普通に生きる
~自立をめざして~

もし、私に何かあったら
     この子はどうなるの?
(C)
長編ドキュメンタリー映画/SD/カラー/83分  

公式サイト

<スタッフ>
撮影・プロデューサー : 貞末麻哉子

構成・編集 : 洪 福貴
制作補 : 梨木かおり
製作・著作・配給 : マザーバード
制作協力 : mediaEDIX

音楽 : 木 霊
整音・MA : 中山隆匡・成ヶ澤 玲
カラリスト : 稲川実希・太田義則
ポストプロダクション : CSW(Cinema Sound Works)
ナレーター : 長谷川初範

【 撮影協力 】
社会福祉法人インクルふじ
生活介護事業所 でら~と 利用者と保護者の皆さん
生活介護事業所 らぽ~と 利用者と保護者の皆さん
NPO法人くじら 陽だまりの家
静岡県立富士特別支援学校
富士市
富士宮市

はじめはわが子の障がいを受け入れられず 苦しみや困難に打ちのめされ
死さえも考えた親たちは 長い苦闘を経て子どもの障がいを受け入れます。

やがて人とつながることで力を得て 親たちは自分たちのニーズにあった施設や制度をつくってゆきます。

地域社会とのかかわりの中で 居場所を得た子どもたちの満面の笑顔が 人を結ぶ原動力となります。
 
生きづらさを持っている人にやさしい社会は すべての人にやさしい社会です。


<ストーリー>
静岡県富士市にある生活介護事業所でら~とは、『どんなに重い障がいがあっても、本人もその家族も、地域の中で普通に生きていける社会をめざす』という理念のもとに親たちの努力で、ゼロから立ち上げた重症心身障害児者のための通所施設である。
 ここには医療的ケアを必要とする利用者も多く、生活支援員の他に看護師も常勤し、毎日、それぞれの障害や個性に合わせたプログラムで日中活動を支援している。利用者は多くの人や地域との関わりの中で、社会性を身につけ、誰からも介護を受けられるように成長してゆく。そして親たちも、法制度の改革の波に揉まれつつも行政に働きかけ、自分たちのニーズにあった制度や施設づくりを行い続けてきた。
 いずれは、親も子もそれぞれの人生を明るく送れる地域社会づくりを目指して『福祉の受け手から担い手となる』発想が、親たちの新しい未来を切り拓いてきた。
 映画は、二つ目の施設建設計画が持ち上がった頃からの五年間を追う。
<コメント>
慶応大学教授 浅野史郎
 障害者のこと、特に、重症心身障害者のことを知らない人たちに、この映画を見ていただきたい。「障害者はかわいそう」、「障害者は家族を不幸にする」、「障害者は何もできない」、「重度の障害者に自立なんてありえない」といった思い込みがいっぺんに変わってしまうだろう。また、地域の中で支援の施設が欲しいと思いながらも、実現の困難さから、あきらめていた障害者の家族にも観てもらいたい。「やればできる」、大きな勇気をもらうはずである。
 日常生活のあらゆる面で介助を必要とし、言葉もなく意思表示がむずかしい重症心身障害者が、毎日、「でら~と」に通ってきて、活動の花を咲かせている。仲間や施設職員との関わりの中で示す表情豊かな反応を、この映画は克明に映し出す。密着するカメラは、楽しいことをやっている彼らの表情を逃さない。これが普通の生活である。これが幸せの形である。
 見終わって、いろいろなことを感じる。こんな重い障害を持った人たちが、幸せになってよかったね、ということだけでは終わらない。この映画は、さらにその先の根源的問題、人間とは何か、人生とは、生きるとは、幸せとは何か、地域の力とは何か、家族とは何か、障害者問題を超えて、もっともっと大事なことを教えてくれる。教えてくれるのは、ものも言えない、自分では動けない身体の彼ら重症心身障害者が地域で生きる姿である。そこまで我々を導いてくれる、この映画に乾杯。

社会福祉法人 十愛療育会理事長 日浦美智江
 かって障害のある人たちは世間から隠され、座敷牢と呼ばれる部屋に閉じ込められているのが「普通」でした。一九八六年、日本で初めての重症心身障害児者の通所施設「朋」が生まれ、重い障害のある人たちの自己実現の舞台ができた当時は、親はわが子の自己実現に自分の自己実現を重ね、親と子は一心同体というのが一般的には「普通」だったと思います。当時の母親たちは七十代になりました。
 でら~との母親たちは四十代、五十代です。子どもの自己実現と自分自身の自己実現に胸を張って取り組んでいます。親と子は一心同体ではなく二人の別々の人間であることが「普通」なのです。例え我が子に重い障害があっても、親自身の自己実現があるのが「普通」なのです。親と子、それぞれの自立です。子どもの幸せは親の幸せであり、親の幸せは子どもの幸せです。そこにどんな条件が加わろうとそれが「普通に生きる」ことなのだと、それを、見事に見せてくれ
たでら~とのみなさんに、心からの敬意と拍手を送ります。

日本社会福祉大学准教授 原田正樹
 「自立」とは本人の内発的な生きたいという叫びであって、国家が「自立支援」を促すものではないと思う。制度は「生存を保障する」ものであって、「生き方を管理する」ものではない。こう書くと難しい理屈のように受け止められるかも知れないが、映画に登場するこどもたちの「笑顔」、親たちの「涙」、そして普通に生きようとするそれぞれの「希望」は、そのことを物語ってくれている。そして、この映画が本当にすごいことは、こうしたメッセージを自然に優しく描いていることだ。
「普通に生きる~自立をめざして~」に描かれた力
   生活介護事業所 でら~と・らぽ~と 所長  小林不二也

 足掛け5年にわたって当法人の取り組みを取材していただき、利用者とその家族の生の姿を丁寧に撮っていただきました。
 人は弱い存在です。しかし、最も弱いはずの重症心身障害児(者)の彼らの笑顔から、実に多くの人々が力をもらっています。
 映画は、障害・家族・運動・仲間・人生・夫婦・自立等々、さまざまなことを考えさせてくれる素晴らしい作品に仕上がりました。 不況や災害など生き難い世の中であればこそ、彼らから多くのことを学び、歩んでいくことで社会が成熟していけると確信しています。
 ぜひとも、お一人でも多くの人にこの映画を観ていただきたいと思います。明日に向かって力強く生きていく勇気を、彼らからもらってください。そしてその力をあなたの周囲で悩んでいる友人に向けてあげてください。
 この映画と、利用者の笑顔にはそんな力があると確信しています。
<プロフィール>
生活介護事業所でら~と・らぽ~と 社会福祉法人インクルふじ とは?
 富士市のでら~と(2004年開所)と、富士宮市のらぽ~と(2009年開所)は富士市・富士宮市で暮らす重症心身障害児(者)の親たちで組織した「はなみずき」が、様々な活動の末、地道な活動を続けながら設立した社会福祉法人インクルふじが立ち上げた在宅サービスの拠点である。

 ★インクルふじ のホームページ  
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