この2作品に登場する子供たちは、働いて得たお金の向こうに夢を描いています。
子供に対する金融教育がはやる中で、当作品の公開当時に聞いた「小さいうちからお金の事ばかり気にしていたら器の小さな人間になる」というおばあちゃんの意見がずっと心に残っています。
今一度、「仕事」と「お金」について考えてみませんか。 |
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「まかせてイルか!」
2004/24分/DVCAM上映
小学6年生の海(うみ)、空(そら)、碧(あお)の3姉妹は湘南で便利屋“イルか屋!”をしている。どんな仕事も断らない!をモットーに、毎日仕事は大盛況!小さな体にも負けず働く彼女たちの目的は、お金を稼ぐ事?!
企画・原作・監督・絵コンテ・プロデューサー 大地丙太郎
<声> 【海】齋藤彩夏 【空】東野佑美 【碧】名塚佳織
C)大地丙太郎・☆画プロ/CWF
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「プライスタグ」
2007/67分/DVCAM上映 2008ハンブルグ日本映画祭招待作品
中学生の正太郎は、違法にお金を儲けている元同級生の篠原を羨ましく思い、生まれてくる子供の為に、キャリアを捨てた姉、朝昼仕事を掛け持ちで働くその夫をカッコ悪いと思う。そんな正太郎の彼女・聡子が転校する事になった。そこで初めて、お金を稼ぐ事の大変さに気付く。
出演 : 荻田修司 今西彩 矢橋秀浩 小嶺麗奈 笠原紳司
監督・脚本 : 友野祐介
プロデューサー : 坂田史志
撮影 : 近藤龍人
製作・配給 潟uルズ・アイ 潟Rミックス・ウェーブ・フィルム トリウッド
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<コメント>
−「プライスタグ」に寄せて−
内田樹(神戸女学院大学文学部教授)
「子どもとお金」という主題は考えてみたら触れられることの少ない(というより無意識的には避けられてきた)ものだということを映画を見て思い出しました。
おそらく「子どもはできるだけお金に触れない方がいい」という人類学的な知恵がまだ残存しているためでしょう。
それも当然で、子どもというのは定義状「労働しないもの」だからです。労働しないものにとって、貨幣はただの「記号」あるいはただの「数字」です。でも、労働しようがしまいが、貨幣を持つものはそれを使用するときに、貨幣がある種の全能性をもつことを知ります。
子どもがお金をもち、それを使うというのは、言い換えると「記号は全能である」という倒錯のうちに投じられることです。
その倒錯に迷い込まないために、子どもに対しても、貨幣は「労働の対価」としてしか与えられないといううるさい条件が課された。そうすれば、貨幣を媒介にして、「労働は全能である」という(健全な)幻想を子どもに刷り込むことができるからです。
映画の主人公の「正ちゃん」は「お金を持たない存在」(赤ちゃん)から、 「記号としてのお金を持つ存在」(子ども)、
「労働の対価としてお金を得る存在」(大人)へと急ぎ足で階梯をのぼり、 最後はなんと「担保を差し出し、有利子のお金を借りる存在」(投資家)へと成長してゆきます「投資家」段階まで子どもが行き着く必要があるかどうかについては(人類学的見地からは)疑問があるのですが、そこらへんがあるいは「現代的」な切なさなのかも知れません。
内田樹の研究室
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