心の杖として鏡として

「病む」とは何か、「表現」とは何か、「生きる」とは何か・・・


平成17年度文化庁映画賞優秀映画賞受賞作品
2005年度東京国際映画祭正式招待作品


 公式HP

プロデューサー : 中村 等   
監督 : 萩原 磨  
共同監督・撮影 : 高橋愼二   
ナレーション : 吉行和子
企画 : 心の杖として鏡として製作委員会
     財団法人たんぽぽの家
製作 : 心の杖として鏡として製作委員会
     株式会社プロダクション135
     株式会社ワールド映画
音声 : 田高伸悟
照明 : 城所美和
音楽・効果 : 田辺信道
撮影協力 : 中井正義 / 山口敬志 / 戸田裕士
編集協力 : 小野かをり
技術協力 : ツウカイロケーションシステムズ / 笠原
編集 : 日本VTRスタジオ
録音 : 協映スタジオ
キネコ : ヨコシネ ディーアイエー

挿入曲「ひまわり」 
作曲 : 長谷川亮介(造形教室メンバー)
編曲 : 石原眞司
題字 : 名倉要造(造形教室メンバー)
宣伝美術 : 石河 映
製作協力 : エイブル・アート・ジャパン
        芸術とヘルスケア協会
協力 : 平川病院 / 東京学芸大学
     exhibit LIVE〔laiv〕
協賛 : 社団法人全国服飾教育者連合会
     日本イーライリリー株式会社
     吉富薬品株式会社
     ファイザー株式会社
     グラクソ・スミスクライン株式会社
助成 : 芸術文化振興基金、  
支援 : 多くの皆さんの個人寄附
配給 : 心の杖として鏡として上映委員会
   
<概要>
東京八王子市、高尾山の山懐にある精神科病院の一室に、毎週2回、木曜日と金曜日に集まってくる人たちがいます。
 自由に開放されたこの教室は心の病をもった人たちの「造形教室」です。ほとんどは、かつて絵などまったく描いたことのなかった人たちですが、今ではこの「造形教室」に来る日を楽しみにしています。
 「絵を描くことは自分にとってかけがえのないものになってしまった」という「造形教室」に集まる人たちの、魂の営みの場に流れる時間や空気を見つめることによって、病とは何か、表現とは何か、そして生きるとは何かを考えます。
<ストーリー> 
絵を描くためだけにわざわざ二時間以上もかけてアトリエに通って来る名倉さん。閉鎖病棟に入院中、アトリエの主宰者の安彦さんに出会ってから名倉さんの人生は変わりました。一枚の絵の前で34年前のその時の記憶を語ります。
子供の頃からの強迫性障害を抱えている本木さんは、アトリエに来て初めて絵を描き始めました。ある時、好んで描いていた明るい彩りの絵に斜めに傷を入れてみました。何故かほっとしました。それからは自身の症状をテーマにした「宿痾シリーズ」を描き続けています。
毎週行われる合評会で詩の朗読とギター演奏を行うのは江中さんと長谷川さん。ギターは得意な長谷川さんですが絵にはなかなか自信が持てません。先輩たちにいろいろアドバイスを受けますが創作の悩みは膨らむばかりです。試行錯誤の中で絵が描けない日々が続きます。江中さんたちも心配しています。とうとう長谷川さんは鬱症状が深まって入院することになりました。
長谷川さんの親友の谷本さんはプロの画家を目指しています。今、銀座の画廊から個展の話が持ち上がりそのための新作に取り組んでいます。
そんな若者たちにうんちくを語る70歳になる石原さん。石原さんは長い入院生活の中で一度は捨てようと思った絵を描く事への情熱を、安彦さんに出会って再び取り戻します。今では絵を描く事は「認められようが認められまいが、これが俺の仕事だ」と言いきります。
退院した長谷川さんが自宅で描いてきた作品を持って来ました。江中さん、谷本さんがその絵を見て感嘆の声を上げます。「よくやったね!」 谷本さんの励ましに、それまで笑顔のなかった長谷川さんに笑みがあふれます。
ある日、突然江中さんが入院したという知らせがありました。薬を多量に服用してしまったための緊急入院でした。メンバー達が心配する中で長谷川さんは江中さんのために絵本を作り始めました。
完成した絵本を持って長谷川さんは江中さんの入院している病院を訪ねます。絵本には江中さんを主人公にした御伽噺(おとぎばなし)が書かれていました。絵本を読む江中さんの目からはおもわず涙がこぼれ落ちます。
展覧会で、入院中の江中さんに代わって本木さんがメンバーたちの心の叫びを綴った詩「ある決意」を朗読します。
<安彦講平さんの言葉>
<造形教室>にドキュメンタリーカメラマンが足かけ11年通い、日々の制作活動、作品群、一人一人の生活と意見を撮り続けた。その記録映像が映画として完成した。以来、東京、京都、和歌山など全国各地で上映会が開かれ、映画に登場しているアトリエの有志、安彦と共に出席、「病との出会い、絵との出会い」を語り、フロアからは映画から受けた感動が語られ、双方からの切実な生の声が語られ、熱い対話を通して、困難な現代を生きる人間のもう一つの生命活動について、私たちは語り合い、考え合ってきた。多くの方々に見ていただきたいと思います。
<寄せられた言葉>
映画の中で心とアートと人生が深く混ざり合って感動しました。
女性・45才

それぞれの人が描くというプロセスを通して、お互いにつながり対話してゆく姿をみて、「魂の営み」という言葉がすんなりと自分の中で消化できました。
男性・年齢不明

ものすごくカッコ良かったです。作品も、作家さんも。
美大生・19才

患者さんの魂にしっかりと寄り添う人の存在が欠かせない。造形教室には、我々精神科医が失っている医療の原点を観るのです。
的場政樹(袋田病院院長)
監督  萩原 磨
テレビディレクター。報道、ドキュメント系の番組(「ザ・スクープ」、「ドキュメンタリー人間劇場」など)に携わる。ドキュメンタリー人間劇場「父さんボクの寿司を食べて!」でギャラクシー奨励賞を受賞

共同監督・撮影  高橋愼二
テレビドキュメンタリー、ドキュメンタリー映画、記録映画、劇映画などの撮影を手がける。高畑勲監督、宮崎駿製作による唯一の実写映画「柳川堀割物語」で撮影技術特別賞を受賞。また自ら企画した江戸時代の石工集団の物語をドラマティックに描いた映画「石を架ける」は、後に田部純正監督と共に「石」シリーズ、「土木」シリーズとして連作され数々の賞を受賞。