<作品解説>
『こどもの時間』に登場するこどもたちは、埼玉県桶川市にある、いなほ保育園に通っています。
こどもは、0歳から6歳の友だちおよそ100人とおとなと、山羊と馬とロバとガチョウとニワトリと犬とクジャクと、火と水と風と土とともに生きています。
その姿を1995年から5年間記録しました。
いなほ保育園が誕生したのは1981年。最初は小さな園庭からの出発でした。
その後、こどもが心ゆくまで駈けまわることのできる約4000坪の土地を借り、園舎を築き、今日にいたります。
冬のこどもは、大きな焚き火で体をあたため、炎から、食べ物と多くのものを得ます。
おとなが昼ごはんの魚を焼いたあと、何か熱心に焼きはじめるこどもが一人また一人。
焼く物は、畑の芋や魚の骨、あるいは手でこねた土団子。
誰に教わるでもなく、思い通りの火加減にしようと、薪を足したり、灰を枝でかきわけたり。
毎日やっても飽きません。
夏のこどもの心は、水と遊ぶ喜びで満たされます。
木を組んだ手作りのプールができあがると、こどもたちは、ひがな一日プールの中。
飛んだり弾んだり、変幻自在に動くことができる水の世界に夢中になります。
年下のこどもは、年上のこどものやることに憧れ、見よう見まねで泳ぎを覚え、
もぐり、飛びこみ、冒険にでるのです。
食べることは、こどもにとって大きな喜びです。
0歳の赤ちゃんも、よちよち歩きの子もみんな、自分の手と頭を懸命に使って〈今日の美味いもの〉を、おなかと心におさめます。
『こどもの時間』には、食べる場面がいくつも出てきます。見てくださるとき、少々空腹でおいでください。
ひたむきに食べるこどもたちの思いと、素朴な食べ物の味わいを、より感じていただけると思うのです。
〈美味いもの〉を食べて、満足したこどもが、また走りだします。 |