「堀川中立売」公開記念!
<特集 シマフィルムの軌跡>


柴田剛の最新作『堀川中立売』公開を記念して、シマフィルムが所蔵する作品群を一挙公開!
映画好きが高じて数々の話題作を製作・配給するまでなった建設機械業社・志摩機械=シマフィルムの全貌が明らかに!



タイムテーブル

組む監督は、相米慎二、森崎東、若松孝二、そして柴田剛。
扱うテーマは障害者、在日、やくざ、尊属殺人というディープでややこしいものばかりだけど、熱狂的なファンも多く、国内外の映画祭では高い評価を受けている。
シマフィルムを率いるのは、志摩敏樹。京都・舞鶴での土建業の傍ら、映画への出資から始まり、製作、配給、そして映画館の運営までを、全て京都をベースに行っている映画狂人。本人曰く、ただの映画好き。
これからの映画界、否、日本社会に必要な<個人の強さ>を持つ男、志摩が関わった作品7本を、志摩が惚れ込んだ監督・柴田剛の最新作『堀川中立売』公開を祝い、一挙上映。
未来のクラシックになるであろうシマフィルムの作品群を見逃さないで欲しい。
(ポレポレ東中野支配人 大槻貴宏)
上映作品
風花
(c)ビーワイルド/テレビ朝日/TOKYO FM
2000年/116分/35mm/配給:シネカノン

監督:相米慎二

出演:小泉今日子、浅野忠信、麻生久美子 他
音楽:大友良英
製作協力:志摩敏樹

故郷に残した一人娘に5年ぶりに会いに行く風俗上・ゆり子と、酔った勢いからドライブに付き合うことになる謹慎中のキャリア官僚・廉司。ゆり子は親の反対から娘に会うことが出来ず、廉司もまた上司から一方的な解雇を告げられる。帰る場所も無い二人は一路、北へと向かう。名匠・相米慎二が最後に撮ったのは大人のラブストーリーだった。
NN-891102 *インターナショナルバージョン(英語字幕入り)

1999年/75分/16mm/製作:D.M.T/配給協力:シマフィルム

監督:柴田剛

出演:長谷川隆也、西田有祐、角谷悠 他

1945年8月9日11時02分、長崎に原爆投下。防空壕の中で、奇跡的に命を取り留めた少年・音無零一。以後、零一は、原爆投下時に体感した爆音の再生だけを夢み、55年の生涯を費やす。そして、2000年8月9日11時02分。零一はついに、爆音の再生を果たす…柴田剛監督による衝撃作!

<コメント>

「トラウマ転じて福となせ!」それが映画の主題だ。
一方では、世のトラウマ・ブームに対する辛辣な批評になるが、他方では、人を傷つけて「力を奪う」社会の中で、にもかかわらず人が「力に貫かれる」ための逆転満塁ホームラン的方法を示
唆しているとも言える。」
(宮台真司/社会学者・評論家)
「独創性に満ちた発想と語り口。『NN-891102』には、大きな開花を期待させる種子が詰まっている。柴田剛、かなりいい」
(山本政志/映画監督『闇のカーニバル』『ロビンソンの庭』)
過去十年、『映画』自体への実験と冒険を忘れていた独立プロ作品群の中、久方ぶりにドエライ闇の輝きを放つ映画が現れた。
私は柴田君(監督)が何を企み、且つこれから何を狙っていくのか、底知れぬ興味を抱かせられた。だから柴田君には、是非、何がなんでもその企みを極めて欲しい!
私は、この映画を観ることができて、本当に、とても、嬉しい。幸せだ。ありがとう。
(松井良彦/映画監督・『追悼のざわめき』)
発想は強烈な爆発。しかしこの監督はそれを単なる初期衝動のみで突っ走らずに、豊かな想像力と丁寧な映像の積み重ねによって描いた。ロマン溢れるラストシーンには本気で鳥肌が立った。
(熊切和嘉/映画監督『空の穴』『ノン子、36才』)
ニワトリはハダシだ
(c)SHIMA FILMS/ビーワイルド/衛生劇場
2003年/114分/35mm/配給:シマフィルム
★第55回芸術選奨 文部科学大臣賞受賞、★第54回ベルリン国際映画祭フォーラム部門出品

