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<キャスト>
鈴木寅二啓之
鈴木邦江
鎌田東二
(京都大学こころの未来センター教授)
龍村仁(映画監督)
森口真樹(猿田彦神社権禰宜)
谷悟(大阪芸術大学芸術学部准教授) |
UDA
藤田一博
高崎俊喜
中村大成
大西信生
猿田彦神社の方々
猿田彦大神フォーラムの方々
稲葉製綱株式会社の皆さん |
株式会社伊藤工務店の皆さん
日本ボーイスカウト伊勢第五団の子供達
伊勢市進修小学校の子供達
大阪芸術大学の生徒の皆さん
神社近隣の方々
ナレーター 須田真己 |
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<スタッフ>
監督 : 並木浩士
プロデューサー : 鈴木邦江
台詞・撮影・編集 : 並木浩士
撮影 : 庄司賢 飯田亜衣 |
企画制作 :
美術学舎・アトリエ魚七
アンダー・ウォーター・ヴィジュアル株式会社
宣伝美術 本田宏一
記録写真 小熊栄 |
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<作品概要>
美術家、鈴木寅二啓之の絵画作品は和紙に特殊な墨で描き、それを100日程度土に埋めた後再び掘り出すという独特な手法で生み出されます。土にゆだねられた絵画は、地中のバクテリアなどにより更に特殊な絵柄を獲得し再びこの世に出現します。鈴木寅二啓之はこれを「土中絵画」と呼び“天と地を結ぶ絵画”として長年この手法にこだわってきました。
2008年、伊勢・猿田彦神社の境内に祀(土中神社)を建立し、その天井に土中絵画を掲げ奉納するという美術プロジェクトが行われました。舞台となった神社には古事記の「天孫降臨」の場面で天と地をつないだ啓行き(みちひらき)の神、猿田彦大神が祀られています。
この神が担う役割と重なり合い、響きあいながら鈴木寅二啓之の独特な美術制作は2008年4月から本格的に始まりました。その過程は、美術制作を超えた壮絶な土との格闘であり、また“祈り”そのものとも言える厳しくも深い作業となりました。そこに地域の子供達や多くの人の力が集結し土中神社制作は進みます。
一人の美術家のプロジェクトを通して多くの人々との関わりが生まれ、そのことは神社というものがコミュニティの中心として存在していることを改めて感じさせるものとなりました。
2008年10月12日、猿田彦土中神社は奉納舞〜啓行神楽〜(振付・舞 鈴木邦江)と共にお披露目となり、人々を迎え入れることで新たなみちをひらき始めます。
このドキュメンタリーは、奉納が行われるまでの「猿田彦土中神社プロジェクト」の全記録です。多くの人の思いと力を集約した“天と地と人を結ぶ”ものとして、また自然と人とが織り成す慎み深さの結晶としても印象深い瞬間をとらえた作品として完成しました。 |
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<解説>
天と地をつなぐことに深いこだわりを持って活動してきた美術家鈴木寅二啓之。
自然の循環が乱れ、天と地の調和が崩れつつある現代に向け鈴木が投げかけるこの美術活動の役割は大きい。
舞台となった伊勢・猿田彦神社の聖域に漂う空気をもとらえた監督並木浩士の映像からは、境内奥に広がる御神田(おみた)と雑木林にひっそり息づく生命の全てがこの「神事」を見守っているかのような印象を与える。
これは10年計画のうちの始まりであり、その第一歩から見るものを共に鈴木寅二啓之の日本冒険への旅に誘うであろう・・・
世界に誇る”生きるための哲学”日本神話の世界観をも垣間見せる映像作品。 |
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主神 猿田彦大神 相殿 大田命
猿田彦大神(さるたひこおおかみ)は天孫降臨の時、天八衛(あめのやちまた)に待ち迎えて、先導=啓行(みちひらき)をされ、天孫を高千穂へと導いてから、天宇受売命(あめのうずめのみこと)に送られて伊勢の五十鈴の川に鎮まりました。ここを中心に広く国土を開拓指導された地主の神です。
また大神の御裔の大田命(おおたのみこと)は、皇女倭姫命が神宮御鎮座の地を求めて巡歴されたときに五十鈴の川上の地をたてまつり、伊勢の神宮が創建されたと伝えられています。
大田命の子孫は宇治土公(うじのつちぎみ)と称し、神宮に玉串大内人として代々奉職したが、その宇治土公が邸宅内の屋敷神として祖神の猿田彦を祀っていました。
明治時代に入り、神官の世襲が廃止されることになって、屋敷神を改めて神社としたのが猿田彦神社です。猿田彦神がニニギの先導をしたということから、交通安全・方位除けの神社として信仰されています。
境内社 佐瑠女(さるめ)神社境内には、天降りの際に猿田彦神と応対した天宇受売命(
あめのうずめのみこと)を祀る佐瑠女神社(さるめじんじゃ)が猿田彦神社の本殿に向かい合うように建っています。天照大神が天岩窟の中に入ってしまわれて世の中が荒れ暗闇の様に成った時に、天宇受売命が岩戸の前で舞踊をされ、神々が大へん喜び拍手をする様子に天照大神が不思議に思って岩戸から出られ、元の平和な世の中になったという神話は有名です。そうしたことから、天宇受売命は「わざおぎ」(俳優)の神、「たましづめ・たまふり」(鎮魂)の元祖と称えられ、芸能の神として信仰されています。 |
