「アレクセイと泉」「ナージャの村」

今も変わらずここに暮らす人々がいる。

ウクライナ共和国(旧ソ連)チェルノブイリ原子力発電所で事故が起こったのは、
今から21年前の4月26日のこと。
風下となったベラルーシ共和国では、放射能に汚染されたいくつもの村が強制移住区となった。
「ナージャの村」そして「アレクセイと泉」は、そんな地図から消えて行った村に、
変わらず暮らす人びとの物語。
畑には、玉葱、ライ麦、キュウリ、じゃがいも…。庭には、馬、ヤギ、豚、犬、ネコ、ガチョウ。
水を汲み、斧を振るい、きのこ採りに出かける。豊作を願っては歌い、実りをよろこんでは踊る。
そんな彼らにとってありふれた日々が、豊かに感じられるのは、どうしてなんだろう。



公式HP(サスナフィルム)


チェルノブイリ、ベラルーシ。いのちの大地…。
「ナージャの村」

ビスタサイズ/カラー/118分/サスナフィルム1997年作品

フライブルグ環境映像祭'98 グランプリ受賞 
ハワイ国際映画祭ドキュメンタリー部門 グランプリ受賞

監督 本橋成一 
製作統括 鎌田實 
製作 小松原時夫 神谷さだ子 
撮影 一之瀬正史
編集 佐藤真 
音楽 小室等 
語り 小沢昭一

<解説>
暖かくなったら、仕事にとりかかろう。種を蒔こう。わたしはベラルーシ語で話すよ。
暖かくなるように。この冬はもううんざりだよ。暖かくなるまで待つだけだよ。


'97年に発表された本橋監督第一作目「ナージャの村」の舞台はゴメリ州ドゥヂチ村。強制移住地区に指定され、多くの人々が故郷を去った村のひとつだ。事故前には300世帯以上が暮らしていたドゥヂチ村は、事故後遮断機によって閉鎖され、地図からも消えた。しかし、そこに移住を拒み、故郷に暮らし続ける6家族がいた。
8歳の女の子ナージャを中心に、家族や村人たちの大地にねざした暮らしを、四季を通じて映し出している。写真家ならではの美しい映像で綴る、いのちの大地の物語。

公式HP(サスナフィルムサイト内)

百年の水の物語。
「アレクセイと泉」
35ミリ/ビスタサイズ/カラー/104分/サスナフィルム2002年

ベルリン国際映画祭ベルリナー新聞賞・国際シネクラブ賞受賞
サンクトペテルブルグ国際映画祭グランプリ受賞

監督 本橋成一

制作 小松原時夫 神谷さだ子
撮影 一之瀬正史 
録音 弦巻裕
編集 村本勝 

音楽 坂本龍一

<解説>
いのちの大地、汚染された村に泉の水はただ美しく、湧きだしていた。
人間はこの百年、何の豊かさを求めてきたのか。

本橋成一監督第2作目となる「アレクセイと泉」では、ゴメリ州ブジシチェ村にある泉と、村に残った唯一の若者であるアレクセイを中心に人々の日常を美しい映像で描く。この村も強制移住地区に指定されており、学校跡からも、畑からも、森からも、採集されるキノコからも放射能が検出される。
しかし不思議なことに泉の水からは放射能がまったく検出されないのだ。「なぜって?それは百年の泉だからさ」と村人たちは自慢そうに答える。この百年、人間は何の豊かさを求めてきたのだろう。こんこんと湧く泉は、私たちに“本当の豊かさとは何か”を静謐に語りかけている。

公式HP
(サスナフィルムサイト内)

【本橋成一プロフィール】
68年「炭鉱〈ヤマ〉」で第5回太陽賞受賞。以後、上野駅、サーカス、築地魚河岸など市井の人々を撮り続ける。
91年からチェルノブイリ原発事故被災地ベラルーシに通い、その地に暮らす人々を写真と映像に写す。
95年「無限抱擁」(日本写真協会年度賞他)98年「ナージャの村」(第17回土門拳賞受賞)。映画「ナージャの村」「アレクセイと泉」はは国内外で高い評価を得る。
最新作に、三線片手に生きてきた石垣島のおばあを追った「ナミイと唄えば」がある。