ヤカオランの春−あるアフガン家族の肖像
The Spring of Yakaolang: An Afghan Family’s Voyage towards Hope


やがて教師は語り始めた。
封印された暗い過去の秘密を、
故郷で起こった衝撃の真実を―。


2004年/日本/ドキュメンタリー/DVカム/スタンダード/カラー/83分


平成15年度東京ウィメンズプラザ民間活動助成対象事業
文部科学省選定(少年向、青年向、成人向)
日本ペンクラブ推薦


企画・制作・監督
取材・写真
脚本・編集
撮影
音楽
録音・効果
 川崎けい子、中津義人
 川崎けい子
 中津義人
 堀田泰寛 JSC、川崎けい子
 吉田哲、児島由美
 福田 伸、瀬谷 満
   モノローグ
ダリ語翻訳
ダリ語朗読
 高塚 玄
 駿渓トロペカイ
 駿渓ナーデル

制作:「ヤカオランの春」制作の会
制作協力:RAWA(The Revolutionary Association of the Women of Afghanistan)

配給:パイオニア映画シネマデスク

内戦の激戦地、ヤカオラン。
美しい大地は血で染まり、人々は悲しみに沈んだ。
アリ・アクバル、タジワール夫妻は、生きるために故郷を逃れ、難民となった。
そして、自らの人生を子どもたちに語り始めた。
平和を希求する人々へ、
あるアフガン家族からのメッセージ。
<イントロダクション>
アフガニスタンは、建国以来、イギリスやロシア、アメリカなどの大国、さらに隣国イランやパキスタンなどに翻弄され続けました。1979年のソ連の侵攻、そして十年後の撤退、さらにその後も続く内戦、過激なイスラム原理主義の台頭、タリバン支配、9.11以降の米軍攻撃まで激動の渦に中にありました。その結果、やむなく国を逃れる難民も絶えることがありませんでした。そして戦いと難民が日常化してしまったこの国はやがて、世界から忘れられた国となりました。

 こうした状況に対して、多くのアフガニスタン人は言います。「戦争前は、平和でよかった」と。しかし「平和でよかった」と思われた時代に重大な問題があったから、戦争をまねいたのです。多くの人々が漫然と「平和」だと思っている間に、問題が悪化し、気がついたときには戦争に突き進むしかなくなっていたといえるでしょう。それは日本の現在とも重なり合う状況なのです。

 アフガニスタン内戦の原因は、何だったのでしょうか?そして、なぜ、20年以上も戦いが続いてしまったのでしょうか?長期にわたる戦争は、社会や人々に何をもたらしたのでしょうか?
 アフガニスタンでは長い間、女性は男性に従って生きるものとされ、多くの女性は読み書きを学ぶことすら許されませんでした。それは、力の強いものが支配し、服従を強いる社会でもありました。こうした社会のありようが、内戦の一因だったのではないかと思います。

 アフガニスタン内戦の原因が、今なお未解決であるなら、再び同じ悲劇を繰り返すことになるかもしれません。
 アフガニスタンに悲劇をもたらした原因が何だったかを見つめることで、「平和」に潜む罠の存在を提示したいと思います。そして、アフガニスタンや日本、世界の国々で、同じ悲劇を繰り返さないために、わたしたち一人一人に何ができるのか、何をすべきなのかを考えるきっかけになればと願い、「ヤカオランの春〜あるアフガン家族の肖像」を制作しました。
戦争に翻弄された一人の教師とその家族の壮絶な半生。
ヤカオランの大地で教師として生きようと決め、家族とともに暮らす夢を抱き、祖国を担う子どもたちの教育に人生を捧げようと、その一歩を踏み出した時・・・・・。
<ストーリー>
2003年春、パキスタン・ペシャワール郊外のアフガン難民キャンプ。教師のアクバル(51歳)は、難民キャンプの学校で子どもたちにアフガニスタンの歴史や地理を教えて細々と家族の暮らしを支えていた。一見平穏な日常生活の中で、その胸中に去来するのは、戦争に翻弄された無念の人生、亡くなっていた人々の思い出、そして、今なお還ることのできない祖国アフガニスタン、故郷ヤカオランへの望郷の想いであった。また、拷問などで痛めつけられた身体は思うように動かず、目も少しづつ見えなくなりつつあった。

これ以上、教師を務めることは困難と悟ったアクバルはある日、子どもたちを前にこれまで自分が生きてきた人生を語り始めた。故郷で、祖国で何が起き、何が変わっていったのか。村の人々や自分の兄弟、親戚がどのようにして生命を落としていったのか。妻や娘たちがなぜ、教育を受けることも出来なかったのか。祖国の明日を担う子どもたちに、どうしても伝えなければいけないと考えたアクバルの特別授業であった。
 授業は次第に熱をおび、子供たちとのやりとりは、緊迫していく。やがて、教師アクバルは、決して語るまいと心の奥底に封印していた暗い過去の秘密を吐露し始める。それは、故郷で起こった衝撃の真実だったー。
ヤカオランとは、ダリ語で「ひとつの美しい大地」
そのヤカオランを吹き抜けた風の中に人びとは還っていく。
アフガニスタンの中央部に位置するヤカオラン。岩肌が剥きだしになった山々に強風が吹き荒れる険しく渇いた大地である。ヤカオランは、2001年3月にタリバンによって破壊されたバーミヤンの石仏から西へ約100kmの地点にある。首都カブールからバーミヤンまでは車で約8時間、さらに、ガタガタの道を走ること数時間でヤカオランの行政府ナヤクに到着する。2002年10月に初めてナヤクを訪れたとき、戦火の爪痕が生々しく、ゴーストタウンのようだった。ナヤク周辺には小さな村が数多く点在するが、道らしい道もなく、電気も通じていない。
 本作品は、1999年からの取材をもとに、2002年夏より本格的に準備を始め、2004年1月に完成するまでの間、三度にわたるヤカオランでの撮影等によって構成されている。