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<猿田彦土中神社 讃>
この美術プロジェクトは土と微生物たちの関わりから生まれた「土の神事」である
鎌田東二 京都大学こころの未来センター教授
「土中神社」それ自体、大地の生成力に根ざしたファンタスティックな生きたアート・アクションであり、生命のミステリー・ゾーンとしての神社のディープ・エコロジーを表現する大胆な芸術行為にして「神事」。魂の芸術の始まりである。
龍村仁 「地球交響曲」映画監督 |
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<監督コメント>
土中神社プロジェクトについて −−−−− 鈴木寅二啓之
神殿の天井に掲げたその“絵”は、天空に無限に偏在する宇宙の意志と大地を結ぶメディアとなった。
地上に遺った目に見える“絵”と、土に還った目には見えない絵は共に響き合いながら鈴木の「祈り」を未来の全ての生命に届けてゆくだろう。
私の創造の基は大地である。
私の故郷(静岡・磐田市)では日常生活の中に八百万神(やおよろずのかみ)が存在する。
朝晩は家の神棚にお参りし、庭の“地の神様”にお参りして、ご先祖様の仏壇に手を合わせる。この様な環境で育った私にとって、神は全てのものに宿るという思考はごく普通の事でありました。
そんな私は十五歳から本格的に美術表現をはじめ二十代に入ると縄文時代に強くひかれ、その世界を絵画で表現しようとしていました。縄文人は土偶や火焔土器にみられる様な力強さもさる事ながら生活に於いて常に大地への畏敬の念を持ち、大地との循環を意識していたと考えています。それは、食生活・住居つくり・呪術のすべてにわたってその循環の意識と意志が感じられます。
この縄文時代(紀元前1万3000年〜紀元前900年)頃から日本の地をまもるとされてきた神々が“国つ神”であり、猿田彦大神はその国つ神の中でも稀有な存在として親しまれています。猿田彦大神は八俣(やちまた)の神として、天と地の境にいてそれを結んだり、大地を司る方位の神としても有名であり古事記の「天孫降臨」の場面では“天つ神”の一行を豊葦原の瑞穂の国(日本)に案内する先導役をするなどと大地を基とし様々な媒介として存在する調和の神です。
私は猿田彦大神の調和の意を、美術という形で表現できないかと考え猿田彦大神フォーラム〜みちひらき助成〜に提案し、故宇治土公貞明猿田彦神社宮司の大変なご理解を得る事が出来ました。
そして2008年10月12日、伊勢・猿田彦神社の境内(本殿裏御神田脇)に奉納
鈴木寅二啓之作品として「猿田彦土中神社」及び奉納舞〜啓行神楽〜を行う美術プロジェクトが実現したものであります。
これは美術を媒介として人と人が繋がり、天と地と人が結ばれ美しい調和が生まれるであろうことを望むものであります。 |
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<プロフィール>
鈴木寅二啓之(すずきとらじひろゆき)
1966年静岡・磐田市生まれ 美術学舎代表・アトリエ魚七主宰
墨・紙・顔料・土・バクテリアを用いた独自の手法で制作し、神社や森での野外インスタレーションなどで自然との融合を試みる。15歳より本格的に美術表現を始める。1984年より美術表現とともに様々な教育機関で美の表現教育に携わり教務長・学校長を歴任。2006年より寺子屋私塾【美術学舎】を開校、美術表現者の育成と美意識の向上に努めている。
鈴木邦江(すずきくにえ)
様々なダンスの場を経て1996年に独立、同年よりソロダンス公演を定期的に開催。以降、自主公演と並行してダンスフェスティバルや外部作品にも出演。2000年第1回大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ参加を機に、他ジャンルのアーティストとの活動にも精力的に取り組む。2002年より海外での活動の場を拡げ、これまでにモントリオール、イタリア、ニューヨークなどで公演を行う。
監督 並木浩士(なみきこうし)
1962年横浜市生まれ。
1983年横浜放送映画専門学院卒業。舞台とビデオプログラム制作を開始する。
1985年構成・演出を担当した、障害児言語指導ビデオとドキュメンタリー「わたしのああなたのア」(詩:谷川俊太郎
出演:波瀬満子 制作:太郎次郎社)が障害者教育の現場で大変な話題となる。1986年1990年、演出を担当した児童劇「やってきたアラマせんせい」(谷川俊太郎原案、波瀬満子共同演出)が厚生省中央児童福祉推薦文化財受賞。1992年、パルコ劇場で公演された日本語パフォーマンス舞台作品「ぱあぷるとんかち」(
台本:谷川俊太郎制作:九條今日子)の演出担当。
1995年以降、CS放送CATV局中心の番組制作、舞台イベント等の映像演出を開始。
1998年高齢者福祉をあつかったドキュメンタリー番組「天まであがれ」(構成演出担当、CTN放送)が話題に。
2003年映像による公式記録を担当した「2003年FIFAワールドカップ・パブリックビューイング」がカンヌ国際広告祭グンプリ受賞。2006年よりオーストラリア等で行われる南半球最大の格闘技イベント「エクスプロージョン」の映像演出、世界放送の番組制作を担当。2009年カンボジアで行われている地雷除去活動「クリアランドプロジェクト」の公式映像など、現在国際的に活躍している。 |
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