上映作品 |
『コミック雑誌なんかいらない!』
1986|監督:滝田洋二郎|脚本:内田裕也、高城功|撮影:志賀葉一|音楽:大野克夫
35ミリ|カラー|120分|提供:日活
出演:内田裕也、渡辺えり子、麻生祐未、原田芳雄、小松方正
フィクションがノンフィクションとガチンコ対決した結果、あの時代の真実がフィルムに刻まれた。事実を追うだけでは足りない「何か」はぎゅっと詰まっている。『おくりびと』はアカデミー賞という名誉を得たが、『コミック雑誌〜』はロックンロークというジャンルに残る栄誉があると思う。「I can’t speak fuck’n japanese」は今からでも英語の教科書に残すべき名台詞。内田裕也映画最強傑作が、現在発売されているDVDにはないシーン(日航機墜落事故!)も含めて復活。(松江哲明)
上映日 : 9.11(土)16:00|9.16(木)16:00 |
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『人が人を愛することのどうしようもなさ』
2007|監督・脚本:石井隆|撮影:佐々木原保志、寺田緑郎|音楽:安川午朗
35mm|カラー|115分|提供:東映ビデオ 出演:喜多嶋舞、津田寛治、永島敏行、美景、竹中直人
近年最も素晴らしいタイトルを持つ本作はウソとホントが交差し、おっぱいと陰毛が炸裂するりっぱな18禁映画。全編ほぼ裸演に徹した喜多嶋舞に土下座したくなるような過激作だが、観賞後に残るのは名タイトルの一文。ビデオ撮影だからこそなし得た過剰なカット割と過激なアングルはスクリーンで体感すべき映像。セックスでは味わえないエロがあるということを久々に知れた。劇場公開時はおじさんでいっぱいだったけど、ポレポレでは女性の意見も聞きたい一本。(松江哲明)
上映日 : 9.12(日)16:00|9.14(火)16:00 |
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『スティーヴィー』
2002|監督:スティーヴ・ジェームズ|35ミリ|カラー|145分|提供:ムヴィオラ
撮影:デナ・カッパー、ゴードン・クィン、ピーター・ギルバート|音楽監修:リンダ・コーエン|
出演:スティーヴィー・フィールディング
売れないことがDVDにならない理由なら、本作は常に上映されるべきドキュメンタリーだと思う。なぜなら時代によって、見え方が変わるリテラシーを備えた傑作だから。だから僕らは『スティーヴィー』を見続けなきゃいけない。僕はまだ罪を犯した人間に対し、「ただ側にいる」ことを選択した監督の気持ちはまだ完璧には理解出来ないけど、スクリーンと向き合うことでちょっとづつ分かっていきたいと思う。(松江哲明)
上映日 : 9.13(月)16:00|9.15 (水)16:00 |
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『ジョニー・マッド・ドッグ』
2007|監督・脚本:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール|撮影:マルク・コナンス
35ミリ|カラー|98分|提供:インターフィルム
「お願いランキング」では松山梢さんに「この映画が好きな人とは分かり合えない」と断言された作品だが、僕は断固支持。地獄としか言いようのない戦場を観客に体験させるために、スタッフは元少年兵たちと戦争を再現し、キャメラを現場に放り込んだ。ゲーム的演出が目立った『第九地区』よりも、ドキュメンタリー的な生々しさに満ちた本作をスクリーンで見、ド肝を抜かれて欲しい。本年度のベストの一本であることは間違いないのだから。(松江哲明)
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『中学生日記』+『前略、大沢遙様』
『中学生日記』
2005|監督:山下敦弘|撮影:近藤龍人|原作:QBB |出演:大迫一平、落合順、川村歩惟、篠原友希子 ほか
DV|カラー|49分|提供:ニューシネマワークショップ
山下監督が隠さずにいられなかった己の童貞性を最もさらけだした中編映画。ワークショップという枠だからこそ可能なキャスティングが素晴らしく、オトナな彼らが演じる人生で最も恥ずかしい時期は18歳以上の男女必見。そんな光景を冷徹に切り取る近藤龍人のキャメラが観察者に徹しているのが厳しくも、可笑しい。原作者も絶賛した近年最も正しい漫画の映画化。(松江哲明)
『前略、大沢遙様』
2003|演出・構成:松江哲明 提供:HMJM|出演:大沢遥、松江哲明、向井康介
DV|カラー|60分(再編集版)|提供:ハマジム
松江哲明・初のAV監督作品。意外にもメジャー・レーベルの単体女優物にして、童貞。サーガの「エピソード1」ともいえる怪作である。童貞の大好きな映画 『スタンド・バイ・ミー』風の長回しショットや、女優と一緒に湯船につかりながらも指一本触れようとしない(というか触れられない)姿勢など、松江自身が「まだ」な輝きを放っていたあの頃。(九龍ジョー)
上映日 : 9.11(土)18:15、9/14(火)21:00 |
