ハダカの城 〜西宮冷蔵・水谷洋一〜

 偽装告発 − これは始まりの終わりであって、終わりの始まりではない
2007年/日本/カラー・モノクロ/DVCAM(4:3)/ステレオ/108分

 公式ブログ

〈スタッフ〉
出演 : 水谷洋一
      水谷甲太郎 他

監督・撮影・編集  : 柴田 誠
製作:『鳥類』/ Sei SHIBATA 
配給・宣伝:Nui企画 / 楠瀬かおり
録音・整音:岸本祐典 / 浅井佑介
音楽:米田みちのぶ
題字:ジュンコ
協力:ビジュアルアーツ専門学校・大阪
後援:山ドキュin大阪

2003年、冬。
大阪、梅田・曾根崎陸橋。
ひとりの男が佇んでいた。
男の名は、水谷洋一。
2002年1月23日。
国の、BSE(狂牛病)対策による、
"国産牛肉買い取り制度"を悪用した、
『雪印食品・牛肉偽装詐欺事件』の
内部告発を行った倉庫会社、
【西宮冷蔵】社長である。
<解説>
2002年1月23日。
朝日、毎日の両新聞が第1面トップで、ある記事を掲載した。
「雪印食品・詰め替え」「輸入牛肉、国産と偽装」
「狂牛病の制度使い 買い取り申請」
 
あの『雪印食品・牛肉偽装詐欺事件』である。
 
その事件で、雪印の詐欺行為を告発したのが、西宮市にある倉庫会社、「西宮冷蔵」社長・水谷洋一氏だった。

告発から3ヶ月後、「雪印食品」は解体。
しかしその後、西宮冷蔵も偽装詰め替え作業時に「在庫証明書が改ざんされていた」と、国土交通省より営業停止処分をうける。
続けて、相次ぐ取引先の撤退。
2003年5月25日には、電気代滞納により倉庫送電が停止される。
 
2003年10月。
大阪、梅田 曾根崎陸橋。
寒風に揺れる『まけへんで!! 西宮冷蔵』の幟(のぼり)。
水谷社長は、「西宮冷蔵」再建を目指し、告発の経緯を記した書籍販売の露店を開いていた。
わずかな生活費を稼ぐのと、再建支援のカンパを募ってだが、自らの信念の火が消えていないことを証明するためだった。

この作品は、その陸橋での活動から再建、営業再開から1年目までの記録である。
こんな俺が、
いつまでも注目されとるという事は、
今の日本が狂とるからやろな。
情けない話や。
何事もなかったかの様に、
やがて何年か、何十年か経って、
"そんな事もありましたっけねぇ"って
早く言ってもらえる様に、
言える様に持ってイカンとな…。
水谷洋一(西宮冷蔵 社長)
<映画に寄せられた言葉>
忘れてよいことはある。でも刻むべきこともある。
多くのものを失いながら水谷洋一が闘ったものは何か。
この作品がメタフォライズする今の日本の矛盾や機能停止に対して、僕らも目を背けてはならない。
手を挙げよ、声を上げよ、とは言わない。
まずは、この作品を凝視しよう。そこから始まる。
森達也(ドキュメンタリー作家:『A』『A2』『ドキュメンタリーは嘘をつく』)
 
平穏な毎日を失う危険をおかしてまで、なぜ告発に踏み切ったのか。
「正義」のため、と図式化してしまうのは簡単だけれど、「事件」の当事者には一言で片づけられない思いがある。
寒風吹きすさぶ大阪梅田の陸橋の風景から、水谷洋一の生きざまが見えてくる。
「告発の朝」に立ち会ってから5年あまり、長いものに巻かれるように暮らしがちな私を、叱咤激励してくれた作品です。
中山彰仁(朝日新聞大阪本社・記者)
 
考え方を押し付ける映画は嫌いだ。
ドキュメンタリーでもドラマでも、人間の体温を感じる映画が好きだ。
柴田誠監督の映画にはいつも、人間の体温を感じる。
そして柴田さんが映し撮った人を、
彼の息づかいと一緒に観る暗闇は、あたたかい。
矢崎仁司(映画監督:『三月のライオン』『ストロベリーショートケイクス』)
 
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