『バオバブの記憶』

『星の王子さま』で”さかさまの木”として知られる樹、バオバブ。
樹齢1000年と言われるこの樹と、樹を敬い、共に暮らすアフリカ・セネガルの人々の記録。

2009/カラー/102分/35mm/ビスタサイズ/ドルビーSR

 公式サイト


『いつから人間だけが地球上の生きものたちの時間を追い越し、走り出してしまったのか』
樹齢500年とも1000年とも言われるバオバブの樹。この樹に刻まれた痕跡はさまざまな生命の途方もない記憶の記(しるし)なのか。バオバブの記憶をひもとく旅に出た・・・。
<スタッフ>
監督 : 本橋成一

語り : 橋爪功

プロデューサー : 石紀美子
撮影 : 一之瀬正史
音楽 : トベタ・バジュン
整音 : 弦巻裕
編集 : 村本勝

エグゼクティブプロデューサー
 : 井上和子 美木陽子

配給・サスナフィルム/ポレポレタイムス社

トゥーバ・トゥール村はみんな大家族。
12才のモードゥ君は草むらでの相撲やサッカーが大好き。
学校には農作業や牛追いの手伝いの合間に通う。
おたまじゃくしの大群とともに雨季に入り、
バオバブに新緑が芽生えると同時に種まきが始まる。
収穫を祝うお祭りはひときわにぎやかだ。
きっとこれが大地の時間としてずっと続いてきたのだろう。
<ストーリー>
首都ダカールから車で2時間のトゥーバ・トゥール村に住む人々は、大家族。そこには未だ多くのバオバブが、そして昔ながらの素朴な日常があった。
村に住む12歳の少年、モードゥは20人を超える大家族の次男。農作業や牛追いの手伝いをしながらコーラン学校に通っているが、本当はフランス語学校に行きたいし、将来は外国に行って商売をしたいと思っている。弟や妹たちの面倒を見たり、草むらで相撲やサッカーをしたり、時にはバオバブの樹も遊び場となる。バオバブには精霊が宿ると信じている村人たちは、決して切ることなく、ご神木には祈りをささげる。
しかし、急速な近代化の波はこの村にも迫ってきていた。100年、500年、1000年と、この大地でたくさんの生きものたちと生きてきたバオバブが消えていく。
 この映画は、一人の少年に焦点をあて、その少年と家族の日々の営みを一年を通して撮影し、バオバブとともに生きる人々の暮らしを丁寧に描いたものである。
<解説>
監督は「ナージャの村」「アレクセイと泉」で国際的にも評価の高い、本橋成一。
彼の20数年来の念願が叶った作品。
撮影は一之瀬正史、整音は弦巻裕といった本橋組が再集結。
ナレーションはベテラン演技派俳優、橋爪功。
音楽はCM音楽のSONY「ブラビア」、映画「西の魔女が死んだ」などで話題を呼んだトベタ・バジュン(Bajune Tobeta)。
<映画製作へのきっかけ>
 本橋成一が初めてバオバブを見たのは、今から35年前の1973年。動物のテレビ番組の撮影で訪れた東アフリカのツァボ国立公園だった。象がバオバブを倒していたのだ。
その年は十数年ぶりの干ばつだったという。バオバブの幹は大量の水を含んでいるので、そこから水分を得ようとしていたのだ。その時、ガイド役のマサイの長老がつぶやいた。「今までこんな光景はみたことがない」。本橋は、何千年、何万年と続いて来たバオバブと象の共生が崩れてきているのだと気づかされた。
1989、90年にサハラ砂漠を訪れた本橋は、そこでバオバブに再会する。砂漠から人里に来るといつもバオバブがあり、共に暮らす人たちがいた。
バオバブには100近くもの用途があると言われている。樹皮は屋根材やロープとして、果実の殻は食器や楽器に利用され、種子は食用油になる。葉は乾燥させ粉にしてクスクスなどに入れる。全てが薬や染料になる。また、聖なる樹として崇められるバオバブもある。
本橋はバオバブと共生する人々の姿に、本来の人間の暮らしの在り方を見出し、初めてバオバブに出会って以来、「いつか映画に撮りたい」と温めてきた構想を実現させていく。
2007年、ロケハンで再度訪れたアフリカ・セネガルで本橋は、かつての暮らしを見る一方、開発のため切り倒されたバオバブを目にした。              

バオバブおじさん
百年前、ぼくたちはどんな暮らしをしていたの?
五百年前、ぼくたちはどんな暮らしをしていたの?
千年前、ぼくたちはどんな暮らしをしていたの?
<監督プロフィール>
本橋成一(監督)
68年「炭鉱〈ヤマ〉」で第5回太陽賞受賞。以後、上野駅、サーカス、築地魚河岸など市井の人々を撮り続ける。91年からチェルノブイリ原発事故被災地ベラルーシに通い、その地に暮らす人々を写真と映像に写す。95年「無限抱擁」(日本写真協会年度賞他)、98年「ナージャの村」(第17回土門拳賞受賞)。映画「ナージャの村」「アレクセイと泉」は国内外で高い評価を得る。
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