監督:森崎東

出演:肘井美佳、倍賞美津子、原田芳雄、石橋蓮司、加瀬亮 他
製作総指揮:志摩敏樹

知的障害を持つ少年サムは、人並みはずれた記憶力を持っている。しかし、その能力が災いして偶然にも警察の汚職事件に巻き込まれる羽目に陥ってしまう。権力を盾にサムを犯人にしたてようと目論む人々から彼を救い出そうと、一緒に暮らす父、在日朝鮮人の母、そして養護学校の教師までもが、体を張って事件の謎に挑んでいく!笑いあり!涙あり!怒りあり!森崎映画の真髄!

<コメント>

昨年私の見た映画ベスト1は、イーストウッドの『ミスティック・リバー』と並んで、森ア監督の『ニワトリはハダシだ』でした。理由は簡単です。その二本ほど<真の映画>とはこういうことだ、と教えてくれる映画は、今年にかぎらずここ数年お目にかかっていなかったからです。
娯楽も芸術も、古典も現代も、創造も破壊も、民族も個人も、宴会も孤独も、左も右も、愛情も憎しみも、とにかくすべてがキャメラの前で平等に運動=疾走に還元されることを<真の映画>と呼ぶとしたら、『ニワトリはハダシだ』こそ、その名に値する二十一世紀最初の、そして唯一の日本映画だ、と断言します。
倍賞美津子氏が包丁二刀流を構えた瞬間、背中に電撃が走り、僕は心の底から号泣しました。あの瞬間、『ニワトリはハダシだ』はあれほど好きだった『党宣言』を超えてしまった。しかし、ただただああいう経験がしたいからこそ、僕は映画を見続けてるんです。とくに森ア映画を!
森ア監督、次の映画はいつですか?!
いますぐ見せてください!!!
お願いします!!!
青山真治(映画監督『ユリイカ』『サッド・ヴァケイション』)
おそいひと
(c)SHIMA FILMS
2004年/83分/35mm/配給:シマフィルム
★第5回東京フィルメックス・コンペティション出品

監督:柴田剛

出演:住田雅清、とりいまり、堀田直蔵 他
音楽:world's end girlfriend、バミューダ★バガボンド
製作:志摩敏樹

電動車椅子で移動し、ボイスマシーンで会話を交わす重度身体障害者・住田の元に、卒論のために介護を経験したいという敦子が現れる。その日から、住田の中で違和が蠢き、混沌とし、次第に狂気に身を委ねていく。そして、ある一つの決心をするのだが…。センセーショナルなテーマのため日本映画界から封殺されつづけてきた問題作。狂気を孕んだモノクローム映像と、耳から離れないノイズミュージックは観る者の身体から鮮烈なカタルシスを放出させる。

<コメント>

始まってすぐに映像の美しさに圧倒され、次いで主演・住田の存在感に引き込まれ、やがて監督・柴田の眼差しの繊細さに出くわして幾度となく言葉を失い、劇中の「小池」に黙祷しつつも、最後はこっちの気持ちを丸ごともって行かれた。もしあなたが、この美しい傑作を観る直前までの私と同じく、「不必要な過激さを盛り込んだ障害者モノではないのか」と警戒しているのなら、そういうあなたや私の力みの正体が何であるのかを、『おそいひと』は涙とともに教えてくれるかもしれない。
(モブ・ノリオ/作家『介護入門』)
これはわるいえいがだっ!!!
(加瀬亮/俳優)
ハッピーバースデー住田“トラヴィス”雅清さん
是非死刑となって あなたの自由を完成させて下さい。
(新井英樹/マンガ家『宮本から君へ』『ザ・ワールド・イズ・マイン』
17歳の風景 少年は何を見たのか
(c)SHIMA FILMS
2005年/90分/35mm/配給:シマフィルム

監督:若松孝二

出演:柄本佑、針生一郎 他
脚本:山田孝之・出口出・志摩敏樹
音楽:友川カズキ
プロデューサー:志摩敏樹

母親を殺害した少年は、己の過ちから身を引き剥がすようにして、ひたすら自転車で北へと向かった。旅の先々で出会った大人たちの声にただじっと耳を傾ける少年。さらに北へ、もっと遠くへ・・・。若松孝二(「キャタピラー」)以外には決して撮ることの出来ない独自のモチーフと手法が際立つ作品として、今も異才を放ち続ける一本。

