R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.7
2009年のピンク映画たち+鎮西尚一の世界








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2009年に入りついに年間製作本数が54本にまで落ち込んでしまったものの、最後のプログラム・ピクチャーとして灯を点し続けるピンク映画。今回で7回目となる本特集上映では、ゼロ世代最後の年に突如復活した鎮西監督最新作、待望のいまおかしんじ監督最新作、2007年のピンク大賞コンビ加藤義一×城定秀夫作品など5本をベストセレクション!また、鎮西監督の復活を記念して旧作2本の特別上映やスペシャルライブイベントも開催致します!
(直井卓俊/SPOTTED PRODUCTIONS)
企画 : SPOTTED PRODUCTIONS+ポレポレ東中野
提供 : 国映株式会社、新東宝映画株式会社、大蔵映画株式会社、バンダイビジュアル、ソフトガレージ

<上映作品>

2009年のピンク映画たち
「スリップ」
(熟女 淫らに乱れて)

2009|監督:鎮西尚一|脚本:尾上宏高|撮影:鈴木一博|音楽:宇波拓

出演:速水今日子、ほたる、伊藤猛、守屋文雄、沖島勳、立木ゆりあ、内田高子 
製作:国映・新東宝映画・Vパラダイス|提供:国映・新東宝映画

介護士の妻から離婚を迫られたアル中の夫、彼の元カノとその恋人、彼らの周りを行きかう人々……。それぞれが交わったり交わらなかったりする中、夫婦の関係は緩やかに、しかし確実に終わりへと向かっていく。そこには誰かが誰かの人生を横切る瞬間の美しさが焼きついている。すべてを包み込む時間のうつろい、深い緑、バイクと海。その一つ一つがかすかなさざ波を立て、心をふるわせる。(那須千里)


「イサク」

(獣の交わり 天使とやる)

2009|監督:いまおかしんじ|脚本:港岳彦|撮影:鈴木一博|64分

出演:吉沢美優、尾関伸嗣、小島遊恋、古沢裕介、吉岡睦雄
製作・提供:国映=新東宝映画

5年前喧嘩で相手を植物状態に追いやった伊作が故郷に帰って来た。「会って癒しなさい」という不思議な声を耳にしながら。被害者の妹・果穂に会って謝罪しようとするが彼女は……。脚本家・港岳彦による第4回ピンクシナリオ募集入選作を、いまおかしんじが贖罪と性と生に向きあって映画化。イサクとは旧約聖書『創世記』に登場するアブラハムとサラの間に生まれた子の名で「彼は笑う」を意味する。(モルモット吉田) 



「青空 ハルカ・カナタ」

(本番オーディション やられっぱなし)

2009|監督:佐藤吏|脚本:金村英明|撮影:長谷川卓也|60分

出演:夏井亜美、日高ゆりあ、那波隆史、牧村耕次、岡部尚、日野姫
製作・提供:新東宝映画

ちっとも芽が出ない女漫才コンビ、ハルカとカナの友情と恋愛、そしてそれぞれの旅立ちを描いた、ほろ苦い青春お笑いグラフィティ。実力派としての頭角を現しはじめた佐藤吏監督は、彼女らの挫折や苦悩を暖かい眼差しで見据えて、ハートウォーミングな演出にも冴えをみせる。「そんなに弱くないよ、私」と、夢を諦めないヒロイン・夏井亜美の姿は、きっと爽やかな余韻を残してくれるはず。(島田慎一)



「たぶん」

(いとこ白書 うずく淫乱熱)

2009|監督:竹洞哲也|脚本:小松公典、山口大輔|撮影:創優和|60分

出演:赤西涼、かすみ果穂、倖田李梨、吉岡睦雄、なかみつせいじ
製作:ブルーフォレストフィルム|提供:オーピー映画

いとこ同士。女の子ふたり。大人未満の恋とセックス――そんな語り尽くされた物語が語り直されるたびに、竹洞組の映画はますます洗練を深めていく。さりげない会話に織り込まれた、自分をごまかす大人たちの「たぶん」に揺れるヒロインの心。ピュアな彼女の前向きな姿に、心地よく胸を打たれる会心作だ。富士山麓ロケ風景も絶品の、これぞゼロ年代→10年代のプログラム・ピクチャーなう!(島田慎一)



「うたかたの日々」

(壷姫ソープ ぬる肌で裏責め)

2009|監督:加藤義一|脚本:城定秀夫|撮影:創優和|60分

出演:持田茜、藍山みなみ、合沢萌、津田篤、THUNDER杉山、岡田智宏
製作:加藤映像工房|提供:オーピー映画

売れないエロ漫画家の潤二は、同棲相手にも愛想を尽かされ、ソープランドで、再会した高校時代の元カノ・知美と再会してその家に転がり込む。そして少しずつ惹かれ合ってゆく2人だったが…。「偶然」から蘇らんとする恋と、取り返しのつかない現実のカットバックがやがて登場人物たちの背中をそっと押すように着地する物語と、ヒロインを演じた持田茜の天真爛漫な佇まいとシンプルな台詞が胸を打つ改作!(直井卓俊)