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『極東のマンション』+『マリコ三十騎』+『あんにょんキムチ』
『極東のマンション』
2003|監督・撮影・出演:真利子哲也
8ミリ→DV|カラー|32分|提供:真利子哲也
ドキュメンタリーに対する認識の格が違う作品。それでいてべらぼうに面白い個人映画。僕はナルシストな自分探し映像に対して、ダメ出しする母ちゃんの言葉に爆笑し、自宅マンションからのバンジーに震撼、「映画を撮る」という覚悟に感動した。8mmでもハリウッドでも、スクリーンに映し出された以上は映画は平等。そういう意味で真利子監督の映画には言い訳がない。「何かを表現したい」という若者たち、映画に打ちのめされるチャンスですよ。(松江哲明)
『マリコ三十騎』
2003|監督・撮影・出演:真利子哲也
8ミリ→DV|カラー|24分|提供:真利子哲也
『極東のマンション』のセルフドキュメンタリー「っぽさ」を自ら破壊し、スペクタクル映画のようなスケール感さえ持ち合わせてしまったのが『マリコ三十騎』。真利子哲也自身をも作り替え、語られていることはウソだらけなのに、ここには紛れもなく8mmフィルムへの愛がある。ホントのことを伝えるためには、ウソは不可欠なのだ。海から数十人の男子がふんどし姿で現れるカットは、個人映画の枠を超えた映画史に残る名シーンだと思う。(松江哲明)
『あんにょんキムチ』
1999|監督・出演:松江哲明|撮影:茂木一樹、松江哲明
16mm|カラー|52分|提供:Tip Top
日本映画学校の卒業制作ながら劇場公開を果たし、大きな話題を集めたデビュー作。キムチは食べられないが在日三世の松江が自身と家族にカメラを向け、それぞれの立場で語られる民族観に耳を傾け、見知らぬ祖国へ向かう。近年亡くなった松江の父と祖母の在りし日の姿や、夜道を歩きながら亡き祖父を想って絶唱する「あの素晴らしい愛をもう一度」に『ライブテープ』の原点を見つけることができるだろう。全てはここから始まった。(モルモット吉田)
上映日 : 9.11(土)21:00、9.13(月)18:45、9.17(金)18:15 |
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『あんにょん由美香』
2009|演出・構成:松江哲明|DV|カラー|119分|提供:SPOTTED PRODUCTIONS
出演:林由美香、キム・ウォンボク、入江浩治、平野勝之、
カンパニー松尾、いまおかしんじ、柳下毅一郎
2005年6月26日、34歳で突然の死を迎えた女優・林由美香。AV・ピンク映画を中心に膨大な出演作を誇り、多くの観客から愛された彼女。松江がいつか実現を夢見た彼女を主演に迎えた映画は永遠の幻となった。しかし、彼女が出演した謎の韓国エロビデオによって松江=韓国=由美香が結びつく。これは追悼映画ではない。彼女を愛した人たち、これから彼女に出会う人たちに捧げる、デビューから10年を経て到達した第一期松江哲明の集大成。(モルモット吉田)
上映日 : 9.12(日)18:15 ※トークショーあり |
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『童貞。をプロデュース1』(ガンダーラ映画祭ヴァージョン)+『とにかく金がないTV(お金でおっぱいを見せる女性は何人いるか・編)』
『童貞。をプロデュース1』(ガンダーラ映画祭ヴァージョン)
2006|構成・編集:松江哲明|DV|カラー|30分|提供:Tip Top
出演:加賀謙三、まさみさん(仮名)、カンパニー松尾、加賀の友人たち
伝説の自主映画上映会・ガンダーラ映画祭に出品されたシリーズ第1作。童貞1号・加賀の意中の彼女への愛の告白&童貞崩壊大作戦を、松江がAV時代に獲得したカメラを被写体に預け遠隔演出によってコントロールする手法を発展させ、セルフドキュメンタリーの新たな地平を開いた。松江の加賀への追い込みが観客に嫌悪を感じさせることなく、逆にサディスティックな快楽をもたらしてしまう悪魔的手法に満ちた歪にして正統な青春映画。(モルモット吉田)
『とにかく金がないTV(お金でおっぱいを見せる女性は何人いるか・編)』
2006|監督:岡宗秀吾|DV|カラー|45分|提供:TV東京
出演:童貞構成作家・寺坂君(27)、夏目ナナ、○●ちゃん
金がないことを逆手に作り手のやりたいことが炸裂した酸欠爆笑番組の中で、最も感動させられる回がこの「お金でおっぱいを見せる女性は何人いるか」。童貞を主人公にするとこうなるよね、というお手本のような物語。『童貞。』と比較しながら、大笑いして欲しいという意味ではTVよりもスクリーンが似合う番組。酸素吸入器持参でどうぞ。(松江哲明)
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『東京漂流 あなたのお部屋で犯らせてもらえませんか?』+『カレーライスの女たち』
『東京漂流 あなたのお部屋で犯らせてもらえませんか?』
1998|監督:バクシーシ山下|出演:内田 ちなみ・長谷川 梨奈・川奈 佳子・伊藤 みゆき
DV|カラー|90分|提供:h.m.p.
