「予告する光 gozoCiné


吉増剛造映像作品2006-2011
予告する光 gozoCiné
文学と芸術の現在を問う、至高のロード・ムーヴィー集!


公式サイト

日本を代表する詩人として国際的な尊敬を集め、今なお現代文学の最前線を走りつづける吉増剛造は、先鋭的な言語がその限界地点で言語以外のものと接する場所に絶えず身を置いてきた。60年代から始められた自作の朗読は、音楽や現代美術との多彩なコラボレーションを展開しながら未曾有の言語/身体パフォーマンスへと昇華し、世界各地で熱狂的な反応を呼び起している。また、80年代以降は写真家としての活動を本格化させ、国内外で個展や写真集の出版も多い。

映画への深い造詣、そしてジョナス・メカスやアレクサンドル・ソクーロフら世界的な映画作家との交友でも知られる吉増剛造が、ついに自らデジタルビデオカメラを携えて特異な「ロード・ムーヴィー」の制作を開始したのは2006年。程なくして「gozoCiné」と名付けられた作品群は、すべて詩人自らの手で撮影・録音・編集され、50年余に及ぶ詩人の軌跡を新たな角度から照らしだすとともに、「映画」に未踏の領域を開く試みとして、言語とイメージの現在へ苛烈な問いを投げかけている。

武蔵野の古井戸からブラジルの蟻塚へ、エッフェル塔から大阪・通天閣へ、横田基地から熊野の浮島、アリゾナの砂漠へ……。所縁の土地を再訪しながら詩の根源へと螺旋状に下りていく旅は、同時に泉鏡花、萩原朔太郎、折口信夫、中上健次、島尾ミホ、ベケット、イェイツ、ツェラン、デュラス、デリダ、ドゥルーズらの言葉を多様に響鳴させる。そしてまた、「奥の細道」を辿る旅がカルナックの環状列石へ、柳田國男の「海上の道」がフランク・ロイド・ライトの「夢の建築」へと通じ、さまざまな領域を横断した光と物質の共振を開示する。

2009年2月には、シリーズ19作品を収録したDVD+Book『キセキgozoCiné』(オシリス)が、まったく新しい「書物」への挑戦として刊行され、各方面で大きな驚きをもって迎えられた。さらに山形国際ドキュメンタリー映画祭(2009年10月)、恵比寿映像祭(2010年2月)などで、それぞれ数作が上映されたのに伴い、その反響は静かに広がりつつあり、映画館でのロードショー公開を待望する声も高まってきた。

そして今夏、現在まで5年間にわたって制作されたgozoCinéの全作品(52篇)が、ポレポレ東中野を舞台に新たな「映画体験」として、レイトショーで一挙上映される。各日5~8篇を組み合わせた日替わりの計21プログラムで、gozoCiné期の世界に日々さまざまな対角線が引かれていくことになる。期間中には、多彩なゲストを招いたトーク・イヴェントも開催予定。

*撮影・編集=吉増剛造/制作=オシリス/配給=「予告する光」上映実行委員会
吉増剛造(よします・ごうぞう)
1939年東京生まれ。慶應義塾大学国文科卒業。在学中から詩作を始め、第一詩集『出発』(64年)以来、先鋭的な現代詩人として国内外で活躍。詩集『黄金詩篇』(高見順賞)、『オシリス、石ノ神』(現代詩花椿賞)、『螺旋歌』(詩歌文学館賞)、『「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(芸術選奨文部大臣賞)他多数。写真集『表紙』(毎日芸術賞)など。
 
gozoCiné上映作品(制作順)
上映スケジュール
まいまいず井戸――take I 
2006.7 8分
螺旋形の宇宙と地下への歩行――gozoCinéの原点を指し示す第一作。
Program A (7/30), L (8/10), Q (8/15)

まいまいず井戸――take II 
2006.7 7分
横田基地から武蔵野の古井戸へ、詩人は自らの原風景へ下りていく。
Program A (7/30), D (8/2), S (8/17)

Na entrada da casa dos fogos(花火の家の入口で) 
2006.8 10分
塔は宇宙の涯を遠望する――ブラジルで出会った「蟻の家」の衝撃。
Program A (7/30), N (8/12), T (8/18)

千々に砕て――松島篇 
2006.8 10分
芭蕉の句に見出した「砕」の一語が、〈9.11〉後の世界を透視する。
Program D (8/2), J (8/8), K (8/9)

プール平 
2006.10 8分
水のない水底をさまよう詩人の身体を、収容所の世紀の記憶が襲う。
Program B (7/31), H (8/6), S (8/17)

エッフェル塔(黄昏) 
2006.11 5分
都市と精霊の交感が官能的な「塔」の姿となって現れる一瞬の奇蹟。
Program A (7/30), T (8/18), U (8/19)

