わたしたちの夏
Summer for the Living

21世紀。ひとは、どんな森をさまようのか。
©2011 tough mama

2011年/日本/HD/カラー/89分


<出演>
吉野晶 

小原早織 

鈴木常吉

千石英世 
松本雅恵
川野真樹子 
籾木芳仁 
小林賢二 
河野まりえ 
室野井洋子 
木太仁美 
西山雄二 
赤塚若樹
福間澄子 
高本教之 
海老沢友 
武田哲郎 
小原治
<スタッフ>
製作:福間恵子

監督・脚本:福間健二

撮影:鈴木一博  

編集:秦岳志
音響設計:小川武
助監督・記録:西野方子
助監督・録音:細谷周平
助監督:武石文明 山形佳右
      岡田泰 澁野義一
製作助手:細野麻季
美術:立花信次
音楽協力:雨宮史崇 吉田孝之
絵画:ニール・ハウェルズ
千景の写真作品:鈴木一博
スティール:酒井豪
脚本協力:雨宮史崇
英語協力:マイケル安井
宣伝:加瀬修一(contrail)
宣伝美術:則武弥(ペーパーバック)

製作・配給:tough mama
<概要> 
わたしがずっと見たかったもの。わたしは、ついにそれを見た。
一見、凛とした大人の女性。幸でも不幸でもない日常を、街の片隅で生きる。その内にある戸惑いを隠して、泣いたり、叫んだりできない。「わたしたちはいくつになっても迷い、いつだってそこに急にたどりついてしまう」。きっと誰もが、そんな見知らぬ土地に置き去りにされたように生きている。でも忘れないでほしい。この世界には、甘く、美しい「蜜」があるということを。『岡山の娘』から3年。詩人・福間健二が静かに語りかける、「いま」を生きることの大切さ。この夏、「わたし」から「わたしたち」へとつながる物語が始まる。

主人公・千景の揺らぎを演じるのは、瀬々敬久監督『汚れた女〈マリア〉』(98)以来の主演作となる吉野晶。その千景の元恋人・庄平を、TVドラマ『深夜食堂』のオープニング曲「思ひ出」が話題になった歌手の鈴木常吉、その娘・サキを新人の小原早織が演じます。スタッフには、撮影を『ヴァイブレータ』『blue』『あしたの私のつくり方』などの鈴木一博、編集に『エドワード・
サイード OUT OF PLACE』『チョコラ!』などの秦岳志、音響設計には『ぐるりのこと』『マイ・バック・ページ』などの小川武が参加。強烈な光と影、いのちの脈流、あざやかな緑、戦争と死者を思い出す日本の夏。半世紀もの間、詩と映画に生きてきた福間健二のヴィジョンが、最高のチームを得てついに実現した。
<ストーリー>
東京の郊外に住むアラフォー世代の千景(吉野晶)。自然雑貨の店で働きながら、写真を撮っている。
2009年の夏、千景の働く店に、かつて一緒に暮した庄平(鈴木常吉)の娘サキ(小原早織)が現われる。千景は庄平とも再会し、ふたたび親しくなるが、大学生のサキはそれを納得しない。
友人の家に居候していた庄平は、千景のところに引っ越してくる。サキのことを気にしながらも、つかの間の幸福を感じる千景。
しかし、庄平には危険な影が迫っていた。その1年後、別々の人生を生きる千景とサキに「わたしたちの夏」が訪れる……。
<『わたしたちの夏』への言葉>

正直、ラスト30分の凄さには圧倒された。映像と音を獲得し血肉となった映画は人間と同じように生々しい。福間健二の最高傑作。いや、福間さんはまだまだ映画を作っていくことだろう。でもこれを越えるのは相当難しい。福間さん、今まで映画を作り続けてきて本当に良かったね。
瀬々敬久(映画監督)

女の汗も男の涙も、この世の言葉もあの世の光も、揺れる葉もペットボトルの水も、すべてが等価な夏……わたしたちの夏。福間健二の新作はそんな「夏の映画」であり、そんな「わたしたちの映画」だ。世界を見つめるように、見つめるべきだろう。そして、聴くべきだろう。すべてただ等しくあるものたちの氾濫を。
安藤尋(映画監督)

これは動く油絵だ!中平卓馬の『なぜ植物図鑑か』を彷彿させる。コマの前後に織りなす映画的人間模様などは、シナリオに書くほど無意味であろう。千景の裸は美術館の中を走るキッチュなオブジェ。 サキの瞳、庄平の涙はチューブからハミ出た絵の具。 音楽・撮影・編集の三位一体の映像は近年観たことがない。日本にもゴダールがいたとは……。
杉村重郎(アニメプロダクション勤務)

