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<スタッフ>
監督・編集 : 由井 英
プロデューサー :
小倉美惠子 小泉 修吉
撮影 :
伊藤 碩男 由井 英
音声 : 河合 樹香
助監督 : 中嶋 美紀
編集・録音スタジオ : アクエリアム
共同製作 :
滑ツ境テレビトラスト
『オオカミの護符』製作委員会
製作配給 : 鰍ウさらプロダクション
製作協力 :
グループ現代
民族文化映像研究所
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音楽 :
姜小青(中国古筝)
千島幸明(篠笛)
ナレーター : 糸 博
語 り : 小倉 美惠子
題 字 : 永田 紗戀
版 画 : 小林 奈那
デザイン :
熊澤正人+内村佳奈
(パワーハウス)
岩井 友子 |
撮影協力(敬称略) :
土橋御嶽講中の皆様、馬絹御嶽講中の皆様、武蔵御嶽神社、青梅市郷土博物館、井上芳一、寶登山神社、寶登山谷ッ平講中の皆様、三峯神社、猪狩神社氏子中の皆様、山中恭介・トキ、村上
直(法政大学名誉教授)、西本豊弘(国立歴史民俗博物館教授)、武州御嶽山御師家古文書学術調査団(法政大学/青梅市教育委員会)、たましん地域文化財団、齋藤愼一(青梅市文化財審議委員長)、柴原ハナ、柴原福治、大久保スエ子、小倉フミ、鮫島時子、小倉知、船津貞夫、杉崎治郎、ほか
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支援 : 文化庁
後援 : 川崎市、川崎市教育委員会
日本映画ペンクラブ推薦作品 |
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<ストーリー>
日本列島の1/3の人々が暮らすという関東平野。
「お犬さま」と呼ばれるオオカミの護符を、土蔵や畑に貼ってきた関東のお百姓の暮らしには、今なお身近な自然を尊ぶ姿がある。
関東平野をぐるりと囲む山々には、かつてニホンオオカミが棲んでいた。
オオカミが護り札となる背景には、人がオオカミをありがたい存在と考えてきたよすがが見てとれる。自然との共生が声高に叫ばれる現在、先人が守り伝えてきた“足元にある暮らし”を深く捉え直すことこそが、私たちの行く手を照らし出す。
ニホンオオカミは絶滅したといわれる。それでもなお、オオカミの護符は今も私たちの暮らしを見守り続けている。 |
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<解説>
都市から背後を振り返り、見えてきたもの ―
都心に奪われがちなまなざしを、一転西方に向けると、そこには都市の生活を背後から見守り続けてきた“お山”の世界が静かに広がっている。
「オオカミの護符」は、“お山”の世界から人の手に携えられて、里へとやってくる。
“新しい町”に息づく、関東の古層の記憶 ―
今や、日本列島の1/3の人々が生活を営み、首都圏として、激しく移り変わる関東平野。
その“新しい町”の片隅に見かける古い土蔵や家の戸口、畑には、今なお「オオカミの護符」が貼られている。“武蔵の国“と呼ばれていた頃から、関東に暮らすお百姓が伝え続ける「御嶽講」という行事を通じ、「オオカミの護符」はもたらされている。
関東を取り巻く“お山”の世界に棲んだニホンオオカミ ―
関東平野を取り巻く山地は、絶滅したといわれるニホンオオカミの一大棲息地であった。
この山々にある数々の神社が、「オオカミの護符」を発行している。
その背景には、古くから土地に根差して暮らしてきた“山びと”とオオカミの関わりの姿があった。
人はなぜ、山を敬い、手を合わせ続けてきたのか・・・
関東に暮らすお百姓は、田畑を耕し、作物を作るだけの存在ではなかった。
自らの地域を自らの手で治め、御嶽山をはじめ、大山、筑波山、榛名山など、関東を取り巻く山々に、「講」を組んで参拝し続けてきた。
そこには、庶民の心が生き継いできた山岳信仰の素朴な姿がある。命の源である身近な自然を慈しみ、畏れ、敬う、人々の素朴な信心、信仰の世界が、私たちの行く手を照らし出す。 |
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<コメント>
野生の狼が日本列島にいなくなってから、まだ百年ほどしか経っていない。
のに、私たちは忘れてしまった。
オオカミという野生のいのちの存在も、それが伝えてくれる、山、大自然のメッセージも。
「オオカミの護符」は、その大自然からのメッセージを受けとる伝統文化である。
人々は、それを受けに山に向かう。
姫田 忠義さん(民族文化映像研究所 所長)
かつて畏怖の対象であり、害獣から作物を守ってくれる尊い生き物でもあったオオカミ。
姿を消して1世紀以上経た今も、信仰を通じて山人と里人をつなぐ偉大な存在。
本作品は、我々が失ったものの大きさについて深く考えさせてくれます。
平川 南さん(国立歴史民俗博物館館長 / 山梨県立博物館館長)
関東の里に暮らした百姓たちを、この映画は、武蔵の国という雄大な自然のつながりのなかでとらえかえした。
ご神体としての山々から「オオカミの護符」が降りてくる。
山、川、里をつなぐ世界にみえてくるのは、過去、現在、未来の結びつき。
内山 節さん(哲学者)
おいぬさま、ヤマイヌ。特殊な存在であるオオカミを「いぬ」と呼ぶ。
肩甲骨を焼いて占いをする。山を信仰する。どれもが故郷のモンゴルのことを思いださせた。栄えた大都会のイメージが強い日本も自然にもどればモンゴルに近いのか。
自然を共生の場にすれば力を合わせて生きるという人間生活の原点をこの映画で再認識した。
フフバートルさん(昭和女子大学人間社会学部准教授)
過去は過ぎ去らない。
まなざしを向ければ必ず出会える、と私は考えてきた。
『オオカミの護符』で、私はそれがすぐ手の届く所にあること、この都会の真ん中にその入り口が待っていることに驚き、
感動しながら呆然としてしまった。
人が地に足をつけて自然とともに生きていた証が、はっきりと見える映画だ。
田中 優子さん(江戸学者 / 法政大学社会学部教授)
自然を愛し、自然に感謝する人々のささやかな気持ちが、現代にまで続く根強い信仰心を生んだ。
僕は表現者の一人として、人々の「感謝する姿」に芸術の原点を感じ、愛おしくなるような気持ちになりました。
見終わった後、自然を心から愛せるようになる作品です。
子供の頃に忘れてきてしまったお昼寝の心地よさのような静かな感動が心の奥の方に訪れました。
清塚 信也さん(ピアニスト)
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<監督プロフィール>
由井 英
1969(S44)東京に生まれ、両親の実家のある長野県南佐久郡川上村で育つ。
日本大学商学部商学科卒業後、フランスに渡り、本格的に映画の演出について学ぶ。
2000年 民族文化映像研究所所長の姫田忠義と出会い、同研究所の所員となる。
映 画 : 『三朝のジンショ』、『越前笏谷石−石と人の旅』
テレビ : 『北極圏トナカイと生きる〜はるかなるサーメの大地』(NHK BSハイビジョンスペシャル)
『円空と行く日本 1 北方の大地が生んだ仏たち』
『円空と行く日本 2 微笑む仏に守られて』
以上の作品の制作に携わる。
民族文化映像研究所を退所ののち、2006年に鰍ウさらプロダクションを設立。
2008年 『オオカミの護符』監督制作。
現在、次回作 『谷戸のくらしと講 (仮題)』(支援:トヨタ財団) ならびに
『オオカミの護符』 英語版を制作中。 |
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