大きな家 タイマグラの森の子どもたち


2009年/DV/107分

<キャスト>
澄川皓恵
  太皓
  立皓
  早苗
井上祐治 語り・・・小室等
<スタッフ>
監督・・・澄川嘉彦

撮影・・・佐藤浩昭 太田信明 澄川嘉彦

音響構成・・・長峯康弘
音楽・・・横内丙午
題字・・・丸山浩平
プロデューサー・・・菅原淳一 伊勢真一

制作・・・イメージクラフト杜の風 ハヤチネプロダクション
<解説>
大きな家   監督 澄川嘉彦

前作の記録映画「タイマグラばあちゃん」の撮影のために岩手県のほぼ真ん中、早池峰山のふもとに棲みついてから十年になります。“タイマグラ”と呼ばれるこの開拓地はアイヌの言葉で「森の奥へと続く道」という意味だと言われ、人里から遠く離れた森にブナやトチ、ミズナラといった巨木が立ちならんでいます。
東京から一緒にやって来た幼い子どもたちは、幼稚園もなくテレビも映らないというあまりの暮らしの変わりように、最初はまわりの山を見ながら大声をあげて泣きました。しかし、いつのまにかチョウをとることに夢中になり野山をかけまわって遊ぶようになります。
都会から来た4歳と2歳の子が出会う生々しい自然―――身近な虫に始まり、池にやって来るカエルやサンショウウオ、春になると芽を出す木の子ども、家の中に入りこんでくる野ネズミや迷子になった赤ちゃんウサギ―――めまぐるしく続くいろいろな命との出会いの中である日、一番上の女の子がつぶやきました
「おとうさん、わたしたち“大きな家”にすんでるんだね」。
子どもたちにとって毎日走りまわっている森のすべてがさまざまな命あるものと一緒に暮らすひとつの“大きな家”だというのです。山で暮らすということは、それまでほとんど触れあうこともなかった人間以外の“生きとし生けるもの”の存在を確かなものとして感じていくということでした。

わたしたちの生命はずっと昔から「つながってきた」ものですが、そのつながりをささえてくれているのは人間以外の生命たちです。“タイマグラばあちゃん”や子どもたちを見ていると、まわりの生命たちと「つながる」ことの楽しさや感謝の気持ちがあふれかえっているのです。
7年間にわたる撮影でカメラがとらえたのは“人間だけで生きているのではない”という忘れがちな事実でした。子どもたちは「人間とほかの生き物」というような区別はしません。“大きな家”の仲間たちは、一緒に今を生きている同じ「生き物どうし」なのです。
 人間が強大な力を持つようになった現在、ほかの生きとし生けるものたちとどのようにささえあっていくことができるのか。
“大きな家”というのは、わたしたちが暮らすこの青い星のことなのかもしれません。
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