<コメント>

岡山で母親をバットで殴り殺した17歳の少年が自転車で逃走し、16日後に秋田で逮捕されるという事件があった。父親ではなく、母親を殺したということにショックを受けて、そんなことをなぜしたのかと考えてみたけれど解らない。親殺しや少年犯罪は80年代から金属バット殺人事件や酒鬼薔薇事件など、似たような事件は起きていて、時代や社会の問題だとは一概には言えないし、最も引っ掛かった、疑問に思ったのは少年はなぜ北に向かったのか。16日間で1300キロ、自転車で一日100キロ近く走るには相当なエネルギーがいるし、北に向かったのは死に場所を探していたのかもしれないが、それが確かな理由なのかどうか。そんな風に考えているうちに、少年と一緒に旅をしたいと思うようになったのがこの映画の始まり。そして、自分達はなぜ、今、ここにいるのかと、目の前の風景と対話する映画を撮ろうと思った。
(若松孝二/映画監督『キャタピラー』)
かぞくのひけつ
(c)SHIMA FILMS
2006年/83分/DV/配給:シマフィルム=第七藝術劇場
第47回日本映画監督協会新人賞

監督・脚本:小林聖太郎

出演:久野雅弘、秋野暢子、桂雀々、ちすん、谷村美月 他
企画・製作:志摩敏樹

オンナ癖の悪い父、嫉妬深い母。息子の賢治は大人たちの板挟みに。恋人・典子も優柔不断な賢治にイライラ。果たして賢治の恋の行方は?家族の崩壊は止められるのか?私たちの身近なところにある“家族”と“恋”という問題。当たり前のことも思春期の賢治にとっては初めての人生の岐路だった。なんでみんなツラい思いをしながら、一緒になろうとするんだろ?悩め、頑張れ、賢治!!
尻舟 
(c)尻舟(Butt Boat)
2009年/82分/DV/配給代行:シマフィルム

監督・脚本:宮本杜朗

出演:石井モタコ(オシリペンペンズ)、DODDODO(DODDODO)、和田シンジ(巨人ゆえにデカイ、DMBQ)

ホノルルでギターを拾った小林は「バンドやらへん?」と旧友の村越を訪れる。一方、路上でお尻の絵を描きながら生活している村越はある日、裸で寝そべるホームレスの木谷麻子の尻を見つける。それは村越の理想の尻だった。その頃、小林は地球爆破軍のバンドメンバーを探して街を彷徨っていた…昨年たった一週間だけの上映にも関わらず、多くの熱狂者を生んだ『尻舟』がポレポレのスクリーンで甦る!

<コメント>
関西、特に大阪のアンダーグラウンドな音楽は1970年代以降、常に斬新で世界最高峰の異端であり続けている。その底抜けの深さは絶望も希望も、悪意も愛も同意だ。この独自のパワーを映像化できる監督/宮本杜朗がようやく現れた。メディアやネットが語る世界などまるで嘘っぱちで、グッチャグチャな現実こそがリアルな生であり、そこにしか本当の愛や命なんてないのだ。この「尻舟」は映像と音楽と俳優と一瞬の奇跡で、これでもかこれでもかと濃厚で美しい異形の夢を見せつけてくる。この汚濁の中にしか新しいものはなく、ノイズの向こうにしかその場所はない。「尻舟」の向こうにあるのは豊穣で新しい映画への一筋の光明である。
(JOJO広重/非常階段 etc)

DODDODOの裸の背中がたまらん
(いまおかしんじ/映画監督『たまもの』『おんなの河童』)

ムラムラした。だから俺は観た後、尻の絵が描きたくなって実際ノートに描いた。でもだめだった。一人だと良いのが描けない。恋人の尻を描く、こんな恋の時代にしか描けへんのだわと思った。だからか知らんけど後で涙でた。
(岡太地/映画監督『トロイの欲情』『屋根の上の赤い女』)


     
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