マスターズ・オブ・カット Vol.1
日本映画を斬った男
映画編集者・浦岡敬一の世界


  マスターズ・オブ・カット 浦岡敬一特集に寄せて
  各作品の上映タイムテーブル・イベント情報
緑色の字は浦岡敬一氏のコメントです

人間の条件 第一部・純愛編/第二部・激怒編

※今回は一部、二部のみの上映

1959/にんじんくらぶ=歌舞伎座映画/白黒/シネスコ/208分


監督・小林正樹
原作・五味川純平
脚本・松山善三
撮影・宮島義勇



出演・仲代達矢、山村聰、新珠三千代、淡島千景、
佐田啓二、小沢栄太郎、宮口精二、三井弘次

五味川純平のベストセラー小説を原作に映画化され、小林正樹の代表作としても知られる全六部の大作映画。力強い演出で封切り時には興行的に大ヒットした。
青春残酷物語

1960/松竹大船/カラー/シネスコ/96分
監督・脚本・大島渚 撮影・川又昴
音楽・真鍋理一郎

出演・桑野みゆき、川津祐介、久我美子、渡辺文雄、
田中晋二、森川信、佐藤慶

残酷な終末へと向かう青年と少女。女子高生の真琴と大学生の清は、無軌道な行動により警察に逮捕され、破滅へと向かっていく。川津祐介と桑野みゆきの若々しい魅力があふれる。大島渚デビュー2作目にして日本におけるヌーヴェルヴァーグの幕開け。
「私の編集者としてのデビュー作。当時、松竹大船ではポジではなく、ネガで編集していたため、最初に鋏を入れる時には、かなり時間がかかった。あの時、フィルムの方が私よりも偉かった気がする。切れるものなら切ってみろと主張していた。改めて見直すとやはりつたない。小林正樹監督の演出に私が技術的について行けていない。ただ、つたないけど素朴で平均化しない、リズム感の狂いがかえって良い効果を生んでいる。フレッシュな感じがする。」 「大島さんは、いつも自分が組み合わせたい素材を撮って来て、ポンと私によこす。大島さんからの指定は大きな流れはあるが具体的にはない。途中に挿入されるニュ―ス映像とドラマをなじませるのに苦心した。」
太陽の墓場

1960/松竹大船/カラー/シネスコ/87分
監督・脚本・大島渚 脚本・石堂淑朗 撮影・川又昴
音楽・真鍋理一郎

出演・炎加世子、津川雅彦、佐々木功、川津祐介、
伴淳三郎、渡辺文雄、小池朝雄

大阪釜ヶ崎の小工場街の一角に立ち並ぶバラックのドヤ街。愚連隊、血の売買を生業とする元衛生兵、ソビエトの脅威を煽動する旧軍人会が入り乱れる戦後の混乱の暴力と抗争。『悪人志願』の炎加世子が強烈なヒロイン像で印象を残した。
乾いた湖

1960/松竹大船/カラー/シネスコ/88分
監督・篠田正浩 脚本・寺山修司 撮影・小杉正雄 
音楽・武満徹

出演・三上真一郎、岩下志麻、山下洵一郎、
高千穂ひづる、炎加世子、寺山修司

60年安保で騒然とする東京、学生運動から離脱し、孤独で過激なテロリズムを夢想する虚無的な青年の脳裏にナチスの軍靴の音が響く・・・。篠田、寺山、武満トリオによる松竹映画の新しい波。

「フルサイズで、人物が歩いている最後の一歩をカットして、バストサイズの立ち止まりにつないだ。このアクションの飛ばしによって、人物の立ち止まりが強調された。この技法は『東京戦争戦後秘話』や『青春残酷物語』でも使っている。」
「音楽に当時は無名の新人だった、武満徹さんを起用するなど意欲的な作品。今考えると、ヌーヴェルヴァーグの編集とは、時間・空間を自由に飛ばしたり、重複させるつなぎだった。」
馬鹿まるだし

1964/松竹大船/カラー/シネスコ/108分
監督・山田洋次 原作・藤原審爾 脚本・加藤泰
撮影・高羽哲夫 音楽・山本直純

出演・ハナ肇、桑野みゆき、花沢徳衛、高橋とよ、
犬塚弘、長門勇、渥美清、藤山寛美

ハナ−山田コンビ第一作。戦後、瀬戸内海沖の町に現れたシベリア帰りの素朴で力持ちの風来坊―安さんは、泊り込んだ寺で泥棒を退治、更に駆落ち娘を連れ戻したことから、町の小英雄に。以後、様々な事件に担ぎ出されてゆく。

