小沢昭一「僕の映画史」




「小沢昭一と語り継がれていくその映画」

高度な文明に支えられた現代に、私たちはこれ以上何を望むのでしょう。
このような形を変えた飢餓感が心を巣食う時、ある一滴の清涼が、私たちの内に豊かなものを弾奏することがあります――――小沢昭一は、キラメキとも言える測り知れない潤いを、いたるところに産み落としてきました。

それは、小沢昭一が最も多感な青年期に戦争を体験したことと関係があるのではないでしょうか。
彼は無意味な争いを直接的に非難するよりも、ラジオで聞ける軽妙な語りやハーモニカコンサートといった、その優しくも精力的な活動よって、かけがえのないものの大切さを伝えてきました。
そんな小沢昭一自身がセレクトした今回の作品群は、多くのことを私たちに語ってくれます。それらは、世代を超えて語り継がれていく魅力溢れたものであると同時に、ときに私たちを人間の根源とも言える命題に立ち返らせてくれる力があります。

 予告編@youtube


  各作品の上映タイムテーブル・イベント情報

小沢昭一(俳優)プロフィール
昭和4年東京生まれ。昭和27年、早稲田大学卒業。
俳優座養成所を経て、昭和26年、俳優座公演で初舞台。
以降、新劇と映画・テレビ・ラジオと幅広く活躍し、それぞれの分野で数々の演技賞を受賞。一方、民衆芸能の研究にも力を注ぎ、レコード「日本の放浪芸」シリーズで芸術選奨ほかを受賞。ラジオ「小沢昭一の小沢昭一的こころ」は、放送開始36年目。舞台「しゃぼん玉座」を主宰。近年は「僕のハーモニカ昭和史」で全国的に公演を続けている。
〈昭和の名優:小沢昭一〉
昭和を元気づけていたのは、人情、哀愁、バイタリティといった当たり前のようにある人間の心性でした。これらの主演作で、彼は人間の業に深く寄り添いながらも、ときにケレン味たっぷりに役を演じています。だからこそ湧き上がってくる理屈のいらない感情に、素直に身をゆだねる喜びが、小沢映画には溢れています。
「エロ事師たち」より  人類入門学
1966/製作 今村プロダクション/日活/128分/35mm

監督 今村昌平 
脚本 今村昌平・沼田幸二 
原作 野坂昭如

共演 : 坂本スミ子 中村鴈治郎 ミヤコ蝶々
      西村晃 殿山泰司ほか

エロ写真、ブルーフィルム、妖しい器具…多色の猥雑で生計を立てる裏街道の人間たち。
日本人の性意識を鋭く抉った野坂昭如の処女作を、今村×小沢コンビが完成させた型破りのホームドラマ。

*キネマ旬報主演男優賞ほか受賞
競輪上人行状記 
1963/製作 日活/99分/35mm

監督 西村昭五郎 
脚本 大西信行

共演:伊藤アイコ 南田洋子 小山田宗徳
     高橋昌也 松本典子ほか

娘の腹借り子を産ませ、犬を殺して食いつなぐ、しかも坊主は競輪狂い。色と欲を皮肉った大人の喜劇!嗚呼なんてバチ当たり。こんな映画、今じゃ絶対作れません!本作のために髪を剃った小沢の熱演も当時話題の一つになった。
大当り百発百中 
1961/製作 日活/67分/35mm

監督 春原政久
脚本 山内亮一・藤善平

共演 : 松原智恵子 高原駿雄 田代みどり
     千代侑子 加藤武 由利徹ほか

レコード会社のヘボ作詞家・及川太郎(小沢)の霊感で賭けた馬券がどれもこれも大当り、それを知った愚連隊が彼の才能を資金源にしようと企んで、太郎を監禁する。しかし脱走を試みて、追いつ追われつの大ドタバタ痛快
コメディ。
「経営学入門」より ネオン太平記 
1968/製作 日活/92分/35mm

監督 磯見忠彦 
脚本 今村昌平

共演 : 西村晃 古川潤子 渥美清(特別出演)
      三國連太郎(特別出演)ほか

笑いとペーソスを軽妙な演技で見せた小沢扮するキャバレーの支配人を通じ、人間の自由、特に「家からの、女性からの、性からの解放」を謳った人間ドラマの決定版!桂米朝や小松左京、野坂昭如といった豪華メンバーも見所の一つ。
スクラップ集団 
1968/製作 松竹/107分/35mm