クロードの庭 
2006.11 11分
パリからオルレアンへ。光の庭がヨーロッパの古層へと通じていく。
Program F (8/4), Q (8/15), T (8/18)

熊野、椰(なぎ)の葉、…… 
2006.12 15分
かつて中上健次を訪れた熊野で、刹那的に出現する鎮魂の「劇場」。
Program D (8/2), H (8/6), J (8/8)

Goya――予告篇、吉田喜重氏に 
2007. 2 5分
敬愛する映画作家へのオマージュ、あるいはフィルム‐布地の氾濫。
Program E (8/3), H (8/6), T (8/18)

柳田さんの宝貝、カリフォルニア 
2007. 2 10分
アメリカの砂漠の光景と二重写しになる「海上の道」のヴィジョン。
Program D (8/2), G (8/5), M (8/11)

光の棘(とげ)、Frank Lloyd Wright 
2007. 2 13分
ライトの建築に幻視される海底の世界、そして夢の映画の輝き――。
Program D (8/2), G (8/5), M (8/11)

Strasbourg、いけぶくろ 
2007. 4-5 12分
行為と視線を入れ子状に多重化するライヴ・パフォーマンスの記録。
Program E (8/3), P (8/14)

阿弥陀ヶ池、折口さん―― 
2007. 6 12分
折口信夫ゆかりの場所で水面を写すカメラの前に驚きの光景が――。
Program B (7/31), F (8/4), S (8/17)

鏡花フィルム I ――プロローグ 
2007. 8 7分
デリダから鏡花へ。絶対的危険という形でしか未来は予告されない。
Program C (8/1), I (8/7)

鏡花フィルム II ――金沢篇 
2007.8 10分
知られざる処女作「蛇くひ」を通して、鏡花がデュラスと共鳴する。
Program C (8/1), I (8/7)

鏡花フィルム III ――逗子篇 
2007.8 9分
19歳の夏の記憶に導かれ、鏡花の幻想の幕が開いた場所を再訪する。
Program C (8/1), I (8/7)

鏡花フィルム IV ――三尺角、水の駅 
2007.9 13分
鏡花の景色の俤から太田省吾へ渡される橋、そして目の痛み=悼み。
Program C (8/1), I (8/7)

朔太郎フィルム日記 
2007.10 8分
風にはためく朔太郎の肖像を手に、利根川の水流を静かに見つめる。
Program C (8/1), O (8/13)

奄美フィルム――ミホさん追悼 
2007.11 14分
色と匂いに誘われ、四半世紀の道行を経て反復される「別れの挨拶」。
Program J (8/8), N (8/12), Q (8/15)

Silver Dog――大手拓次と若林奮に 
2008.6 10分
大手拓次の詩と彫刻家若林奮の彫跡が気づかせた「犬」のヴィジョン。
Program F (8/4), M (8/11), T (8/18)

月山、一番下を吹く風 
2008.7 18分
森敦氏の思い出と月山参籠所に籠って読んだ「奥の細道」の風、……
Program B (7/31), K (8/9), T (8/18)

奄美フィルムII ――静かなシマのとき 
2008.7 26分
島尾ミホ追悼の旅の8カ月後。再びミホが生きた島の空気に分け入る。
Program J (8/8), Q (8/15)

芥川龍之介フィルムI ――Kappa 
2008.8 19分
佃島の路地と水辺。腕時計のガラスに緑色の「河童」の出現を待つ。
Program C (8/1), M (8/11)

芥川龍之介フィルムII ――Kappa, Appendix 
2008.8 10分
大川の河岸(かし)に、芥川が見ていた「みすぼらしい自然」を探す。
Program C (8/1), M (8/11)

物の音、恐山 
2008.9 28分
白い浄土の霊地恐山。岩を聞き、風の言葉に耳を澄ます……。
Program B (7/31), I(8/7), Q (8/15)

Jakaranda――リオ、サンパウロ 
2008.10 7分
リオの夜の街角、――倖せの一瞬と妖花ジャカランダに心を尽す。
Program L (8/10), N (8/12), T (8/18)

忍路(オショロ)――北石狩衛生センター 
2008.11 19分
忍路環状列石を巡り、長編詩「石狩シーツ」、詩篇の入口に再び佇む。
Program F (8/4), H (8/6), S (8/17)

木浦(モッポ)、nakedwriting 
2008.11 19分
良寛とジョン・ケージの筆跡が、木浦の夕陽を背に宝貝と共に踊り出す。
Program F (8/4), J (8/8), U (8/19)

Carnac、“間に(アントル)” 
2009.3 8分
ブルターニュの巨石群は海辺にあった、……詩人はカメラに問いかける。
Program B (7/31), H (8/6), T (8/18)