エンディングロールに捲かれながらひとつふたつ、声が聴こえた。劇中に朗読され皮膚に刺さる「きみたちは美人だ」という声を捩り、言葉というものであることへ果敢な文字の大きさと小ささが影として重なり、ひとつにみえた。そこに体温があり、かつて形があり、もういちど歩くことのなかったひとりや、あなたのために手を触れて伝える声を、聴いたのだろう。地の芯が熱くなる。
藤原安紀子(詩人)

福間健二の映画に出てくる人間は男女を問はず全員ニートだ。それは是非もなくいいものだ。彼らの輪の中にいると、ふと、違うことを考えていたり、何かを発見したりする。街灯やお祖母ちゃん家の庭やディラン・トマスの詩集に心を奪われて、気が付くとプールや教室や公園で、彼らの傍らに突っ立っていたくなる。                      
鎮西尚一(映画監督)

※他、コメントは公式ブログ http://tough-mama.seesaa.net/ にて公開中。
<プロフィール>
福間健二(監督・脚本)
1949年、新潟県生まれ。都立大学在学中に16ミリ作品『青春伝説序論』を高間賢治の撮影で監督する。同時に詩を書きはじめ、現代イギリス詩の研究者としての道を歩みながら、詩と映画への情熱を燃やしつづけた。89年、詩と映画をメインとする雑誌「ジライヤ」を創刊。このころから詩が大きな注目をあびるようになり、映画批評と翻訳でも活躍する。首都大学東京教授。
95年、劇場映画第一作『急にたどりついてしまう』を発表。08年には『岡山の娘』を発表し、若い世代の映画作家・批評家たちから熱い支持を受ける。詩論集に『詩は生きている』(05)。詩集に『きみたちは美人だ』(92)、『旧世界』(94)、現代詩文庫版『福間健二詩集』(99)、『秋の理由』(00)、『侵入し、通過してゆく』(05)など。映画関係の本として、『石井輝男映画魂』(92)、『大ヤクザ映画読本』(93、山﨑幹夫との共編著)、『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』(96)など。『わたしたちの夏』の公開と同時期に新詩集『青い家』が出る。

吉野晶(出演/佐藤千景役)
1969年、埼玉県生まれ。国立音楽大学卒業後、ワークショップなどで演技を学ぶ。98年、瀬々敬久『汚れた女〈マリア〉』でデビュー。実話をベースにした瀬々ワールドで、バラバラ死体事件の犯人である人妻役を好演した。主な出演作に、NHKドラマ『幻のペンフレンド2001』『Deep Love アユの物語』、鈴木卓爾『パルコフィクション』(02)、廣木隆一『きみの友だち』(08)などがある。
今回は、短い準備期間のなかで福間監督と打ち合わせを重ねて、役作りを工夫。アラフォー世代のヒロインのカッコよさと不安を見事に演じきった。2011年1月に撮影された福間監督の次回作『あるいは佐々木ユキ』にも出演している。

小原早織(出演/立花サキ役)
1989年、福岡県生まれ。小学校卒業まで福岡を転々とし、その後大阪に6年間、そして首都大学東京入学を期に東京へ。小学生のころから〈役者になること〉を夢見る。06年、NHKの朝の連続ドラマに出演。大学では「表象」を専攻。演劇の勉強と、サークル「final flash」でのダンス中心の生活を送る。現在、フランスに留学中。猫とウミウシを愛し、趣味はダンスと昼寝とスキューバダイビング。
2010年、福間監督の授業「映像論」を受講。その前に話をする機会があり、監督はそのときから自分の作品に出てもらいたいと思っていた。今回が初めての長編映画出演。次回作『あるいは佐々木ユキ』では主役を演じている。

鈴木常吉(出演/立花庄平役)
80年代にバンド「セメントミキサーズ」にヴォーカル/ギターで参加。89年、伝説のバンドオーディション番組TBS「イカ天」に出場して3週勝ち抜き、注目を集める。「セメントミキサーズ」は90年にアルバム『笑う身体』でメジャーデビュー。その音楽性が高い評価を得たが、アルバム1枚を残して解散。91年、バンド「つれれこ社中」にヴォーカル/アコーディオンで参加。そのアルバム『雲』は、ビートたけし、高田渡、早川義夫、忌野清志郎らに絶賛された。2000年、「つれれこ社中」活動中止。06年、初ソロ作『ぜいご』をリリースする。そのなかの「思ひ出」が、09年、TBS放映のテレビドラマ『深夜食堂』でオープニング曲として使われ、大きな話題を呼んだ。2010年、セカンド・ソロアルバム『望郷』をリリース。そこから、「アヒル」と「ウィスキー・ブルース」が、『わたしたちの夏』の挿入歌とエンディングテーマとして使われている。映画出演作に、山﨑幹夫『PU プ』(94)、坪川拓史『美式天然』(05)、鎌田千賀子『女子女子over8 月照の歌』(08)などがある。
福間監督は、常さんの文学青年+パンクぶりに感動して、ライヴを追いかけ、『岡山の娘』を見てもらい、次に撮るときは出演するという約束をとりつけていた。
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