【特別上映】 鎮西尚一の世界
12年が長いか短いかはさておき、それだけの歳月を経て鎮西尚一監督は復活した。なぜ沈黙していたのかはともかく、確かなのは撮らなかったという結果のみである。新作どころか旧作さえ満足に観られない状況も追い討ちをかけたが、当人はその間逃げていたわけでも隠れていたわけでもないだろう。
案の定、唐突に発表された最新作『スリップ』に復活の気負いなどは感じられず、実にさらりと撮ったように見える。前作から停滞も飛躍もせず、撮らずに生きてきた時間の延長上にあり、かつ鎮西ワールドの味は健在なのだ。
鎮西映画が見せてくれるのは常に現実の何歩も先をいく表現の豊かさである。そこはあらゆる物事を目に見える形にして動かす楽しみにあふれていて、何でもない行為や出来事、見慣れた世界がキラキラと輝き始める。
かつて黒沢清監督が「われ鎮西尚一を発見せり。」と激励文を寄せた特集上映から15年。観客はいま一度、鎮西監督の映画を通して、この世界が持っている可能性を発見するのである。(那須千里)

<鎮西尚一(ちんぜい・なおかず)プロフィール>
中央大学文学部在学中に黒沢清、万田邦敏の8ミリ作品の影響を受ける。飯泉大、小水一男、廣木隆一の助監督を経て、「ヘビーSEX87・感度良好」(1987/ミリオンフィルム)で監督デビュー。以後、佳作ながら、ポスト・モダンの洗礼を受けた世代を代表する異色のピンク映画やVシネマを監督。その他の代表作に「ホテトル天使 恥辱の罠」(1988/Xces Film)、「女課長の生下着・あなたを絞りたい」(1994/Xces Film)などがある。
「ザ・ストーカー」

1997|監督・選曲・編集:鎮西尚一|脚本:只野薫|撮影: 福沢正典|74分

出演:秦由圭, 長曽我部蓉子, 水橋研二, 斉藤陽一郎, 廣瀬昌亮, 今泉浩一
製作・提供:ソフトガレージ

一人暮らしの女性の留守宅を、マニアックな嗜好の客に貸し出す「鍵屋」の男。彼の裏商売の餌食になる若い女。ストレートなサイコサスペンスのはずだった物語の、ストーキングする者とされる者の位相がねじれたとき、不可解な欲望のシステムが露呈する。これは、欲望の幽霊に取り憑かれた男女の、最恐の怪談だ!最新作「スリップ」までの長い沈黙を前に、空前の境地に達していた鎮西作品が、今甦る。(島田慎一)



「パンツの穴 キラキラ星みつけた!」


1990|監督:鎮西尚一|脚本:ふかやじんいち、鎮西尚一|撮影: 福沢正典|音楽: 京浜音楽社(岸野雄一)|87分

出演::西野妙子、毛利賢一、浅野忠信、遠藤美佐子、大杉漣、天本英世、加藤善博、加藤賢崇、広田玲央名

製作:フィルムキッズ/提供:バンダイビジュアル

避暑地へテニス部の合宿でやってきた女子高生たちと、そこで出会った男の子との淡い思い出。『パンツの穴』シリーズ第5弾は、幸福感あふれる最高のミュージカル映画だった!加藤賢崇が陽気に唄い、浅野忠信(デビュー直後)がハニカミながら一緒に踊り、大杉漣が宝探しに興じ、歌い踊る女子高生たちの横には猟銃を持った天本英世が!!日本のシネ・ミュージカル史上に残る奇跡の映画が35mmで甦る。(モルモット吉田)



「東京のバスガール」
※鎮西監督推薦作品
(したがるかあさん 若い肌の火照り)

2008|監督:堀禎一|脚本:佐藤稔|撮影:清水正二

出演:かなと沙奈、速水今日子、青木りん、吉岡睦雄、下元史朗、川瀬陽太|64分
製作・提供:国映=新東宝

才人・堀禎一が闊達なる手腕を存分に発揮した幸福なる一編。真夏の一軒家を舞台に、義理の息子と過ごす若い未亡人の日々をみずみずしいタッチで描く。薄着の女性が微笑みながら家事をこなす。それだけで充分に「映画」なのだ。『スリップ』を堪能した者ならば、誰もが感嘆と歓喜の声をあげるはず。ルノワールのエロスを受け継いだのは、日本製ピンク映画の監督たちなのだ。(港岳彦)


     
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