Yeats Vision、アイルランド 
2009.4 13分
ケルト民謡が風となって吹きわたり、……イェイツの心の芯に近づく。
Program B (7/31), I (8/7), S (8/17)

紅テントと軽いテント――唐十郎さん今福龍太さんに 
2009.5 17分
紅テントとの新たな出会いとヴィジョン。「河原の思想」を呼び起す。
Program G (8/5), L (8/10)

萬(よろず)、巨人の足音 ―― Take I 
2009.7 16分
画家・萬鉄五郎の代表作《裸体美人》の捩れた体と足裏に魅せられて……
Program E (8/3), P (8/14)

萬(よろず)、巨人の足音 ―― Take II 
2009.8 10分
萬の深い眼に、太古の舞いの、……早池峰神楽の空気が重ねられる。
Program E (8/3), P (8/14)

萬(よろず)、巨人の足音 ―― Take III 
2009.7-9 16分
《巨人の足音》のヴィジョンが宮澤賢治の銀河ステーションへ繋がる。
Program E (8/3), P (8/14)

道路(みち)の遠近を忘れたり――津田新吾さんを悼みつつ 
2009.7 18分
若き編集者の死を深く悼み、訃報の翌日詩人は下北沢に向かった……
Program N (8/12), O (8/13), S (8/17)

最上川、象潟――奥の細道 
2009.8 32分
肘折温泉から、最上川、そして象潟へと、芭蕉の眼とともに、……
Program K (8/9), P (8/14)

山寺フィルム――奥の細道 
2009.9 19分
芭蕉が捉えた「閑さ」とは何か。「岩にしみ入る蝉の声」の音の根へ……
Program K (8/9), R (8/16)

利根(タンネ)――朔太郎の 
2009.10 2分
激しく流れる利根川に、朔太郎の「利根川の河原」の淋しい心を重ねる。
Program O (8/13), S (8/17)

尾花澤フィルム――奥の細道 
2009.10 6分
読み深めてきた芭蕉句の再発見。尾花澤の清風歴史資料館での驚嘆……
Program K (8/9), R (8/16)

芭蕉さん終焉――大阪 
2009.11 6分
通天閣へ。芭蕉の没した大阪は半世紀前の詩人の出発点でもあった。
Program F (8/4), K (8/9), T (8/18)

赤城山――朔太郎の 
2009.12 8分
薄紅色の雲流れる赤城山に、朔太郎の見ていた幻の恐ろしい山を見る。
Program O (8/13), S (8/17)

エミリーfilm 2010.4 9分
エミリー・ディキンソンの瞳ごしに、アメリカの歴史を手繰りよせる。
Program D (8/2), H (8/6), O (8/13)

八戸、蟻塚――章伍さんと 
2010.5-8 20分
ICANOF「飢餓の木」展出品作。ブラジルの蟻塚が八戸に召喚される。
Program G (8/5), R (8/16)

拈花瞬目(ねんげしゅんもく)――雪雄子と 
2010.8 33分
パウル・クレーの眼を媒介にして記録された舞踏家のパフォーマンス。
Program L (8/10)

The Voice of(漆)――会津にて 
2010.8 20分
繭玉の光に導かれて、漆の褐色の樹液に唇を寄せるいたわりの儀式。
Program E (8/3), L (8/10), R (8/16)

村への遊撃――及川廣信 
2010.9 29分
詩人・黒田喜夫に捧げられたソロダンスにカメラが間近で共振する。
Program R (8/16)

沼澤地方(朔太郎)から新潟(金時鐘)へ 
2010.11 10分
金時鐘に捧げられた一篇。朔太郎と時鐘の詩作が利根川の石に震える。
Program F (8/4), O (8/13)

心中天の秋川、…… 
2011.1 16分
幼き娘たちの命への「たむけ」に、1987年に訪れた秋川の河原を再訪。
Program M (8/11), N (8/12), U (8/19)

Watts Towers――とうとうこうして海が亡びて行く、その歌としての貝殻の塔、…… 
2011.3 10分
Fukushima原子炉事故の報道が伝わるロスで、貝殻たちに宿る夢に聞く。
Program A (7/30), O (8/13), T (8/18)

Emerald Song 
2011. 3 12分
〈3.11〉後のグランドキャニオンに、エメラルド色のマリリアが歌う。
Program D (8/2), I (8/7), U (8/19)

The Eyes――for Herman Merville 
2011.6 7分
鯨の眼と白く輝く頭蓋骨の衝撃。ゴッホの澄んだ眼と「白鯨」が、……
Program A (7/30), E (8/3), U (8/19)

アメリカ、沼澤地方、…… 
2011.6 7分
アメリカの詩人の朔太郎のヴィジョンが、ウォルデンの池の上に。
Program A (7/30), D (8/2), U (8/19)

 上映スケジュール