「バックドロップ クルディスタン」
BACKDROP KURDISTAN

「クルド難民」と「日本人の僕」の物語

日本|2007年|カラー|DV|100分|日本語/トルコ語 

2007 山形国際ドキュメンタリー映画祭「アジア千波万波」部門、市民賞・奨励賞ダブル受賞
2008 毎日映画コンクール「ドキュメンタリー映画賞」受賞
2008 Vision de Reel国際ドキュメンタリー映画祭(スイス、4月開催)招待決定


 予告編@youtube

 公式サイト

<スタッフ>
監督:野本大  

撮影:野本大、大澤一生、山内大堂  
編集:大澤一生  
制作:大澤一生

製作・配給・宣伝:バックドロップフィルム
<ストーリー>
「クルド難民」と「日本人の僕」の物語
カザンキラン一家はトルコでのクルド人に対する迫害を逃れるため「難民」として日本にやってきた。しかし難民申請は認められず、強制送還の危険性が高まった2004年7月、同じクルド人一家らと共に、難民認定と第3国出国を求め、国連前で座り込みのデモを開始する。
酷暑の中、必死にアピールする家族たち。度重なる国連との摩擦を経て、ついに「マンデート難民」の認定を勝ち取った。しかしその4ヵ月後、仮放免申請に向った父アーメット、長男ラマザンは突然強制送還されてしまう・・。
僕は彼らと身近に接しながらその一部始終を撮影していた。彼らを日本から追い出したのは、紛れもなく僕が生まれ育った日本という国だった。日本人の僕は「何者」として彼らと向き合えばよいのか??クルド人とは??難民とは何か?その答えを探しに僕は彼らの祖国トルコへ旅立った・・・。
<解説>
「難民認定制度への問題提起」+「現代の若者が日本人として彼らと向き合う」視点
「バックドロップクルディスタン」は日本にいたクルド難民のカザンキラン一家を追った作品です。国連前座り込みから、父アーメット、長男ラマザンの強制送還までを、監督の野本は家族と身近に接しながら撮影しました。カザンキラン一家については様々なメディアで伝えられていたのでご存知の方も多いかもしれません。彼らの行動は日本の難民認定制度の問題を浮き彫りにするものでしたし、日本人にはあまり知られていないクルド難民の存在を訴えるものでした。作品中ではそういった「社会性のある要素」を、より多くの人に知ってもらうために問題提起していきます。また日本国内の難民問題としてだけではなく、その発端となっている彼らの出身国トルコに赴き、様々な人に話を伺ったり、カザンキラン一家の出身地を訪ねながら、トルコでのクルド人の歴史と現状等、政治的歴史的背景を含め「クルド難民とは何か」というテーマを多角的に追求していきます。
そして、重要なのは「普通の日本人」である監督の野本が、彼らと身近に接し撮影していく中で何を感じ、何を発見してきたのかという過程です。現在の日本では、個人個人が「社会と関係している」という実感が希薄になってきています。大きな事件や事象に対して興味や関心は寄せたとしても、最終的にはどこか人事で済ましてしまうのが現状です。生活の先行きが見えづらい社会不安からか、年金問題や賃金格差等に関しては多くの方が敏感に反応するのですが、すぐには自分の身に直結しないような問題に関してはたちまち無関心になってしまいます。最近では教育基本法改正案が新聞やマスコミで大きく取り上げられていたのにも関わらず、世論が盛り上がらないままあっという間に可決されてしまいましたし、先の参議院選挙では「改憲」の争点は「年金問題」にかき消されてしまいました。特に、物心着いたときから「不安の時代」を生きてきた今の10代、20代の若者の多くは、手の届く範囲で自分が安心できる、半径の狭い「社会」に自然と身を置くようになったように感じます。
監督の野本もまた、そんな時代の日本で生まれ育った若者の一人です。今まで難民問題について何の知識もなかった彼は、最初は難民としてではなく一人一人の人間としてカザンキラン一家と出会い、撮影し始めました。作品では「難民」の側面のみ描くマスメディアの映像では見ることができない、彼らの素の姿が写し出されています。しかし、国連前での座り込み、強制送還を経て、彼らがクルド人であり、そして難民であるという事実を監督は目の当たりにしてしまいました。日本人として、一人の人間として、個人のつながりからその先に広がる「社会」「世界」とどう向きあうべきなのか。難民認定問題やクルド難民という社会的な要素を直接的に訴えるのではなく、「何者が撮ってそれを伝えようとするのか」というスタンスを作品の核にしていきたいと考えています。