バクシーシ山下監督がAVの現場をさまようだけのドキュメント。それでもめっぽう面白いのは、AVという非日常的な空間が極めて「ふつう」に記録されているから。中でも一行を自宅に招いておきながら、女優にしか興味を示さない花岡じったさんの正直さが楽しい。なげやりなラストもAVだからこそ可能な痛快さ。『女犯』や『ボディコン労働者階級』といった過激作が代名詞とされるバクシーシ山下監督作品だが、僕は本作が一番好き。AVというイメージが一変されることは約束出来るのほほんドキュメント。中古ビデオ屋にもレンタル店にもなかなか見つからない一本だけに貴重な上映ですよ。(松江哲明)
『カレーライスの女たち』
2006|監督:松江哲明|出演:カレーライスの女たち
DV|カラー|30分|提供:PLANET Studyo+1
「はじめてつきあった彼女はカレーライスしか作れなかった。だからカレーが好きになった」と言う松江は、食をめぐる描写を自作に必ず取り入れる。本作ではAVの方法論を使用して「性」を「食」に置き換え、関係性も距離感も異なる女性たち――知人・友人・恋人の部屋を訪れてカレーを作ってもらい1泊する。食を介して交わされる会話、食べる瞬間に彼女たちが見せる表情の豊かさが、それぞれの人生の一瞬を鮮やかに浮かび上がらせる。(モルモット吉田)
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『童貞。をプロデュース2 ビューティフル・ドリーマー』(ガンダーラ映画祭ヴァージョン)+『ライク・ア・ローリング・ストーン』+『ダークシステム』
『童貞。をプロデュース2 ビューティフル・ドリーマー』(ガンダーラ映画祭ヴァージョン)
2007|演出・構成:松江哲明|DV|カラー|36分|提供:Tip Top
出演:梅澤嘉朗、梅澤家の人々、かつて梅澤君との交際を拒否した大木さん
第2回ガンダーラ映画祭で公開されたシリーズ第2作は秩父の山中に住む童貞2号・梅澤のサブカルチャーへの愛と、既に引退した80年代アイドルへの憧憬が描かれる。コミュニケーションを重ねても撮ることが不可能な被写体の濃密な個の空間にカメラを預けることで侵入を可能にした松江の遠隔演出はより洗練を増し、2006年から翌年にかけての同時代の空気感も併せて捉えることにも成功。後に前作とセットで劇場公開され大ヒットを記録。(モルモット吉田)
『ライク・ア・ローリング・ストーン』
2008|監督・脚本:梅澤嘉朗|DV|カラー|15分|提供:梅澤嘉朗
出演:梅澤嘉朗、堀北結衣
梅澤君はダニエル・ジョンストンのようなアーティストなんだな、と分かる一本。思いっきり笑って切なくなれる恋文のような一本だと思うが、送られた側は正直迷惑なだけかもしれない。だけどそんな一方通行さが彼ならではだし、そんな生き方は正しいと思う。ストーカー視点のキャメラアングルや、物語の流れを断絶するフィクションとノンフィクションが入り交じった編集を、いつかクリストファー・ドイルさんに批評して欲しい。(松江哲明)
『ダークシステム』
2010|監督・脚本:幸修司|DV|カラー|49分|提供:幸修司
出演:宅野誠起、古谷克実、鎌田優子
心の底から見下していた友人に好きな女の子を奪われ、その憤りから渾身の盗聴器を作り上げた男(客観的に見ればただのストーカー)の愛と勇気の大冒険。荘厳な音楽などの痛快なハッタリとオタク的ディティールをきちんとふまえ、アパートの一室だけでも宇宙規模のスペクタクルが描けることを証明し、来年には続編の製作・公開も決定している童貞SF映画最終兵器。(直井卓俊)
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『エロスのしたたり』+『セキ★ララ』
『エロスのしたたり』
1999|監督:サトウトシキ|脚本:小林政広|35mm |カラー|65分|提供:国映株式会社
出演:伊藤猛、河名恵美、酒井健太郎、本多菊雄
