ビタースイートBitter Sweet
(初公開時タイトル「濃厚不倫 とられた女」)

“もう戻れない・・・、離れられない”

 2004/カラー/58分 

出演
 向夏
 林由美香

石川KIN
佐野和宏

福島拓哉
藍山みなみ
監督 女池充 

企画 朝倉大介

脚本 西田直子

撮影 伊藤寛
録音 小南鈴之介
美術 朝生賀子
編集 金子尚樹
助監督 菅沼隆

製作 KOKUEI Vシアター135 新東宝映画梶@
配給:国映/新東宝
<あらすじ>
それは、運命的な一夜の過ちから始まった。
結婚を間近に控えた女は、狂おしくも恋の虜になり、妻子もちのレストランのオーナーは、女の盲目的な愛に戸惑いながらも人生の岐路に立つ。そして、その妻の人生を変える出来事に発展する。
妻もかつて、夫に言えない過ちを犯していたのだった・・・。

本作は<セックスから始まる恋愛>を愛しくも切なく、そして官能的に描いた、大人の恋愛ドラマの傑作である。ビターとスイート、人生の苦味と甘さ。若い女のスイートな可憐さと、妻の今までの人生を感じさせるビターな気高さに、激しく揺れ動くもう若くない男のセンチメンタルな憧憬を、丁寧に切りとってみせる。
<概要>
監督は女池充(36)。主にサトウトシキ監督作品の助監督を経て、28歳でピンク映画デビュー。8作目の本作を撮り終え、文化庁の留学制度でニューヨークへ映画修行に出た。本年10月帰国予定。
脚本は西田直子。田尻裕司、女池充ら若手のピンク監督らと多く組み作品を発表。本作は彼女の初期作品で以前より映画化を切望されていた、珠玉の名作と言われている。
主演は本作が本格的な映画初主演となる向夏(こなつ)。おさえる事もできない恋愛感情に、正直に生きようとする女性の心理を初々しく表現。また、相手役の石川KIN(均)は、本業は監督(『JAM FILMS S/ブラウス』他)であるが、望月六郎監督初の一般映画『スキンレスナイト』での好演は、映画ファンの間では伝説となっている。他に、惜しくも6月に急逝した林由美香が初の子持ちの主婦役を演じ新境地を見せたことも話題のひとつだ。

なお、本作は2004年9月にピンク映画館で一度公開されているが、その完成度の高さから一般劇場での公開が待ち望まれてのロードショーとなる。
<コメント>
 この話を書いたのは八年前。当時の自分が滲み出ているような、恥ずかしい拙いホンである。当然、直したい。しかし案を出す端から女池さんは否定する、私は譲れない…を繰り返し、直しは難航した。
 そうして出来た映画の中で、女池さんがあれだけ好きじゃないと言っていた登場人物たちは、魅力的な表情をしていた。私はいつのまにか八年前のあれこれを思い出し、あの少しほろ苦い気分が、スクリーンに映し出されていることに気がついたのだった。
――――――――――西田直子(脚本)

この作品には、“ふたつの耐えられない重さ”がある。物語の中の人間関係の重さと、それを表現しきった林さんがもうこの世にいないという現実の重さだ。でも、見てよかった。そう思う。
―――――――――香山リカ(精神科医)

女池充の『濃厚不倫 とられた女』に私は震える。この震えはたとえ脳が忘却の彼方に追いやったとしてもあるときふとよみがえり肌が途切れ途切れで愛撫されるような引き伸ばされた感触として無意識のまま反芻することになるだろう。
もう若くはない三人の男女に関する描写はまるで十年以上前のアジア映画のようだ。ウォン・カーウァイの『欲望の翼』が登場するまで香港において同時録音(同録)は一般的ではなかったがその時代にアフレコで声をあてていた同地の作品に接したときのような違和感がある。奇妙なのはこの違和感が「アフレコではない」ことに起因していることだ。
ピンク映画は通常アフレコによって制作される。声優がアニメーション映像を見ながらボイス・悪ティングするように演じた俳優が自身が映っている映像に合わせてもう一度声の演技を施す。アニメにみなぎる詩情はその距離感を自明のものとして迂回による世界観の構築を練り上げて到達した詩情だがピンク映画に漂う詩情はこの距離感を距離感のままある意味放置することによって自然発生する不確かな慈しみと不定形の一体感によってこぼれおちる詩情である。
『濃厚不倫 とられた女』、つまり『ビタースイート』が与える違和感はピンク映画であるにもかかわらずピンク映画特有の詩情がそこで奪われていることの痛みにその根拠がある。
中年男の妻に扮した林由美香が終盤で口にする「天涯孤独」という四文字熟語は私が聞いたこともないこの女優の発声だった。言葉が上ずっている林由美香を初めて見た。
女池監督はピンク映画の詩情と引き換えに決して「脱ぐ」ことのなかった映画界屈指の名女優・林由
美香の「真の裸」を露呈させたのだから。
―――――――――相田冬二(映画ライター)「Invitation 11月号より抜粋」

揺れる男女の心を見事に描き、成瀬己喜男の映画を見ているよう。女池充監督、あなどれないぞ。
―――――――――快楽亭ブラック(落語家)


2005年12月10日より当館にてレイトショー上映決定!

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★「花井さちこの華麗な生涯」「ビタースイート」公開記念特別オールナイト
  2005年11月26日・12月10日開催決定!
◆11月26日 《中野貴雄ナイト キング・オブ・トラッシュマンの世界》
◆12月10日 《西田直子ナイト 女性の為のピンク映画入門(仮題)》

 
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