馬鹿が戦車(タンク)でやって来る


1964/松竹大船/カラー/シネスコ/93分


監督・脚本・山田洋次

原案・音楽・團伊玖磨

撮影・高羽哲夫

美術・佐藤公信


出演・ハナ肇、犬塚弘、岩下志麻、松村達雄、
花沢徳衛、谷啓、東野英治郎、飯田蝶子

村中から馬鹿にされていた男が、ある日、戦車を駆って村人達の前に現れたとしたら?そんな逆転劇を、架空の日長村を舞台に、哀感に湿ったユーモアと童話的感触の下に描き出した、ハナ−山田コンビ第三作。
「山田さんの作品は、松竹ヌーヴェルヴァーグとは対照的なノスタルジーがあって大好きだ。その情感を表現する要は“間合い”だと思った。それも、冗漫になる数コマ手前、ギリギリのところでつなぐことによって成立できた。」
「知的障害を持つ弟のリアクションは、編集で反応の鈍さを表現した。弟の受けの台詞を話すまでの“間”を極端に広げてつないだ。これによって、人物のキャラクターを作り出せることを実証できた。」
霧の旗

1965/松竹大船/白黒/シネスコ/111分
監督・山田洋次 原作・松本清張 脚本・橋本忍
撮影・高羽哲夫 音楽・佐藤勝

出演・倍賞千恵子、滝沢修、露口茂、新珠三千代、
川津祐介、近藤洋介

無実の兄の弁護を懇願する桐子。しかし、金のない彼女に、高名な弁護士・大塚は依頼を断る。兄の獄死に、徐々にデモーニッシュな復讐心を顕現してゆく桐子を、山田作品の“永遠の妹”倍賞千恵子が化肉する。
ユンボギの日記

1965/創造社/白黒/24分
製作・脚本・監督・大島渚 原作・イ・ユンボギ 
撮影・川又昴 ナレーション・小松方正

出演・イ・ユンボギ

韓国の貧しい少年少女達を捉えたスチール写真に、少年の手記『ユンボギの日記』の朗読をかぶせて構成された記録映画的実験作品。「イ・ユンボギ、君は10歳の少年・・・・」と何度も繰り返される作者の呼びかけに、韓国への万感がこもる。
「馬鹿シリーズに続いて1965年の冒頭に手掛けた作品。兄の死に対する報復のドラマとして、これ程までに計算され尽くされたサスペンス劇は、編集した身でも怖い。」
「編集によって、静止画でも映画になりうることを実証することができた。ユンボギが生きて見えたら私の勝ちだと思った。様々なモンタージュ理論を深めて行くきっかけとなった作品である。」
暖春

1965/松竹大船/カラー/シネスコ/93分
監督・脚本・中村登 原作・里見トン、小津安二郎
撮影・成島東一郎 音楽・山本直純

出演・森光子、岩下志麻、長門裕之、乙羽信子、
倍賞千恵子、有島一郎

小津安二郎、里見クの原作による、京都南禅寺界隈で小料理屋を営む母と、婚期にさしかかった娘をめぐる小津映画ではお馴染みの主題を扱ったホームドラマだが、松竹女性映画の名匠・中村登に手にかかれば、また一味違った趣きを見せる佳編。

紀ノ川

1966/松竹大船/カラー/シネスコ/172分
監督・中村登 原作・有吉佐和子 撮影・成島東一郎
美術・梅田千代夫 音楽・武満徹

出演・司葉子、岩下志麻、有川由紀、田村高廣、
丹波哲郎、東山千栄子

松竹のお家芸・女性文芸大作もの。有吉佐和子の長編小説を原作に、明治大正昭和の3代に渡る女の年代記を女性映画の旗手・中村登が描く。紀州の自然を捉えた成島東一郎の撮影が素晴らしい。
「中村さんは松竹のメロドラマを確立した人で、私は昭和38年の『つむじ風』からのコンビだ。文芸作品のため珍しい編集テクニックは必要なかった。重々しくつなぐことを心がけた。」 「冒頭のキャスト、スタッフのタイトルを右端や左端に入れた。バックの舟下りの画を壊さないためだが、当時としては斬新な手法だった。この当時、大島さんの『白昼の通り魔』を同時に編集しており、夜は東京に向かう高速道路の車中で、松竹大船流からヌーヴェルヴァーグへと100パーセント頭を切り替えていた。」
黒蜥蜴