エロなのかホラーなのか微妙なタイトルだが、描かれるのは人生にも作品にも自信が持てないピンク映画監督のささやかな日常。だって原題は「涙くん、さようなら」だもの。小林政広脚本作品では最も厳しい視点だと思うが、サトウトシキ作品では一番やさしい映画だと思う。伊藤猛、葉月蛍のぶっきらぼうな掛け合いも絶好調。ハンチング帽を被れない、メガホンで大声を出せないカントクのつぶやきはtwitter時代にも沁みるはず。たぶん。
『セキ★ララ』
2006|監督:松江哲明|DV|カラー|83分|提供:HMJM
出演:花岡じった、相川ひろみ、杏奈
カンパニー松尾らが設立したレーベル・ハマジムで撮られた異色AV『アイデンティティ』を改題短縮して劇場公開。前半は在日三世のAV女優と彼女が育った京都、広島への旅。後半は中国人留学生AV女優と、在日二世の男優・花岡じったが横浜中華街へ。東京を離れるや色濃く漂い始める叙情性と、SEXを主体にしたその場限りの関係性ゆえに見せる表情、語られる言葉の数々が「AV>」「映画」の境界を曖昧化させる秀作ロードムービー。(モルモット吉田)
上映日 : 9.14(火)18:15、9.16(木)18:15 |
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『ライブテープ』
2010|監督:松江哲明(ライブテープ)|DV|カラー|74分|
提供:SPOTTED PRODUCTIONS
出演:前野健太、DAVID BOWIEたち、長澤つぐみ(ライブテープ)
08年に父の壮絶な最期を目の当たりにし、同級生のあっけない死に恐怖を感じた。現実から逃げ、いろんな人に迷惑をかけた。こんなことしてても何も形に残らないな、と実感した。焦りと憤りとやけっぱちがごっちゃになって、前野さんとカメラマンの近藤君と録音技師のタカアキさんに電話をした。「元旦に映画を撮りたい」と。いつもなら実家で爆笑ヒットパレードを見てる「だけ」であろうこの日、僕は仲間たちと「映画を撮り続ける」という覚悟を形にしたかった。僕が育った街、吉祥寺で。(松江哲明)
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『これでいーのかしら 怒る西行』
2010|監督:沖島勲|DV|カラー|96分|提供: YKKプロダクション
出演:沖島勲、石山友美
「映画にとっての豊かさってなんなの?」変容する風景を前に幼少期の思い出や柔軟な芸術論を展開する沖島さんの口から声にならない熱い息吹が聞こえてくるようでした。それは半世紀もの間、映画を追及してきた監督だからこそ嘘のない言葉です。たった1日、たった4時間、たった4人のスタッフによる制作内情は、もはや事実以上の意味を持ちません。映画の成立につきまとう不幸な制約を達観した人生(映画)哲学で『あらよっ』とジャンプし、かと思えば何気ない風景に簡潔な言葉を導入するだけで時空を反転させてしまう。これほど身軽で豊かな映画を私は知りません。なにより映画構造そのものの可能性を更新させた本作は、その道を志す若者たちをも大いに刺激することでしょう。それが「散歩道を色々解説しながら歩いていく、ただ、ただ、それだけの映画」と言う事実に嘘はないのですからなんとも脅威です。その贅沢に私なんかは感極まってしまうのです。(ポレポレ東中野 小原治)
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『これでいーのだ ライブ西行』
『ライブテープ』×『これでいーのかしら 怒る西行』MIX上映
2009 年の元旦・吉祥寺。ギター 1 本で唄いながら武蔵野八幡宮から南下、井の頭公園を目指すミュージシャン前野健太を 1シーン 1カットで追うライブ・ドキュメント『ライブテープ』と、同年の春に映画監督・沖島勲が吉祥寺の南は久我山から玉川上水沿いを北上しながら井の頭公園に至るまでの散歩道を同行する女性に色々解説しながら歩いていく異色の散歩ドキュメント『これでいーのかしら 怒る西行』。奇しくも井の頭公園を目指す2本が1 つのスクリーンで奇跡のリアルタイム同時上映!(各作品1回ずつの上映もあり) (直井卓俊)
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