2002年 10月3日〜11月はじめ
 アフガニスタンのバーミヤン州ヤカオラン、バルフ州マザリシャリフ、および首都カブールで撮影
2002年 12月19日〜2003年1月5日
 パキスタンのアフガン難民キャンプ、アフガニスタンのバーミヤン州ヤカオラン、および首都カブールで撮影
2003年 3月28日〜4月3日
 パキスタンのアフガン難民キャンプで撮影
2003年 5月12日〜5月26日
 アフガニスタンのバーミヤン州ヤカオラン、および首都カブールで撮影
2003年 9月22日〜10月3日
 パキスタンのアフガン難民キャンプ、アフガニスタンの首都カブールで撮影
多くのアフガニスタンの研究本やルポルタージュに接していますが、ナマの現地に生きた証言には飢えていますので、アクバル氏のライフヒストリーの一言一句に耳を傾けました。誠実な話で感銘しました。
映画監督 土本典昭

一人の難民の姿からアフガニスタンの悲劇、アクバル氏の故郷ヤカオランへの想いの大きさ、存在の大きさが自ずと感じられてきた。アフガニスタンの状況とその人間たちを直視した作品として納得できる。
(キネマ旬報より) 映画評論家 渡部実
川崎けい子(かわさき けいこ) 企画・制作・監督・撮影

1960年茨城県生まれ。茨城大学教育学部卒業。
保健、福祉、環境、国際問題、歴史などの分野を中心に、PRビデオ、教養・教育ビデオの脚本・演出を担当する。ビデオ作品は、男女平等を考える(東映)、小学校社会科ビデオシリーズ(東映)、小学校理科ビデオシリーズ(東映)、保健・医療の国際協力(大修館書店)織物・くみひも(伝産協会)、二十世紀の日本シリーズ(小学館、シュバン)等。テレビ番組は、新・私の郷土史(山形放送)等。
 また、1999年からアフガン難民やアフガニスタン国内で暮らす人びとを取材し、写真ルポを雑誌等で発表。2001年10月、飯田橋のセントラルプラザで初のアフガニスタンの女性と子どもの写真展を開催。以後、全国各地で写真展およびアフガニスタンの女性事情についての講演を行う。
写真絵本「この子たちのアフガン」(オーロラ自由アトリエ)。
共著に「内発的発展と教育」(江原裕美編 新評論)
ビデオ作品「アフガニスタン難民-平和を知らない子どもたち」「アフガニスタン難民-いまを生きる女性たち」(東映)。

中津義人(なかつ よしと) 企画・制作・監督・編集
 1946年生まれ。1970年3月法政大学社会学部卒業。4月中日映画社入社。1980年11月同社企画室主任を退職。以後、フリーとなり、映画の監督・脚本を業務とする。
主な作品歴
1970年代:映画「忘却の海峡」(企画・制作)、サハリン残留朝鮮人問題を訴えた長編ドキュメンタリー(松山善三監修) 
1980年代:映画「輪島塗」「有田焼の町から」「がんと食生活」(科学技術映画祭長官賞)などの他に、福井県立博物館ビデオライブラリー(民族篇担当)神戸水の科学館等の博物館の映像を制作。
1990年代:北海道釧路原野を切り拓いた人々の歴史を見つめる、映画「ふるさと見聞録 釧路歴史物語」「ふるさと見聞録 釧路四季物語」(毎日産業映画コンクール奨励賞)
日本とアジアの国々を見つめる歴史シリーズ(東映)
「日韓併合への道」「朝鮮半島植民地支配の実態」
「太平洋戦争への道 中国大陸侵略」「太平洋戦争と東南アジア」
「太平洋戦争と沖縄」「日本の四大公害 四日市ゼンソク」
「日本の四大公害 イタイイタイ病・水俣病」「中国の小学生と家庭生活」等
これらの映画は、教育映画祭最優秀映画賞や教育映画祭文部大臣賞を受ける。
1990年代後半、地球と環境と人の暮らしを見つめるTV番組
「素敵な宇宙船地球号」(テレビ朝日)国際版の演出を1997年から3年にわたって担当(約20本)する。さらに、20世紀の日本の歴史をテーマ別に見つめた「報道映像 20世紀の日本(全12巻)」(小学館/TBS)
2000年代:永平寺瑠璃聖宝閣シアター「道元禅師開山への道」



2005年 4月16日より公開!
連日 11:00より上映

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