C)1968松竹株式会社
監督 田坂具隆 
脚本 鈴木尚之 
原作 野坂昭如

共演 : 渥美清 露口 茂 奈美悦子 ミヤコ蝶々
      三木のり平ほか

戦後の経済成長を遂げた日本には、高層ビルが建ったと思えば、一夜にして帝国ホテルが崩壊するというスクラップ時代が到来。そこに四人の片付け師“スクラップ集団”が誕生した!まずはサーカスの死んだ巨象の解体から始めるのだが…。
サラリーマン悪党術 
製作 東宝/1968/89分/35mm

監督 須川栄三 
脚本 松木ひろし・須川栄三 

共演 : 団令子 長谷川照子 田中邦衛
      黒沢年男 藤岡琢也 天本英夫ほか

ヌード写真を見ただけで吐き気催すとウソ吹く夫―伊達秋男(小沢)こそオットセイの如き絶倫野郎だ。女房、OL、芸者と、数々の浮気テクニックを披露!といいたいが、事が都合よく運ぶわけもなく…喜劇役者・小沢昭一の真骨頂!

〈稀代のバイプレーヤー:小沢昭一〉
貸本屋、大家、果ては牛乳屋に水兵までも、玉虫色の衣を羽織れば存在感がキラリと光る。日本映画黄金期を時には陰で支えた小沢昭一その人こそは、映画における一級品の潤滑油でもございます。彼がいたからこそ渥美清が、フランキー堺が、石原裕次郎が、森繁久彌がスポットライトを浴び、今村昌平が、中平康が、川島雄三がメガホンを取っていたのです。
にあんちゃん
1959/製作 日活/101分/35mm

監督 今村昌平 
脚本 池田一朗・今村昌平

共演 : 長門裕之 吉行和子 二谷英明
      沖村武 西村晃 殿山泰司ほか

美しく清らかな心の旅を綴った十歳の少女の日記を映画化。感傷的になりがちな物語を、現地ロケを敢行するなどリアリズムに徹し、炭鉱町に生きる人々を見事に活写した今村昌平監督の初期を代表する珠玉の感動大作。
*ブルーリボン賞助演男優賞受賞
かあちゃん
2001/製作「かあちゃん」制作委員会/日活/96分/35mm

監督 市川崑 
脚本 和田夏十・竹山洋 
原作 山本周五郎

共演 : 岸恵子 原田龍二 うじきつよし
      石倉三郎 宇崎竜童ほか

天保時代を背景に、貧乏長屋で暮らす一家。今年、肺炎のため逝去した世界の巨匠・市川崑が全ての女性に捧げた母の物語。「キャスティングが演出の70%」と語る市川監督ならではのキャスティングが本作に豊かさを与えている。
牛乳屋フランキー
1956/製作 日活/84分/35mm

監督 中平康 
脚本 柳沢類寿・西河克己・中平康

共演 : フランキー堺 南寿美子 利根はる恵
      宍戸錠 中原早笛ほか

堺六平太(フランキー)のもと、同僚の新吾(小沢)の姿が見えない。新吾は商売仇のブルドック牛乳店に寝返ったのだった!ミルク売ります恋もする、ペダルを踏めばドジも踏む、牛乳屋フランキーが皆様に爆笑を配達する痛快喜劇!
社長学ABC
1970/製作 東宝/92分/35mm

監督 松林宗恵 
脚本 笠原良三

共演 : 森繁久彌 加東大介
      小林桂樹 関口宏ほか

親会社の大社長に就任することになった大日食品社長の網野参太郎(森繁)は、自分の後任に専務の丹波(小林)を選んだ。その夜から、丹波新社長を相手に社長学入門と称する参太郎独特のお色気学ABCが始まった。
あこがれ
1966/製作 東宝/85分/35mm

監督 恩地日出夫 
脚本 山田太一 
原作 木下恵介 
音楽 武満徹

共演 : 新珠三千代 内藤洋子 林寛子
      田村亮 沢井正延ほか

飯場を転々とする恒吉(小沢)は、七歳になる信子(内藤)を施設に預ける。そこで信子は運命の人、一朗(田村)と出会った。不遇の中で育ちながらも、けがれを知らぬ男女の清らかな恋を描いた、甘く爽やかな純愛大作。
幕末太陽傳
1957/製作 日活/110分/35mm