1968/松竹大船/カラー/シネスコ/87分
監督・深作欣二 原作・三島由紀夫 脚本・成澤昌茂
撮影・堂脇博 美術・森田郷平 音楽・富田勲

出演・丸山明宏、木村功、川津祐介、松岡きっこ、
三島由紀夫、丹波哲郎

女賊・黒蜥蜴と探偵・明智小五郎の性的な交感に満ちた対決/追跡劇を、服装陶酔・性転位など芸能的エロスで飾る乱歩原作・三島戯曲の映像化。美麗と俗悪を具有する丸山明宏の妖姿。三島自身の怪演!
恐喝こそわが人生

1968/松竹大船/カラー/シネスコ/90分
監督・深作欣二 原作・藤原審爾
脚本・神波史男 長田紀生 松田寛夫
撮影・丸山恵司 美術・佐藤公信 音楽・鏑木創 

出演・松方弘樹、佐藤友美、三原葉子、
丹波哲郎、天知茂

失礼ですがご商売は?―へへへ、カツアゲ屋よォ。高度成長する日本の片隅、悦楽と怖れを往復し、恐喝により飢餓感を埋めてゆく村木とそのダチ公達の暗躍を“貧乏揺すりのカメラ”で活劇的に捕らえたピカレスクロマン。
「深作さんに対抗できる編集者ということで、会社側が私を担当にした。松竹流のメロドラマを多く手がけていたので『こういったタッチの作品を撮る人がいるんだ』と思い新鮮だった。」 「深作さんはストップモーションや白黒画像のモンタージュなど、新しい手法を好んだ。私が30代後半の脂の乗りきった時期で、我ながら見事な仕事をしている。ラストで血を流して歩道で死ぬ松方の画を忘れることが出来ない。」
少年

1969/創造社=ATG/カラー/シネスコ/97分
監督・大島渚 脚本・田村孟
撮影・吉岡康弘、仙元誠三
美術・戸田重昌 音楽・林光

出演・渡辺文雄、小山明子、阿部哲夫、木下剛志

実際の事件に取材した大島渚の名作。戦争のため人生を棒に振ったと信じている酔っ払いの父親と気の強い後妻、少年と幼い弟、との4人が「当たり屋」を続けながら全国縦断を敢行する苛烈なロードムービー。
美空ひばり・森進一の花と涙と炎




1970年/松竹大船/カラー/シネスコ/95分
監督・脚本・井上梅次 撮影・丸山恵司
音楽・大森盛太郎


出演・美空ひばり、森進一、尾崎奈々、なべおさみ
北上弥太郎、佐々木孝丸、柳沢真一
林与一、島田正吾


日本舞踊の家元の娘・霞は、バンドマスターとの恋のために家を出る決心をする。だがその恋は成就せず、彼女を励ましたのは、流しの榊の歌声だった・・・。美空ひばり=森進一のコンビによる歌謡ミュージカル。 
「編集上では珍しくノーマルなつなぎをしている。編集というより、美術の戸田さんの作った黒い日の丸をバックに遺骨が並んでいるという意表をついたセットが持つ意味を、自分の中でどう昇華させるかが問題だった。」 「私の編集は、台詞尻にちょっとした間があったり、感情表現のサイレント・ショットを長く使うのだが、井上さんは「切り込んで間を詰める編集を」と要求したので、全く合わなかった。理屈では理解できるが、自分の編集スタイルを変えるのは大変難しい。しかし、間を詰める編集を習得し、勉強にはなった。」
書を捨てよ町へ出よう

1971/人力飛行機社=ATG/カラー/138分

製作・監督・原作・脚本
寺山修司

撮影・鋤田正義、仙元誠三 

美術・林静一、榎本了壱

音楽・J・A・シーザー
下田逸郎、柳田博義


出演・佐々木英明、平泉征、斎藤正治、丸山明宏、
新高恵子、浅川マキ、蘭妖子

なに見てんだよ!銀幕から挑発する青森弁。を皮切りに、ハイティーン詩歌劇、便所の落書、同性愛者の自己宣伝等々、無名の人々の詩と肉声で織上げられたヒップな異色レビュー。自称・青春煽動業者=寺山の長編童貞作。
儀式

