コソボ、パナマ・・・様々な戦争を経験した元兵士たちだ。(68分)
<Episode 6: Vietnam / ベトナムの記憶>
のべ260万人の米軍兵士が送られたベトナム戦争。終わって30年以上経つが、多くのアメリカ人にとって、それは未だ脳裏を去らない出来事だ。かつての若者たちは、ベトナムで何を見、その後どうやって生きてきたのか・・・3人の帰還兵が語る。(66分)
<Episode 7: Resist / 抵抗>
アメリカの歴史は戦争の歴史。しかしそれは同時に、戦争を拒否した兵士たちの歴史でもある。それぞれの時代に、抵抗し、戦争を拒否した兵士たちがいた。ベトナム戦争、湾岸戦争、そして、今日も続くイラク戦争でも。(109分)
<Episode 8: Springs / それぞれの春>
共に歩く伴侶を得たり、家族が増えたり、元兵士やホームレスの人たちの暮らしにも、少しずつ変化が訪れる。前に向かって歩き始めた人びとがいる一方、ホームレスの暮らす森では殺人事件も起きる。ブートキャンプ(新兵訓練所)を卒業して、若者たちはまた、戦場へ送られてゆく。いまだ終わらぬ戦争に、今日も声を上げ続けるおばあちゃんたち。旅の終わりに訪れた2008年、それぞれの春の景色。(69分)
|
|
|
<コメント>
他人事ではない…
2009年、この作品を藤本監督に見せてもらった時、その少し前にダイエット商品のビリーズブートキャンプ」が流行っていたこともあり、面白そうだな(でも長いな)、と見始めたのですが、衝撃を受けました。
まず、実際に戦場に行ってきた普通の市民の言葉が重く、戦争は戦場だけで終わるのではなく、帰って来てからの人生を確実に蝕むということが描かれていましたし、なによりも、「戦争をする」つまり、実際に戦場に行く人々をどう育てるのか、を考えている人々がいることを知り、正直、恐怖を感じました。
2015年のこの時期だからこそ、「戦争する国」の未来には何が待っているのか、改めて本作を見てほしいと思い、再上映致します。
大槻貴宏(ポレポレ東中野支配人) |
|