監督 川島雄三 
脚本 田中啓一・川島雄三・今村昌平

共演 : フランキー堺 左幸子 南田洋子
       石原裕次郎 金子信雄ほか

落語『居残り佐平次』を下敷きに、幕末を駆け抜ける若者の姿を描き出した、川島雄三の代表作にして日本喜劇映画史に残る傑作。日活オールスターが生き生きと演じた幕末青春群像は、現在でも色褪せない存在感をたたえている。
続拝啓天皇陛下様
1964/製作 松竹/94分/35mm
C)1964松竹株式会社

監督 野村芳太郎 
原作 棟田博 
脚色 多賀祥介 山田洋次 野村芳太郎

共演 : 渥美清 桑原富久 久我美子
      佐田啓二 宮城まり子ほか

山口善助二等兵(渥美)はたった一人の友人である王万林(小沢・南田)に散髪を頼み、彼の悲しみも知らぬ顔で入隊していった…。北支戦線から終戦ニッポンを背景に、軍犬つれた珍妙無類の快男児が巻き起こす、爆笑と感動の物語!
フランキー・ブーちゃんの ああ軍艦旗 
1957/製作 日活/74分/35mm

監督 春原政久 
脚本 柳沢類寿

共演 : フランキー堺 市村俊幸 小林重四郎
      大泉滉 中原早苗ほか

フランキー堺、市村俊幸の名コンビがオッカナビックリの水兵生活を演じた爆笑爆笑又爆笑の物語。「鼻唄なぞ唄っちょるそこの新兵!」小沢昭一は二人を怒鳴りつけながらもスッテンコロリンな一等水兵をユーモアたっぷりに好演。
あいつと私 
1961/製作 日活/105分/35mm

監督 中平康 
脚本 池田一朗 中平康

共演 : 石原裕次郎 芦川いづみ 笹森礼子
      吉永小百合 中原早苗ほか

かげりのない若さと愛の問題を、のびのびと描いた文芸大作。級友のさと子を密かに想っていた金沢(小沢)は彼女の結婚式で耳にした安保闘争の喧騒に心を揺さぶられ、自分の心を叩き付けるようにデモの流れへと消えていったが…。
〈特別上映〉
放浪芸シリーズの金字塔にして唯一の映像作品!みなさま御存知の放浪人・小沢昭一が日本各地、そして韓国・インドの放浪芸を訪ね歩いた貴重なドキュメント。
伝統として扱われる以前に、芸能史からこぼれおちていった数々の放浪芸。その無垢の悲しさを地の底から掘り起こしていく姿勢は、時にシャーマンの様相を呈し、見るものに旋律すら与えます。その軌跡を捉えた「新・日本の放浪芸 訪ねて韓国・インドまで」を今回特別上映!
* 1986年AVAグランプリビデオ部門優秀作品賞受賞。
小沢昭一の「新日本の放浪芸」~訪ねて韓国・インドまで~
1986/製作 日本ビクター株式会社/205分(前後半)/*DVD上映


監督・ナレーション 小沢昭一

前半(計83分)
 : 尾張萬歳 <愛知県知多市>、三曲万歳<三重県鈴鹿市>、阿呆陀羅経<大阪市西成区山王>
   ちょぼくり<新潟県佐渡郡>、春駒<新潟県佐渡郡>、猿まわし<山口県玖珂郡周東町>、
   インドの猿まわし<インド・デリー>、熊つかい<インド・デリー>、大道魔術<インド・デリー>
   人形あやつり<インド・デリー>、伊勢太神楽<三重県桑名市>

後半(122分)
 : ナムサダン(男寺党)<韓国>、いたこ<青森市>、
   物売りなど・ソウル街頭風景、ムーダンのクッ(巫女の祭祀)<韓国ソウル郊外>、
   絵解き「源義朝公の最期」(野間大坊)<愛知県野間町>
   絵解き「聖徳太子伝」(瑞泉寺)<富山県砺波郡井波町>
   ボーパその1<インド・ラジャスタン州ジョドプール>、ボーパその2<インド・デリー>
   のぞきからくり「幽霊の継子いじめ」<新潟県巻町>、のぞきからくり「不貞の末路」<佐賀県鹿島市>
   バナナ売り(北園忠治)<佐賀市>

 各作品の上映タイムテーブル・イベント情報