1971/創造社=ATG/カラー/シネスコ/123分
監督・脚本・大島渚 脚本・田村孟、佐々木守
撮影・成島東一郎 美術・戸田重昌 音楽・武満徹

出演・河原崎健三、中村敦夫、佐藤慶、小山明子
賀来敦子、乙羽信子、小松方正、土屋清、渡辺文雄
小沢栄太郎、殿山泰司、戸浦六宏、高山真樹
河原崎しづ江、三戸部スエ

奇怪な祖父の男根支配によって作られた複雑な血縁関係と不気味な日本家屋に象徴される家父長制が滅びの交響楽を奏でる。冠婚葬祭の儀式によって戦後世代の若者達が呑み込まれて行く様を描いた呪われた傑作。
「冒頭の長い黒味は、観客の雑念を断ち切るために私が付けた。白い兎のショットを、純粋な少女が汚されるという意味でインサートしたら、寺山修司監督は、映画というのは撮ればできるものではなく、編集でつくり上げるものだと解ってくれた。」 「A、B2台のカメラで撮った佐藤慶さんと小山明子さんの会話のシーンでは、台詞を喋っている側をオフにし、聞いている側をオンにするという、普通の編集のつなぎとは逆をやった。大島さんは『浦ちゃんが、どんな編集をするか楽しみにしてたんだよ』と笑いながら言った。」
軍旗はためく下に

1972/東宝=新星映画社/97分/カラー/シネスコ
監督・深作欣二 脚本・新藤兼人 撮影・瀬川浩
音楽・林光 

出演・左幸子、丹波哲郎、中村翫右衛門、
江原真二郎、三谷昇、関武志、夏八木勲、内藤武敏

敗戦直後に逃亡罪によって処刑されたという記録により、靖国神社にも祀られない夫の死の真相を追う未亡人の、哀しみに満ちたたった一人の戦い。結城昌治原作の同名小説を新藤兼人が脚本化。
青幻記 遠い日の母は美しく

1973/青幻記プロ/カラー/シネスコ/117分
製作・監督・脚本・撮影・成島東一郎
原作・一色次郎 脚本・平岩弓枝、伊藤昌輝
美術・下石坂成典 音楽・武満徹

出演・田村高廣、賀来敦子、山岡久乃、戸浦六宏
小松方正、藤原釜足、原泉

吉田喜重や大島渚らの松竹ヌーヴェルヴァーグの監督たちを支えた名キャメラマン・成島東一郎の初監督作品。一色次郎の同名小説の映画化。30年ぶりに故郷を訪れた男の若くして死んだ母への追慕の情を回想形式で描く。
「本作はストップ・モーションを多用した。しかも、ストップする瞬間をシャープに見せるために、ストップするコマの手前の1コマか2コマを抜く、という技法を使った。」 「奄美の風土や土壌を表現したく、色々な実景を撮影してもらい、シーンとシーンの合間に無機的にインサートしてつないだ。それが『南国の風土が良く描かれている』という評価を受けた。」
十六歳の戦争

1973−76/サンオフィス/カラー/シネスコ/94分
監督・脚本・松本俊夫 脚本・山田正弘
撮影・押切隆世 音楽・下田逸郎

出演・秋吉久美子、下田逸郎、ケーシー高峰
嵯峨三智子 

夏の豊川、旅人は水死体の前で16歳の少女あずなの微笑みを見た―16歳で爆撃を経験したその母、兵隊を演じる自称・伯父。慰霊祭の夜、旅人は母を捜す。戦後二十年目、不可逆的に崩れた男女の性と生の関係を強い陽光が照らす。
愛の亡霊

