「タイトル」

「10年間、記録を続けてみよう。
 劇的に変化し続ける小児がん治療の只中で、
 子ども達の心の側に立って映像を記録することは、大きな意味があると思う」

2009年/日本映画/カラー/DV-CAM(4:3) /105分

<スタッフ>
演出 伊勢真一

監修 細谷亮太 月本一郎 石本浩市

協力 聖路加国際病院
    東邦大学医学部付属大森病院
     あけぼの小児クリニック 
     毎日新聞社 財団法人がんの子どもを守る会

制作協力  本橋由紀 渡辺輝子 中島晶子
        近藤博子 樋口明子 稲塚彩子
        キャンプに参加した子どもたち・ボランティア
撮影 石倉隆二 内藤雅行 田辺司
    世良隆浩 東志津

照明 箕輪栄一
音楽 横内丙午
歌   苫米地サトロ
録音 米山靖 渡辺丈彦 井上久美子 
助監督  助川満
絵    伊勢英子
題字  細谷亮太

製作  いせFILM




<解説>
 2008年夏、聖路加国際病院副院長の細谷亮太医師、済生会横浜市東部病院小児医療センター長の月本一郎医師、あけぼの小児クリニック院長の石本浩市医師、三人によって企画された“SMSサマーキャンプ”は10年目を迎えました。
 元気一杯な年頃なのに、毎日病室で治療の日々をおくる小児がん患者の子どもたちに、自然との触れ合いや元患者のボランティアとの交流の機会を与えようというサマーキャンプを、カメラは10年間追い続けました。
 かつては“不治の病”と云われた小児がんですが、今日では10人に8人が完治するようになりました。しかし、ドラマや映画の影響で、いまだ患者には偏見や差別が付きまといます。また、実際にも、眼に発症したがんによる失明、白血病による出産への影響など、完治しても後遺症が残る可能性があります。
 それでも、病気を克服し、社会の小児がんに対する偏見や差別を跳ね返そうと、子どもたちはもがいているのです。
 細谷亮太医師のもとには、完治した後も検診に訪れる元患者がたくさんいます。1年目のキャンプで患者であった少女は、10年目のキャンプでは一児の母となってボランティアとして参加します。小児がん経験を活かし看護師になりたいと夢みた少女は、聖路加病院で細谷医師の下で働くことになります。しかし、そのような中でも、完治できずに逝去してしまう子どももいます…。
 小児がん患者や体験者を、悲劇の主人公ではなく、「再生」のシンボルとして描いたこの作品は、単なる難病を扱ったドキュメンタリーという枠にとどまらず、命の尊さ、生きる意味、未来への眺望、の映像化として、閉塞的な現代の社会全体に大きなメッセージを送ります。

 ※「SMS」とは「スマート・ムン・ストン」と読み、三人の医師の名前の頭文字「スマート(細)」「ムン(月)」「ストン(石)」から取られています。

「子どもには、おとなにみられるような肺がんや胃がんはほとんどありません。
おとなのがんは、80%以上がからだや臓器の表面にできますが、子どものがんは、ほとんどがからだの深いところ(骨、神経、筋肉、血液など)に起きています。これは、赤ちゃんの 責任ではなく、お母さんの不注意によるものでもなく、どうしようもないことなのです。
 1年間に何万人かの赤ちゃんが生まれれば、必ず一定の割合で起きるものなのです。」  
(『白血病の子どもたち』大月書店 より)
細谷亮太(ほそや・りょうた) 医師
 1948年山形県生まれ。東北大学医学部卒。
 小児がんの先端的治療技術研修のため、米国テキサス大学総合がん研究所M・Dアンダーソン病院に三年間赴任。現在、聖路加国際病院副院長・小児総合医療センター長。
 小児がん医療の最前線に関わりながら、キャンプをはじめ積極的に啓蒙活動に取り組んでいる。この映画の企画者でもある。俳人としても知られ、本作でも細谷医師の言葉や俳句は映画の骨格となっている。
 おもな著書に、『小児病棟の四季』、『医師としてできることできなかったこと―川の見える病院から』などのほか、句集『日本の四季 句の一句』がある。

伊勢真一(いせ・しんいち) 演出
 1949年東京生まれ。
 重度のてんかんをもつ自身の姪を追ったデビュー作『奈緒ちゃん』(1995年)で知られ、その他にも、ドキュメンタリー映画の名カメラマン・瀬川順一を追った『ルーペ』(1996年)、世界的な太鼓奏者・林英哲を追った『朋あり。』(2004年)など、数多くのドキュメンタリー作品を撮り続けている。
 また、プロデューサーとしても『タイマグラばあちゃん』(2004年・澄川嘉彦監督)でイタリア・サルディニア国際民俗学映画祭大賞、『ツヒノスミカ』(2006年・山本起也監督)でスペイン・PUNTO DE VISTA映画祭ジャン・ヴィゴ賞受賞など、多くの受賞歴を誇る。
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