4回目となる今回は、好評を博した前回の竹洞哲也特集から引き続き、2006-2007にかけて製作されたピンク映画から、現在進行形=ニュー・スタンダードと言える傑作を選出。
さまざまな境遇と運命に翻弄されながらも強く生きる女性たちを描いた一般映画顔負けの(またはピンクでしか成し得ない)屈指のラブストーリーにして、ヴァラエティに富んだ5本をお届けします!
(直井卓俊/SPOTTED PRODUCTIONS)
|
予告編@youtube
公式サイト
|
<<上映作品>> |
|
つまらないあたしのどうでもいい物語
(奴 隷)
2007|監督:佐藤吏|脚本:福原彰
出演:平沢里菜子、本多菊次郎、千葉尚之
SMという欲望に取り憑かれた女・若竹梨奈(平沢里菜子)のSM漬けの半生の物語。ピンク映画と寝た女・平沢里菜子の半自伝的な物語でもあるこの作品は、SM行為の幸せなゴールとは何なのか、どこまでいけばいいのかというM女なら誰しもがぶつかる壁にぶつかりながらも壊れない、したたかでしなやかな女の姿を描き出すことに成功している。M女のありふれた平凡な、普遍的な物語。
(文・雨宮まみ) |
|
笑い虫
(色情団地妻 ダブル失神)
2006|監督:堀禎一|脚本:尾上史高
出演:葉月螢、牛嶋みさを、冴島奈緒
幼稚園児の息子をかかえる弓子は、現役プロレスラーの妻である涼子の不倫相手と関係を持つ。一方、ボクサーくずれの夫は町で出会ったAV女優につかの間の安らぎを見出すが……。夢ばかりみてはいられない大人の人生の機微がヨーロッパ映画のごとき重厚な画面に滲み出す。日常の倦怠を破るようなプロレスやダンスのアクシデントが、葉月螢の凛とした存在感に集約されている。
(文・那須千里) |
|
微風(かすかぜ)
(誘惑 あたしを食べて)
2007|監督・脚本:佐藤吏
出演:吉沢明歩、大沢佑香、千葉尚之、日高ゆりあ
フリーターのアキがバイトをしているレストランにはデザートが無い。コック兼オーナーである川野の妻・恭子が事故死して以来、恭子の作るデザートはもう出せなくなったのだ。「自分が好きじゃなくても自分を好きでいてくれると嬉しい」ーーそんな感情で男と付き合うアキを吉沢明歩が物憂げに好演。愛する意味が曖昧な年頃に抱く、ほのかだけど素直な憧れを丁寧に描いている。
(文・後藤マリコ) |
|
ヒロ子とヒロシ
(痴漢電車 びんかん指先案内人)
2007|監督:加藤義一|脚本:城定秀夫
出演:荒川美姫、なかみつせいじ、佐々木基子
気が弱くてダメに生きていた女と、傲慢さから失墜した男。それぞれのモノローグで綴られる人生は二人が底辺に堕ちた瞬間、痴漢という偶然の行為で交錯する。指先から溢れるのは、他人が自分を必要としてくれる心のぬくもり。不意に出会う男女が肉体以上に心情を交える、ピンク映画の神秘的な機微の真髄を、「すれ違うゆえの幸福」という不思議な切なさで象徴的なまでに描き出す傑作。
(文・真魚八重子)
|
|
再会迷宮
(不倫同窓会 しざかり熟女)
2007|監督:竹洞哲也|脚本:小松公典
出演:佐々木麻由子、サーモン鮭山、松浦祐也
おっぱいの線の下降とともに青春も失いかけてた三十代バツイチの主人公が、奔放な同級生たちや若い姪、オカマのママに見守られながら、同窓会での元カレとの再会に、忘れていたときめきに心弾けてゆく瞬間をみずみずしく描く。おなじみの竹洞組の面々が顔をそろえる、固くなった背中を温かくポンと押してくれるような秀作ドラマ。女たちのセリフそれぞれにリアルな情感が宿っている。
(文・綿野かおり)
|
|
提供:A,C=新東宝株式会社
B=国映株式会社
D,E=大蔵映画株式会社
企画・配給=SPOTTED PRODUCTIONS
|