1978/大島渚プロ=東宝東和/カラー/108分
監督・脚本・大島渚 原作・中村糸子
撮影・宮島義勇 美術・間野重雄 音楽・武満徹

出演・藤竜也、吉行和子、田村高廣

兵隊帰りの若者は人力車夫の女房と関係を持つ。若者との関係を断つことのできない女房はついに若者と共謀、夫を殺害し井戸に投げ捨てる。しかしそれから車夫を見た者が現れ、二人の前に車夫の亡霊が姿を見せる。山村の四季を描きだした美術と撮影が亡霊の姿を露わに映し出す美しい傑作。
「映画が完成した後に、松本俊夫さんから全権を委任されて、ラブストーリーに作り直した。作曲家の下田さんに音楽を入れ直してもらい、録音の西崎さんに効果音を付けてもらった。能登のシーンでは、叔父の不安と狂気を表すため、叔父と鬼面太鼓をフラッシュでカットバックした。」
「大島さんに『愛のコリーダ』と同様にパリで編集をして欲しいと頼まれたが、実はハード・コアのシーンはひとつも無く、パリ行きは無駄だった。大島さんとは一番多くコンビを組み17作品の編集をしたが、この作品以降、私は縁を切った。」
ウルトラマン

1979/円谷プロ/カラー/ビスタ/102分
監督・実相寺昭雄、下村善二 脚本・佐々木守
撮影・福沢康道、内藤正治 音楽・宮内国郎

出演・小林昭二、黒部進、石井伊吉
二瓶正也、桜井浩子

昭和47年(1972)から放送されたテレビ版ウルトラマンのなかから、実相寺昭雄が監督した5本をリストアップ、劇場用にオムニバスとして再編集した、劇場版ウルトラマン。旧シリーズのウルトラマンを劇場で見る機会は皆無に等しい。貴重な体験を是非!
復讐するは我にあり

1979/松竹=今村プロ/カラー/シネスコ/140分
監督・今村昌平 原作・佐木隆三 脚本・馬場当
撮影・姫田真佐久 音楽・池辺晋一郎

出演・緒形拳、三國連太郎、小川真由美
倍賞美津子、清川虹子、白川和子、ミヤコ蝶々

惜しくなか。俺の一生こんなもん。詐欺窃盗殺人を繰返し、偽装自殺や変装で捜査網から逃走、女達と情交を重ねる、ある男の肖像−佐木隆三の同名ノンフィクションを基にやがて死刑に至る彼の過剰する生の熱量を、叙情を廃して描く。
「テレビ用16ミリフィルムを劇場用35ミリフィルムに変換すると、ネガのつなぎが出てしまうので、全カット2コマずつ切らねばならず、そのためにずれた音(台詞や爆発音)も全て修正した。今やこの作業が出来る人は居ないのではないか。」
「全体的に、それまでの今村昌平さんの作品のタッチよりもシャープな編集にした。ラストシーンでは、主人公の榎津(緒形拳)の遺骨を父親(三國連太郎)が断崖上から放り投げるシーンで、その骨がフレームのまん中で止まるようにして、榎津の反発心を強調した。」
東京裁判

1983/講談社/白黒/スタンダード/277分
※途中10分休憩あり
監督・脚本・小林正樹 脚本・小笠原清
音楽・武満徹 ナレーター・佐藤慶

昭和23年に開廷された「極東国際軍事裁判」の米国防総省が撮影した50万フィートに及ぶフィルムが25年後に米政府により公開された。その膨大な記録フィルムを中心に構成した、大長編記録映画。裁く側の連合国内部の深刻な対立を暴露しつつ描かれる勝者と敗者による迫真の裁判記録。
優駿 ORACIO’N

1988/フジテレビ=仕事/カラー/ビスタ/128分
監督・杉田成道 原作・宮本輝 脚本・池端俊作
撮影・斎藤孝雄、原一民

出演・斉藤由貴、緒方直人、吉岡秀隆、加賀まりこ
田中邦衛、石坂浩二、緒方拳、仲代達矢

北海道の小さな牧場主とその息子の夢は、名馬をつくりダービーを制覇することだった。「オラシオン(祈り)」と名付けられたその馬の生誕から日本ダービーに出場するまでを腹違いの弟の死、牧場の経営破綻、娘の馬への夢と愛情と共に描く。
「通常の長さよりも少し早くカットする方針で、編集にとりかかった。次にどうなるかという関心を観客に持たせ、飽きさせない画の組み合わせと長さを全て計算し、ドラマっぽく編集されているのが特徴だ。」 「オーバーラップという効果を、長いダブル・エクスポージァ(二重焼)に近い形で使った。単に時間経過や回想ではなく、誠少年がまだ見ぬ馬オラシオンに会いたいという思いの深さ、感情を表現したかった。」

  マスターズ・オブ・カット 浦岡敬一特集に寄せて
  各作品の上映タイムテーブル・イベント情報

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