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独自の美学を追求する映画監督、小栗康平。日本が世界に誇る映像作家である。
彼の監督デビュー作『泥の河』から最新作『埋もれ木』まで一挙上映するのは実は今回が初めての試みである。しかも『泥の河』アカデミー賞バージョンを初め全てが別バージョンでの上映というのだからたまらない。
小栗映画に今回初めて接するという方は、映画は決して薄っぺらな存在ではないことに気がつくはずだ。
また、今まで小栗映画を追い続けていた方にとって、これは大きなプレゼントになるだろうから大いに堪能して頂きたい。
小栗映画は輝き続けている。そしてこれからも。
映画はあなたのものなのだ。 |
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<<上映作品詳細>> |
各作品のタイムテーブル |
『泥の河』 |
木村プロダクション製作 1981年日本映画
製作:木村元保/原作:宮本輝/脚本:重森孝子/撮影:安藤庄平/照明:島田忠昭/
録音:西崎英雄・平井宏侑/美術:内藤昭/編集:小川信夫/音楽:毛利蔵人
出演:田村高廣、藤田弓子、加賀まりこ、朝原靖貴、柴田真生子、桜井稔、他
小栗康平の映画「泥の河」から受ける感動は、私たちが久しく忘れていた種類のものである。それは、静かに持続する。黒白の撮影技術は殊の外秀逸で、また、俳優の演技にも見せかけの偽りは全く無い。ブレッソンの映画と共通する深度を(私は)この映画に感じた。
武満徹(作曲家)
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『伽や子のために』 |
劇団ひまわり映画製作事務所製作 1984年日本映画
企画:砂岡藤三郎/製作:砂岡不二夫/原作:李恢成/脚本:太田省吾・小栗康平/撮影:安藤庄平/
照明:佐藤幸次郎/録音:西崎英雄/美術:内藤昭/編集:小川信夫/音楽:毛利蔵人
出演:呉昇一、南果歩、浜村純、園佳也子、加藤武、川谷拓三、他
日本人の映画作家である小栗康平が、李恢成という在日朝鮮人作家の小説を映像化しようと思い立ったとき、そこで必然的に問われているであろう「なぜ映画にするのか?」という己れへの問いを、在日朝鮮人の私が今、〈在日〉のしがらんだ実存のなかで聴き取っているとしても、それは取り立てて特異なことではないのだ。(中略)それは小栗康平という深く澄んだ眼差しが見定めた、日本人自身の悲しみの素顔でもあったものだ。
金時鐘(詩人) |
※「伽や子のために」の「や」はにんべんに耶です。 |
『死の棘』 |
松竹・松竹第一興行製作 1990年日本映画
製作総指揮:奥山融/製作:荒木正也/原作:島尾敏雄/脚本:小栗康平/撮影:安藤庄平/
照明:松井博/録音:西崎英雄/美術:横尾嘉良/編集:小川信夫/音楽:細川俊夫
出演:松阪慶子、岸部一徳、木内みどり、松村武典(子役)、近森有莉(子役)、他
「死の棘」はまれにみる様式美をもった作品である。永遠をふくんだ静物、現世のものではないような風景、カメラに対して驚くべき孤独を表現する顔。小栗は衝撃的な色彩とメンタル・イメージをもつアントニオーニと、ミステリアスな情熱をもつ、もう一人の日本の巨匠、小津との間に位置する。「死の棘」はこのフェスティバルがもたらした最初の驚きのひとつである。
「ル・モンド」紙 |
『眠る男』 |
群馬県「眠る男」製作委員会製作 1996年日本映画
企画:小寺弘之/脚本:小栗康平・剣持潔/撮影:丸池納/照明:山川英明/
録音:井上宗一/美術:横尾嘉良/編集:小川信夫/音楽:細川俊夫
出演:アン・ソンギ、クリスティン・ハキム、役所広司、野村昭子、今福将雄、小日向文世、藤真利子、田村高廣、他
日本の小栗康平監督の映画「眠る男」は一風変わった、興味深い映画である。今年のモントリオール映画祭で審査員特別賞を勝ち取った。作品を紹介する際、小栗はモントリオールの観客に対し、静かな映画なので我慢強く見て欲しいと語った。全くその通りだった。この美しく完璧な映画を観ている間、深い静けさ、平穏に包まれた感があった。なぜ、小栗はこのような映画を作ることができたのだろうか?
どのような魔法をつかったのだろうか?(中略)これは、世界中の映画を学ぶ学生達が研究するような名作になるであろう。
ビジャヤ・ムレイ(インド・ジャーナリスト) |
『埋もれ木』 |
「埋もれ木」製作委員会 2005年日本映画
脚本:小栗康平、佐々木伯/撮影:寺沼範雄/ビジュアル・エンジニア:山口義彦/
照明:豊見山明長/録音:矢野正人/美術:横尾嘉良、竹内公一/
VFXスーパー・バイザー:アート・デュリンスキー/VFXディレクター:石井教雄
出演:夏蓮、浅野忠信、坂田明、大久保鷹、岸部一徳、坂本スミ子、田中裕子、平田満、松坂慶子(友情出演)、他
隠された木々という意味であろうか、『埋もれ木』は我々を巧妙 に仕立て上げられた映像への旅へと誘ってくれる。物語がどの現実を根拠としているのか、物語が語られているその立ち位置がどこなのか、が
どんどん見えなくなっていく。(中略)「埋もれ木」の見慣れぬ世界を見ることによって、我々はすっかり子供の視点を失ったのだと気がつく。この絵にふれて、世界の不思議をありのまま受入れるべきだと、小栗は我々に提起しているように私は思う。
ヴァルター・ルグレ(映画批評家) |
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監督 小栗康平について
1945年群馬県生まれ。
早稲田大学第二文学部演劇専修卒。フリーの助監督として浦山桐郎、篠田正浩監督らにつく。
81年『泥の河』で監督デビュー。米アカデミー賞の外国語映画部門にノミネートされる。
84年『伽や子のために』では日本人として初めてフランスのジョルジュ・サドゥール賞を受賞。
90年には『死の棘』を発表。カンヌ映画祭で“グランプリ・カンヌ1990”と“国際批評家連盟賞”をW受賞する。
96年の『眠る男』では群馬県が自治体として映画製作したことが話題に。モントリオール世界映画祭で審査員特別大賞を受賞。
9年ぶりとなる『埋もれ木』は、カンヌ映画祭の「オフィシャル・セレクション(コンペ、ある視点)」部門の後援を受けて「監督週間」部門での上映、というカンヌ映画史上でも特別待遇での上映となった。
※「伽や子のために」の「や」はにんべんに耶です。 |
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