クルド難民とは
クルド人は「国家を持たない最大の民族」と言われ、その数は2000〜3000万人と推定されている。クルド人はその地理的状況から、常に周辺諸国の争いに巻き込まれてきた。第1次大戦後、敗戦国オスマントルコの分断に当たり、クルド人国家が成立する兆しもあったが、トルコ共和国の建国、石油を巡る欧州諸国の思惑もあり、クルド人が「クルディスタン(クルドの土地、クルドの国の意)」とよぶ地域はトルコ、シリア、イラン、イラクの国境にまたがって分断された。最大のクルド人人口(全人口の20%、推定1200〜1500万人)を抱えるトルコでは、建国の父、ムスタファ・ケマル・アタテュルクがトルコ単一民族主義を提唱したため、1923年の建国以来クルド人という民族の存在自体を認めない政策を打ち出してきた。近年までクルド語の使用、クルド語による教育、音楽は禁止され、クルド人は「トルコ人」として生きることを余儀なくされてきた。
一時沈静化していたクルディスタン独立運動は、武装闘争を主とするPKK(クルディスタン労働党)が台頭した80年代に再び活性化。以降、クルド人はトルコ政府から激しく弾圧された。同時に国外へ脱出するクルド人も増加し、ドイツ等の欧米諸国を中心に、約90万人のクルド人が海外で暮らしている。日本でも90年代からクルド難民が入国し始め、現在では埼玉県を中心に約500人のクルド人が日本で暮らしているが、トルコ国籍クルド人の難民申請は日本国内では未だに1件も認められていない。
-----------------------------------------------------------------------
イベントの様子
7/5(土)、7/6(日)

<舞台挨拶>

 ゲスト
 : 野本大(監督)
   大澤一生(プロデューサー)
  *ゼリハ・カザンキランさん(カザンキラン家長女)
    →欠席
ゼリハ・カザンキランさん来日許可下りず

7月5日(土)、6日(日)に舞台挨拶を予定していたゼリハ・カザンキランさんのビザが下りず、来日できなくなりました。

《経緯》
現在、ニュージーランド在住のゼリハさんは、映画「バックドロップ・クルディスタン」の公開に合わせて滞在ビザの申請をしておりました。
しかし、6月中旬になってもビザは下りず、ニュージーランドの日本総領事館に出向いたところ、領事館職員から「君たちのことは忘れてないからね」と言われたとのこと。
その事態を受け、民主党・今野東参議院議員が来日許可が下りるよう外務省、法務省に働きかけましたが、6月30日(月)、正式に来日不許可が決定しました。
7/11(金) トークイベント

(左から)
 アーメット・カザンキランさん
 サフィエ・カザンキランさん
 野本大監督

現在ニュージーランドに居住しているカザンキラン一家と、ネット電話で繋ぐトークショーを開催しました!
7/12(土)  トークイベント

(左から)
 原一男さん(映画監督)
 野本大監督


「極私的エロス・恋歌1974」「ゆきゆきて、神軍」等、ドキュメンタリー史に残る傑作を生み出している原一男監督をお迎えして、トークイベントを開催しました!
7/18(金)  トークイベント

(左から)
 南部虎弾(電撃ネットワーク)
 野本大(監督)

本作に感動し、熱いコメントを寄せて頂いた「電撃ネットワーク」の南部虎弾さんをお迎えして、トークイベントを開催しました!
7/19(土)  トークイベント

(左から)

 池谷薫(映画監督)
 野本大(監督)
 大澤一生プロデューサー

日本のドキュメンタリーでは近年稀に見る大ヒット作「蟻の兵隊」の池谷薫監督をお迎えし、日本人が国外の題材を扱う苦労やその意味について、語って頂きました。
7/21(月)   トークイベント

ゲスト : カザンキラン一家 × 野本大(監督)

ニュージーランド在住のカザンキラン一家と、ネット電話で繋ぐトークショー第2弾を開催いたしました。