母のいる場所


それぞれの家族に合わせて、
介護のためにどのような選択があるか。
介護をするとはどういうことなのか―。

2003年/ 116分/35・16mm/ ヨーロピアン・ビスタサイズ


監督 槙坪夛鶴子 
    (代表監督作品:「子どもたちへ」「若人よ」「地球っ子」「わたしがSuKi」「老親ろうしん」

原作 久田恵
    母のいる場所〜シルバーヴィラ向山物語〜 (文藝春秋刊)
<キャスト>
紺野美沙子 馬渕晴子 小林桂樹
<ストーリー>
フリーライターでシングルマザーの主人公・久野泉(45歳 紺野美沙子)は7年間、脳血栓で右半身不随になった母・道子(馬渕晴子)の在宅介護と子育て、そして仕事に追われる。70歳まで仕事人間だった独断的で頑固な父・賢一郎(小林桂樹)とは、介護をめぐって終始喧嘩が絶えない。
 小学生の息子・遼は、チック症になり、「僕にはお母さんがいない」と作文に書く……。高校に入ると、すぐ不登校になった。
 泉はユニークな有料老人ホームの施設長・悠子(野川由美子)に出会い、入所を選択する。「Noを言わない」のがホームの方針で、痴呆の人を、「お分かりにならない方」と呼び、酒もタバコも恋愛も自由、入居者もスタッフも“ともにいきいき輝いて”暮らしている。やがて、母は笑顔を取り戻し、そこが「母の居場所」となる。
 父の鼓に合わせて舞う母……イメージの舞台に、八重桜が舞い散る。
推薦 黒柳徹子(女優 ユニセフ親善大使)

槙坪さんは『不屈の人』です。笑顔でお話なさる彼女を見ていると、長年の慢性関節リウマチに苦しみ、車椅子に乗りながらメガホンをとってる映画監督とは、全く想像できません。そしてさらに驚くべきことは、彼女はいまご自身も不自由な上に、痴呆の始まってしまったお母様の介護もしていらっしゃること! そしてさらに更に驚くのは、そのお母様が彼女の車椅子をどこに行くときも見事に押していらっしゃること! 「徹子の部屋」の収録で、実際にお目にかかったお母様はとてもお元気で人懐っこい笑顔を私に返して下さいました。必要とされていることの、よろこびだと思いました。「二人で介護しあい、お互いの存在を『必要よ…』と確認しながら生活しているのよ」槙坪さんの強さが感じられる言葉です。
 今回の映画「母のいる場所」は老人ホームのお話です。今の日本には残念ですが、まだまだこのような施設が足りません。頑張ってきたお年よりの方々が楽しく暮らせて、支える家族の負担がもっと減らせる環境が絶対に必要です。この映画には老親問題・介護問題の『喜怒哀楽』が入っています。
 深刻に考えるだけでなく、笑いながら温かい気持ちで問題の解決方法を見つけていく……とても勇気付けられる映画です。
 多くの方々に……特に若い方達! 豊かな大人になれるでしょう。また現在、こういう生活にあるかた! 心強くなれるでしょう。心細く生きているかた! 大丈夫、みんな頑張っているのですから。様々な世代の方にお勧めします。
<監督コメント>
人は誰でも老いを迎え、病気や障害を抱えたり、不安と孤独から痴呆になったりする可能性があります。
“男女共同参画”が叫ばれる時代ですが、老親介護、子育てを依然として女性たち(妻、嫁、娘)が担い、「子育てにお金のかかる四十代、五十代の世代が老親介護で家族崩壊の岐路に立って」います。
 この作品は、原作者・久田恵さんの実体験によるものです。介護する者される者、それぞれの自立とは何か、介護とはどういう事か、ふさわしい最後の居場所はどこなのか……。
この映画が、夫婦のあり方や親子関係を見つめ直すきっかけになりますように。
<原作 久田恵コメント>

日本中で、今、介護を巡ってさまざまな物語が生まれています。百の家族に百の介護物語あり、です。
 この映画もそんなあまたの物語の中のひとつ、十年の在宅介護の果てにユニークな老人ホームにたどりついた我が家の奮戦模様が描かれています。でも、そこには多くの人が体験するであろう親子の葛藤、老いの哀しみ、おかしみ、家族って、人生って、老いるって、どういうことなの? という切実な問いやら発見やらが詰まっています。
 車椅子の槙坪監督が、老いた母同伴で撮影に通い、介護世代の女たちへの深い共感を元に完成させた真情溢れる作品です。撮影現場は実際の我が家や母のいたホームが使われ、作品を一層ビビッドにする効果を果たしました。ご自身の家族の物語に重ねて観ていただきたく思います。
<寄せられた声 アンケートより>

病院に勤めて6年になりますが、普段の仕事の中で、いかに客観的な情報のみで患者さんをとらえていることにハッとさせられました。自分がどうされたいのか、家族だったらどうしてもらいたいのかを考える重要性を感じました。
病院職員 女 29歳

桜で始まる冒頭から引き込まれる映像。エンディングに流れる優しい音楽。感動しました。日常の忙しさの中で、いたわりを持つ心が描かれていて、自分の育った家庭に思いを馳せながら見ていました。
会社員 男 31歳

いつの日か直面するであろう親の介護。でも、決して悲観的にならないで取り組んでいこうと思わされた。今、高齢者福祉の仕事にたずさわっていますが、いろんな家族、いろんな介護を見るにつけ考えさせられます。今日の映画は良いヒントだした。
在宅介護支援センター相談員 女 39歳

私は、高齢者の自立施設に勤めていますが、だんだん機能が衰えていく高齢者にいかに接していったら良いか、また、認知症の人への対応の仕方について、大変参考になりました。しっとりと、そして、さわやかな映画でした。
看護士 女 63歳

老いと介護という暗くなりがちな内容を、実に明るい映画に仕上げている所に感動しました。私自身も老親介護の経験者です。前向きに自分の人生を生きることをモットーにして毎日生きる中で「映画」を見ることで勇気を与えられることがしばしばです。今日もそうでした。
男 79歳

2005年 7月16日〜22日公開!
10:30(16、17、18日は『老親』) / 12:45(連日)

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